2022年11月18日18時05分 / 提供:マイナビニュース
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東京理科大学(理科大)は11月17日、ジルコニウム(Zr)とチタン(Ti)合金をベースとした炭素繊維強化超高温セラミックス複合材料(C/UHTCMC)を開発し、特性解析を行った結果、2000℃以上の超高温にも耐えられることを確認したと発表した。
同成果は、理科大大学院 工学研究科 機械工学専攻の小出士純大学院生、同・大学 工学部 機械工学科の井上遼講師、同・大学 先進工学部 マテリアル創生工学科の新井優太郎助教、横浜国立大学大学院 工学研究院 システムの創生部門の長谷川誠助教、物質・材料研究機構の構造材料研究拠点 接合・造型分野 構造用非酸化物セラミックスグループの西村聡之博士/グループリーダーらの共同研究チームによるもの。詳細は、エンジニアリング材料構造・特性・用途などを扱う学術誌「Journal of Materials Science」に掲載された。
炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)は軽量で耐熱性のある材料として、スペースシャトルや極超音速機の部材に使用されてきた。しかし、高温環境下での耐酸化性が低く、用途が制限されることが課題となっていた。
また、超高温セラミックス(UHTC)と炭化ケイ素の複合材料(ZrB2-SiC、ZrC-SiC、ZrB2-ZrC-SiCなど)は、1700℃以上の高温でも優れた耐酸化性や耐熱性を示すことが知られていた。しかし、ケイ素を含む化合物をベースとした複合材料は、超高温環境下では共晶の形成やケイ素を含む化合物自身の酸化によって、材料が劣化してしまうという課題を抱えていたという。
そこで研究チームは今回、超高温環境下でも劣化しない新規材料として、ZrとTiを主成分とするC/UHTCMCに着目し、その有用性の評価を目的として研究を進めることにしたという。そして、異なる合金組成で製造された3種類のC/UHTCMCsに対して、アーク風洞試験、表面分析、熱力学的解析を実施し、その特性を評価することにしたとする。
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具体的には、溶融含浸法によりZr、Ti、炭素(C)を主成分とする3種類のC/UHTCMCs(Z20、Z36、Z80)が合成された。これらのZrとTiの組成比(at%、Zr:Ti)はそれぞれ20:80、36:64、80:20で、異なる3つの条件(A:ノズル間距離150mm、熱流束2MW/m2:ノズル間距離100mm、熱流束4.54MW/m2、C:ノズル間距離80mm、熱流束6.68MW/m2)でアーク風洞試験が実施され、各材料の損耗評価が行われた。
その結果、複合材料中のZrの含有量が増加すると、アーク風洞試験後の材料の厚さが増加し、表面に形成される酸化物の融点も上昇することが判明したほか、複合材料の表面に生成された液相が外表面に向かって流れることで、複合材料の酸化がさらに促進されることも見出されたとする。また、Tiを多く含む炭化物に対して、Zrを多く含む炭化物の酸化が熱力学的に優先されるため、いずれの温度条件でも、複合材料の劣化が抑制されることが確認されたという。
さらに、表面分析や熱力学解析により材料表面に形成された酸化物の評価が行われたところ、材料表面に形成されたTiとZrの酸化物は主にTiO2固溶体、ZrTiO4固溶体、ZrO2固溶体であり、これらが複合材料のさらなる酸化を抑制できることが解明されたとする。特に、Z80では2000℃までZrO2固溶体と液相を維持し、2600℃以上では表面に液相のみが形成され、表面酸化物が消失することが確かめられた。
これらの結果から、Z80が超高温環境下での減少量が少なく、耐酸化性も高いため、耐熱材料に最も適していると結論付けたと研究チームでは説明している。
なお、現在、日本や米国などにおいて、ソニックブームを低減することで陸地上空でも超音速飛行が可能な旅客機の開発が進められている。マッハ5以上の超音速での飛行する機体は空力加熱の影響で高温化するため、今回の研究によるZ80のような耐熱材料が実際に使用できるようになれば、超高速旅客機の実現可能性が高くなると研究チームでは期待を述べている。