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近未来テクノロジー見聞録 第244回 核融合炉材料内に留まった水素同位体のリスクを解決できる新発見とは

2022年11月22日08時03分 / 提供:マイナビニュース

2022年11月10日、静岡大学と東京大学は、セラミックス被覆にガンマ線を照射することで、室温下でセラミックス被覆から水素同位体を除去することに成功したと発表した。では、この研究成果はどのような点がすごいのか。また、どのようなことが期待できるのか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
ガンマ線の照射で水素同位体を除去する技術とは?

静岡大学の近田拓未講師らは、東京大学との共同研究で、セラミックス被覆へのガンマ線照射により、室温下で水素同位体を除去することに成功した、というプレスリリースを発表した。

このプレスリリースは、核融合炉の実現に向けてとても重要な研究成果だ。核融合炉における核融合反応には、DT反応、DD反応というものがある。Dとは重水素、Tとは三重水素を指し、それぞれ水素同位体で核融合の燃料となる。しかしこの反応において、核融合炉内の材料にこれらの水素同位体が留まってしまい、燃料効率が低下したり、三重水素による被曝のリスクが増加したり、といった課題が存在している。

共同研究チームは、これまで水素同位体の透過漏洩や構造材料の腐食の低減に高い効果が示されている酸化ジルコニウム被覆(セラミックス被覆)に重水素を導入した後、室温下でガンマ線を照射した。その結果、セラミックス被覆内の重水素濃度が減少していることが発見された。

また、以下のグラフをご覧いただきたい。このグラフは、核融合炉の材料に留まっている水素同位体の状態(以下の可動性重水素・安定重水素・可動性水素・安定水素)によって、ガンマ線照射による除去の状況が変化することを示している。

さらには、以下のグラフが示すように、重水素導入後の周囲の気体を水素およびアルゴンに変えて検証したところ、ガンマ線照射の効果が異なることがわかったのだ。

ちなみに、この研究成果は、オランダのElsevier B.V.が出版する国際科学誌『International Journal of Hydrogen Energy』にて2022年11月7日にオンライン掲載されている。

いかがだっただろうか。近年、核融合における研究成果の話題が多い印象がある。先日も高速ヘリウムの閉じ込めと低速ヘリウムの排出を両立する条件を解明したニュースも記憶に新しい。

このような研究成果を見ていくと過去には困難と考えられてきた事象が一気に解決するのではないか、そんな期待さえ覚える。静岡大学と東京大学は、今後は、酸化ジルコニウム被覆(セラミックス被覆)以外に核融合炉に使われる他の材料でも、ガンマ線照射による水素同位体の除去が可能か検証していくという。

齊田興哉 さいだともや 2004年東北大学大学院工学研究科を修了、工学博士。同年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、2機の人工衛星プロジェクトチームに配属。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。 現在は、コンサルティングと情報発信に注力。書籍に「宇宙ビジネス第三の波」、「図解入門業界研究 最新宇宙ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」など。テレビ、新聞、Webサイト、セミナー・講演も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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