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『学校中を笑わせよう!』は『学校へ行こう!』後継番組としてレギュラー化を

2022年11月16日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●コンセプトは「令和の学生応援バラエティ」
テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第250回は、11日に放送されたTBS系バラエティ特番『学校中を笑わせよう!』(19:00~)をピックアップする。

番組のコンセプトは「全国の学校に笑いを届ける令和の学生応援バラエティ」。その内容は同じTBSで放送された『学校へ行こう!』を彷彿とさせるものがあり、V6が解散して同番組の復活は不可能になっただけに、何気に注目の特番だった。

○■コロナ禍に苦しんだ高校生を応援

番組冒頭、今夏の甲子園大会で優勝した仙台育英・須江航監督の「高校生活っていうのは僕たち大人が過ごしてきた高校生活とは全く違うんです。青春ってすごく密なので」というコメントが紹介された。

続いて聞こえてきたのは、「そう、高校生たちは密になって謳歌するはずの青春を許されず、大人以上に我慢を強いられてきた。そんな不完全燃焼の高校生たちを笑顔に。この番組は一歩前に踏み出して殻を破ろうとする高校生たちを徹底的に応援します」というナレーション。

制作サイドは『学校へ行こう!』の後継番組ではなく、「コロナ禍に苦しめられた高校生たちを応援したい」という思いを前面に押し出した。ただこの方針は、高校生たちはもちろん、局内やスポンサーへの大義名分としてもいいが、視聴者にもコロナ禍という重い前提を背負わせる形になってしまう。「『学校へ行こう!』のような何も考えずに笑える番組のほうがよかった」という人も多いのではないか。

番組は、「悩みを持つ高校生のために芸人がオリジナル歌詞を制作して熱唱してもらう」というコーナーからスタート。ロケの舞台は栃木県の宇都宮短期大学付属高校で、全校生徒2,600人以上(1学年24組)という超マンモス校だった。

1人目の“高校生ヴォーカル”は、2年17組の巴南(はな)さん。「マスクを外したときの反応が怖くて外せず、クラスメイトの女子たちも顔を見たことがない」という悩みを抱えていた。

ここで制作サイドは画面に「マスクを外した異性を見た時にどう感じたか」というアンケート結果の円グラフを表示。その内訳は、「可愛さ・かっこよさ半減」が27.1%、「もったいない」が18.6%、「見たくなかった」が16.15%、「意外と老けてる」が16.1%、「ただただ残念」が13.4%、「その他」が8.65%と、ほぼネガティブな声で占められていた。

ただ、これは化粧品販売の会社が商品プロモーションに際してリリースしたアンケートの一部結果だけに恣意的な感が強く、ゴールデンタイムで流すのはやりすぎだろう。テレビ局に根付く悪しき習慣であり、作り手たちが「これくらいならいいだろう」と思っているのならかなり危うい。
○■丁寧な後追い撮影で幸せ感が倍増

続いて再現ドラマとインタビューで、巴南さんが「男子生徒に言われたひと言がショックになったこと」「最初は顔も知らなかった海星くんとインスタのダイレクトメッセージを続けて好きになったこと」「学校でもたまに話す仲になったが、素顔見られるのが不安であること」などを紹介。

「デートしてマスクを外して食事がしたい」という純粋な気持ちをストレートに映すことで、応援せざるを得ない心境にさせた。やはり“本気の思い”は現在のテレビ番組に求められているキーワードの1つであり、その対象が高校生ならなおのことだろう。

四千頭身が歌詞を作り、歌の練習をする様子が映されたあと、VTRは本番5分前へ。巴南さんの「(こんな機会)もう人生でないですよね。一度きりの5分間」という言葉に視聴者のドキドキも募っていく。

150人超の生徒が集まる会場に彼女が現れると、割れんばかりの拍手と笑顔。この光景を見て、『学校へ行こう!』の「未成年の主張」を思い出した人は多いだろう。「私には今、好きな人がいます」と口火を切ると会場が盛り上がり、海星くんの何とも言えない表情が映し出された。このあたりの演出は「未成年の主張」とほぼ同じだ。

