2022年11月26日10時30分 / 提供:マイナビニュース
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1914年に軽井沢で温泉旅館を開業し、2022年で108年の歴史を数える星野リゾート。「旅を楽しくする」をテーマに、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」のサブブランドを展開し、2022年11月以降は新たに7施設をオープン予定です。今回はそんな新しいワクワクを生み出し続ける星野リゾートに注目! 今こそチェックしたい話題の施設を深掘りしていきます。
第13回目は、2022年8月、大分の人気観光地・由布院にオープンした「界 由布院」。界ブランドでちょうど20施設目となるこちらは、隈研吾さんが設計・デザインを担当。日本の原風景を思わせる"棚田が主役"と言うから、驚きです!
壮大な田園ビューを楽しみながら、やわらかな由布院の温泉に浸かって、ゆるっと癒やしのひとときを……。そこに待っていたのは、美しい風景にときめく隠れ家でした。
→北海道の大パノラマに癒やされる「界 ポロト」だけの感動体験
■由布院駅から10分の別世界へ
観光客でにぎわう「JR由布院駅」から車で約10分。住宅街を抜けて車を走らせると、駅を降り立ったときの喧騒とは一変! 静けさが漂う、隠れ家のような温泉旅館に到着します。
「界 由布院」は、「棚田暦(たなだごよみ)で憩う宿」がコンセプトのお宿。「界 別府」に続き、隈研吾さんが設計・デザインを担当しました。
竹垣が続くエントランスは、日常から非日常へ切り替わる場所。竹のさわさわ……と響く音が、特別な時間の始まりを告げるようです。
入り口に来ると、「界」の文字が目に飛び込みます。ピンク色の部分は、大分県の国東半島でしかとれない植物「七島藺(しちとうい)」でくるくる編み込まれたもの。「七島藺」とは、強度に優れた和の素材。畳表や、最近では工芸品として利用されています。
「界 由布院」では、この「七島藺」にも注目してみてください。いたるところで、細かいインテリアとしてあしらわれています。
胸をときめかせながら館内へ。ロビーは、農家の空間構成「たたき」をイメージした独創的な空間になっています。
「えっ、どこがたたきなの?!」と思われるかもしれませんが、右手のフロントカウンターに注目してみてください。ヒントはご飯を炊くところ……と言ったら分かります?
そう! フロントカウンターは、昔懐かしい「かまど」がイメージ。しかも、かまどの蓋まで用意されていて、パカッと開けられるんです。斬新なアイデア、さすがの一言ですよね。
奥に進むと、ゲストが自由に使えるトラベルライブラリーが出現。ここは板間のイメージになっていて、床材も竹皮フローリングに変わります。
棚には、大分の歴史や文化にまつわる書籍が。「棚田」にフォーカスした本も置かれているので、ぜひ手にとってみて。読んでいると、旅の楽しみがぐっと広がりますよ。
■棚田にふれる里山時間
トラベルライブラリーの奥には、座敷をイメージした棚田テラスが!
ここは、棚田を見下ろすように作られた長い縁側空間。24時間開放されているので、のんびり過ごすのにもってこいです。
おいしい空気に鳥や虫たちの声。山のパワーに包まれる時間は、ささくれだった心を丸くしてくれます。静かに、ゆっくり。風情ある里山時間を楽しみましょう。
ちなみに、もともとこの界隈は棚田が多く、50年ほど前は建物がある場所も棚田だったのだとか。しかし、高齢化などにより耕作放棄地に……。一度は荒れてしまった棚田ですが、「界 由布院」の開業によって美しい棚田の姿を取り戻すことができたのです。
春は景色を映す水鏡に、夏はみずみずしい緑の絨毯に。そして収穫期を迎える秋には、田んぼが黄金色に輝きます。訪れる季節や時間ごとに変わる情景は、何度見ても飽きることがありません。
■棚田の中に建つ離れの客室
さて、いよいよ客室へ。「界 由布院」のお部屋は、全部で45室。離れは5棟ありますが、そのうち2棟の「蛍かごの間(棚田離れ)」は、棚田ビューをひとり占めできる贅沢な造り!
