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フェイクドキュメンタリーの先駆者が、実際の愛憎劇をドラマ化 長江俊和監督「見たことないものを作りたい」

2022年11月22日06時00分 / 提供:マイナビニュース

●『アイゾウ』企画のきっかけは「1行だけのメール」
女優の夏子が主演するフジテレビのドラマ『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』(『火曜ACTION!』枠・毎週火曜24:25~)。世界で実際に起きた“愛憎劇”が日本で起きたら?というifを起点に、独自のミステリードラマへと落とし込んだ意欲作で、愛憎事件を専門に扱う「警視庁・心理分析捜査班」通称“アイゾウ課”で、そこになぜかたった1人所属する刑事の安座間(夏子)が、事件の相談を持ち込むベテラン刑事の久世(津田寛治)、新人刑事の三好(水石亜飛夢)と共に、愛憎が交錯する難事件を解決していくというストーリーが展開されている。

演出を務める長江俊和監督は、同局系『奇跡体験!アンビリバボー』や、今作の基となる事件を扱った『世界法廷ミステリー』といった情報バラエティのディレクターを務めるほか、『富豪刑事』シリーズ(テレビ朝日)などのドラマ監督、『放送禁止』シリーズといったフェイクドキュメンタリーの制作、直近では『放送禁止』の小説版となる『出版禁止 いやしの村滞在記』を執筆するなど、多方面で活躍するクリエイター。その創作意欲の背景にあるのは、「他で見たことないようなものを作りたい」という思いだ――。

○■脚本作りに試行錯誤「迷ったときは事実に立ち返る」

実際に世界で起きた事件を、再現VTRではなく、独自のフィクションも交えながら本格的なドラマ作品に仕立てるという企画の経緯について、「まずフジテレビで企画募集があって、『世界法廷ミステリー』でご一緒した荒木(勲)プロデューサーから、『実録事件をテーマにしたドラマをやりませんか?』という1行だけのメールが来たんです(笑)」と振り返る長江監督。「『世界法廷ミステリー』では再現ドラマだったけれど、それをちゃんとしたドラマというか、シナリオを作ってちゃんとした物語ができたら、それは面白いなと思って、この『アイゾウ』が出来上がりました」と明かす。

数ある世界の事件から“愛憎事件”をピックアップした理由は、「人間の“愛憎劇”の方がドラマにしやすいというのもあるんですが、“愛憎”と言っても男女の恋愛だけじゃなくて、愛と憎しみというのは親子とか兄弟とか、そういう関係の中でも普遍的にあるものですから、いろんなバリエーションができるなと思いました」という着想から。

また、『アイゾウ』というタイトルについても、「『愛憎事件』ばかりを専門に扱う部署みたいなところがあったら面白いんじゃないかという発想で、『相棒』というドラマも警視庁の架空の部署なので、そのシャレみたいなところもあって(笑)。そんな設定から企画書が出来上がっていった感じです」と教えてくれた。

実際に起こった事件を基にしているとはいえ、そのままトレースしただけでは再現VTRとなり、オリジナル要素を加え過ぎたら基の事件からかけ離れ、独自性がなくなってしまう。その上、「基となる事件が海外の話で、しかも昔の事件なので、そのままは置き換えられない」という難しさがある中で、どのようにエピソードを作っていったのか。

「やっぱりドラマとして面白くするために、脚本は試行錯誤します。結局は、本人がどういう自供をしたとか、どういう逮捕のされ方をしたのかとか、動機は変えちゃいけないとか、迷ったときは、事実に立ち返ろうという方針で作りました」

○■女性主人公のオーディション参加者たちが共感

今作では、結末が分かった本編のラストに、基になった実際の事件映像を用いた“答え合わせ”のようなVTRが流れる構成を取り入れている。その事件を取り上げた『世界法廷ミステリー』を見ていた視聴者にとっては、ドラマの面白さを味わったその先に「この事件だったのか!」という驚きがもう一つ加わる視聴後感が楽しめるのだ。

この試みについて、長江監督は「詳しい方は『この事件をこんなふうにドラマにするんだ』って見方をされると思うんですけど、とはいえ、ほとんどの人は事件に詳しくないと思うので(笑)、普通にミステリーのドラマを見て、人間ドラマを楽しむ感覚で見ていただけたらと思います。とにかく何も考えないでフラットで見ていただければいいなと思っています」とコメント。

SNS上での反応はかなり気にしているそうで、「手応えがすごくあって、いい反応がすごく多いんですよ。だから、自分もリアルタイムで酒を飲みながら、反響を見て楽しんでいます。むしろ、その反応を見るために作ってやってるようなところもありますね(笑)」と、密かな楽しみになっているようだ。

ドラマ初主演となる夏子が抜てきされているが、その起用について聞いてみると、「深夜の新しい番組で、フレッシュな人が主演するのも面白いなと思って、50人くらいオーディションをしたんですけど、50人の中で一番最初に見たのが夏子さんだったんです。演技力や存在感もそうなんですが、僕らが考えていた主人公の安座間霧子というキャラクターの佇まいにすごく近くて、迫りくるものがありました。もちろん他にも素敵な女優さんにたくさん参加していただいたんですけど、最初に出てきた夏子さんを超える人がいなくて、終わってスタッフのみなさんと話したら、満場一致で決まりました」と回想。

そのオーディションの中で、「このドラマは主人公が警視正にストーカーをしたりと突飛な設定なんですけど、オーディションに来てくれた女優さんたちが、安座間霧子というキャラクターに共感したという声がすごく多かったんです。この作品が受けられるのか少し心配だったんですけど、“いけるな”と感じました」と、思わぬ感触を得ることができた。

●『放送禁止』とは逆の発想
長江監督と言えば、“お蔵入りになっていたVTRを再編集した上で紹介する”という設定の『放送禁止』シリーズなど、フィクションをドキュメンタリー映像のように演出する“フェイクドキュメンタリー”の先駆け的な人物で、常に視聴者に新しい映像体験を提供してきた。

「『放送禁止』も『アイゾウ』もそうなんですが、やっぱり他で見たことないようなものを作りたいなっていうのがまず動機としてあるんです。『放送禁止』は放送当時、“フェイクドキュメンタリー”という手法が他ではあまりなくて、ドラマのシナリオを考えるんだけど、それをドラマっぽくないドキュメンタリーとして撮ったら面白いんじゃないか?とか、そういう発想で作っていきました。だから『アイゾウ』は『放送禁止』と逆ですよね。『放送禁止』は全然なかったことを本当っぽく見せて作るんですけど、『アイゾウ』は本当にあったことを、ドラマとしてエンタテイメントに見せるっていう方法ですから。そういう番組は、今までなかったんじゃないかなと思っています」

○■「結末を見るとめちゃめちゃ怖くなると思います」

22日放送の第7話から最終エピソードに入るが、その見どころを聞くと、「いろんな事情があって、『世界法廷ミステリー』ではできなかったエピソードなんですけど、とにかく見てほしいです。傑作なんです」と自信。「これまでの『アイゾウ』とはバージョンが違って、家族の物語なんです。恐ろしいけどリアルで、結末を見るとめちゃめちゃ怖くなると思いますよ」と語る。

そして、『放送禁止』シリーズなどでも施されていたドラマ全体の“仕掛け”が期待される。今作でも、主人公の安座間がストーカーしたという警視正・村瀬を伏せていたり、時折謎の監視カメラ映像が挿入されたり、“何かありそう”な要素が散りばめられているが、「アイゾウでも、その仕掛けがいつか明かされるときが来ると思いますよ」と予告した。

そして、このドラマの今後についても、「スタッフもキャストもみんなノリノリでやってくれていて『続編やりましょう』と言ってくれるので、この後も何か、展開していくといいなと思っています。ネタは無限にありますから、『相棒』みたいに半年とかできますよね(笑)」と構想を披露してくれた。

物語の行方はもちろん、安座間と村瀬の謎と、予告してくれた“仕掛け”、そしてまだまだ続きそうな“アイゾウ劇”に期待したい。

●長江俊和1966年、大阪生まれの映像作家、小説家。深夜ドラマ『放送禁止』シリーズは熱狂的な支持を受け、3作が劇場公開。小説『出版禁止』『掲載禁止』『検索禁止』(新潮社)、『放送禁止』『恋愛禁止』(KADOKAWA)などの、「禁止」シリーズは累計30万部を突破している。そのほか、映画『パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO/NIGHT』『不安の種』、テレビドラマ『東京二十三区女』『富豪刑事』『歌のおにいさん』『世にも奇妙な物語「午前2時のチャイム」』『学校の怪談「アサギの呪い」』。などを手がける。

「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら

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