「蛍かごの間(棚田離れ)」は、中に入った瞬間、杉のいい香りがふんわりと漂います。 廊下には"木材のまち"として知られる大分県日田市の日田杉(ヒタスギ)を使っていて、芳醇な杉の香りをはっきりと感じることができます。
さらに廊下には、美しい風景を切り取る「ピクチャーウィンドウ」が。まるで大きな絵画のようでステキ……!!
室内は竹づくし。大分県産の細めの篠竹を使ったソファに、竹製のブラインド。さらに、ベッドボードにも竹が使われています。
里山の雰囲気を感じながら、ゆったり温泉を……。そんな贅沢を叶えられるのも、離れの客室だからこそ。奥のスペースには専用の湯小屋あり、好きなときに好きなだけ、由布院温泉をひとり占めできます。
湯上がりは、縁側に置かれた七島藺の円座に腰掛けて、ほっとひと息が至福。
何より印象的だったのが、ベッド上の照明。らせん状が美しいこの照明は、蛍を入れて愛でたり、虫の音を楽しむための「蛍かご」がモチーフになっています。
夜にこの照明だけつけると、七島藺の隙間からやわらかな光がもれてファンタジックな雰囲気に。しかも、点滅する蛍の光のようにチラチラッ……と幻想的な光を放つんです!
温かみがあって。ほわっと優しい光に包まれるようで。ぼんやり光を眺めているだけで、ただひたすらに癒やされます。
離れの客室もステキですが、温泉好きの人におすすめしたいのが「蛍かごの間(露天風呂付き和室)」。湯小屋のすぐ目の前は、くぬぎ林。1Fだと視界をさえぎるものが一切なく、より森を近くに感じられます。
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■由布岳を望む気分爽快な大浴場
大浴場も、この旅の大きな楽しみ! 内風呂には、体がしゃきっとする「あつ湯」と、リラックスできる「ぬる湯」があります。
少し緑がかった「あつ湯」は、源泉かけ流し。施設内でかけ流しの湯に浸かれるのはここだけです。温泉好きの人は、入り逃しのないようにしてくださいね。
泉質は、肌の汚れを優しく落としてくれる弱アルカリ性単純温泉。天然の保湿成分と言われるメタケイ酸の数値も高い、美肌温泉です。
あつ湯とぬる湯を楽しんだら、絶景自慢の露天風呂へ。棚田をイメージしたテラスの先には、雄大な由布岳がそびえ立ちます。
寝湯でごろんと横になるのが、最高の贅沢! 木々のざわめきに耳を傾けならの湯浴みは、五感をフルに心地よくさせてくれます。
■紙芝居で楽しく温泉を学べる「温泉いろは」
温泉を楽しむなら、夕方16時から行われる「温泉いろは」にも参加してみてください。
これは「界の湯守り」がガイドとなり、紙芝居形式で由布院温泉を深掘りしたり、温泉での呼吸方法やおすすめの入浴方法などをレクチャーしてくれたり。
「由布院温泉の源泉が熱い理由は?」「由布岳と鶴見岳の恋物語って?」などなど、どれも興味深いものばかり! 参加者限定の浴前ドリンクもふるまわれて、一度で二度おいしい充実の15分間です。
じっくり温泉で温まったら、お部屋に帰るのはもったいない! 棚田テラスに立ち寄って、時間とともに変わる情景をじっくり味わいましょう。
おすすめの時間帯は夕暮れどき。日が沈むころになると、空がオレンジ色に変化し、やがてピンクや紫色のような幻想的な色へと変わっていきます。
筆者が訪れた日は、ちょうど稲の色が抜けて稲穂が黄金色に輝くシーズン。夕日に照らされた棚田があまりにも美しくて、心の奥まで優しく染み渡りました。
さらに無料で楽しめるものと言えば、2022年10月からスタートした「こびる」も見逃せません。
「こびる」とは、大分で親しまれているおやつ「やせ馬」を、お茶とともに味わえる無料のサービス。麺のもっちり麺ときな粉と黒蜜の上品な甘さが絶妙で、これがなかなかのおいしさ! 気づけばペロッと完食です。
■夕食は幻のジビエをしゃぶしゃぶで
夕食は、野山の恵みをたっぷり味わう特別会席。先付けで登場したのは「猪と椎茸の最中パテ」です。
ぱくっと頰ばると、クセも臭いもなし。「これ、本当にイノシシ?」と想像以上のおいさにびっくり! ジビエの固定概念を変えてくれる驚きの肉体験です。
メインのしゃぶしゃぶ「山のももんじ鍋」には、さらなる驚きの肉体験がつまっています!
お肉は和牛・豚肉のほかに、猪肉・鹿肉・珍しい穴熊肉(アナグマ肉)までついた豪華すぎるラインナップ。すっぽんの贅沢出汁にくぐらせて、それぞれの個性を引き立てるタレにつけていただきます。
多くの人が見たことも聞いたこともない、幻のジビエ・アナグマ肉。どんな味が気になりますよね?
そのお味は、ずばり「脂身がフルーティーで甘い!」。赤身は適度な歯ごたえがあって、上質な脂はやわらかく、すぐに口の中で溶けてしまいます。噛みしめるほどにじわじわと良い脂の旨味が口に広がり、お肉の大トロみたい。
これを食べるために泊まりたいと思うほど、やみつきになる最高の肉体験でした。
■「界 由布院」ならではの朝時間を満喫
滋味深い夕食に満たされ、心も体も元気満タンに! 朝はちょっぴり早起きして、朝7時スタートの「現代湯治体操」で体を目覚めさせます。
このアクティビティは、無料&予約不要。スタッフのお手本を見ながら、絶景ポーズや田植えのポーズを取り入れた体操に挑戦します。写真は、腰をしっかり落として腰をひねる360度絶景ポーズ。絶景が自慢の「界 由布院」らしいユニークな体操ですよね!
運動後はお楽しみの朝食タイム。和朝食はお味噌汁代わりに、大分の郷土料理だんご汁がついてきます。
炊きたての白飯に、七輪を使って自分で焼く野菜、お惣菜、2種のお魚、自家製のお豆腐やヨーグルトなどなど、体に優しいメニューがずらり! 界ブランドで初めてとなる洋食の朝ごはんも注目です。
■「藁綯(わらな)い」のお守りづくり体験
旅の思い出を形に残せるのも、「界 由布院」の嬉しいところ。ここではご当地楽として、農閑期に行われていた手仕事を取り入れた「藁綯(わらな)い」のお守りづくりを行っています。しかも参加料金は無料! 参加しない手はありません。
「藁綯い」とは、藁を手でよりあわせ縄を作っていくこと。しめ縄やワラジをイメージしていただくと、分かりやすいのではないでしょうか? どしっと腰をおろして、藁を足で押さえながらのポーズをキープ。そのまま、手のひらで少しずつ縄をゆっていきます。
ある程度まで形ができたら、最後に好きな色の水引と梅飾りをつけて完成。出来上がったお守りは、一緒に持ち歩いてもよし。厄除けや魔除け代わりに、お部屋に飾ってもよし。少し難易度が高いように感じましたが、苦労した分だけ愛着もひとしおです。不器用な人も、スタッフが丁寧にサポートしてくれるのでちゃんと作ることができますよ!
「界 由布院」はすべての旅人を癒やしてくれる隠れ家。棚田の美しさをしみじみと感じて、リフレッシュ……。都会暮らしでは得られない、オンリーワンの喜びに出会えるはず!
■Information
「界 由布院」
【場所】大分県由布市湯布院町川上398