巴南さんが勇気を出して初めてマスクを取ると、会場から「かわいい~」という声が飛び、緊張しながらも大塚愛「さくらんぼ」の替え歌を歌い上げた。その直後、名前を呼ばれた海星くんもマスクを外し、告白は成功。巴南さんは涙を目にためながら「ありがとうございます」と語り、めでたしめでたし……と思いきや、続きがあった。

映像は巴南さんと海星くんの2ショットに切り替わり、勝利者インタビューのようなものがスタート。巴南さんが「やってよかったな。今回がなかったらずっと(マスクを)外してなかったと思うので」、海星くんが「めっちゃうれしかったです。かわいいと思います」と話した。さらに後日、付き合い始めた2人が文化祭を一緒に回る姿も映し出され、最後は「末長くお幸せに」というナレーションで終了。

後追いの撮影を丁寧に行う制作姿勢は素晴らしく、視聴者は2人の幸せを分けてもらえたような気持ちになったのではないか。エンタメの幅が広がり、数も増える中、現在のテレビ番組は、より高い没入感を与えるためにこれくらいやるべきなのかもしれない。

●芸人がしっかり脇に徹する誠実さ
2人目の“高校生ヴォーカル”は2年12組の慶二くん。「内気で人見知り、緊張しいで、みんなの輪に入れない、素を出せない」「『嫌われたらどうしよう』と思い、半年以上過ぎた今もクラスになじめない」と本気で悩んでいた。

慶二くんは本番直前でパニックになりながらも、きつねが手がけたOfficial髭男dism「Pretender」の替え歌を熱唱。するとクラスメイトたちは「話したい」「カラオケ行こう」などと迎え入れる。慶二くんは「ありがとうございます」と頭を下げ、「ここからは自分の力で仲良くなっていきたいと思います」とコメントで締めくくった。

このコーナーの魅力は、勇気を振り絞った高校生たちの挑戦が「どんな結果を迎えるのか」というハラハラドキドキを楽しめることと、生徒たちの終始ノリノリで楽しそうな姿を見て元気をもらえること。

さらに、「四千頭身ときつねが生徒たちの前に出るシーンを放送しない」という編集も適切だった。あくまで主役は高校生たちであり、舞台は彼らの通う高校。芸能人が脇に徹する形の演出に留め、その意味でも大物過ぎない芸人のチョイスが絶妙だった。

続いて今回のメイン企画へ。「数々の合唱大会は中止。歌うにはマスクをしなければならなくなるほど、不完全燃焼な思いをしてきた合唱部。そんな全国の歌が大好きな高校生たちにある大物が手を差し伸べた」というナレーションが流れ、つんく♂が登場。出場5校による「ソロパートあり」「ダンスパフォーマンスあり」の新たな合唱コンクールを行うという。

1校目の神奈川県・相模原弥栄は、レベッカ「フレンズ」(85年)を合唱。ソプラノ、メゾソプラノ、アルト、テノール・バスの4パートに変換し、ソロは誰が歌うのか、ダンスの振り付けはどうするのか、踊りながら歌えるのかなどの課題を乗り越えて、378点を獲得した。

2校目の愛知県・愛知は、渡辺美里「My Revolution」(86年) を合唱。ソロパートに6人が立候補したオーディションを経て挑んだ結果、379点を獲得。

3校目の群馬県・樹徳は、Superfly「愛をこめて花束を」(08年) を合唱。「防音室に1人こもるコミュ障・陰キャの歌うまエースがフルコーラスでソロを歌う」という大胆な戦略で377点を獲得。

4校目の東京都・聖徳学園は、ZONE「Secret base~君がくれたものから」(01年) を合唱。中学生を含む最小12人で挑み、ここまでの最高点となる388点を獲得。

最後の埼玉県・川越女子は、DREAMS COME TRUE「決戦は金曜日」(92年) を合唱。トップクラスの進学校で音楽部も強豪であり、最多50人の部員から20人の精鋭をそろえて高難度の激しいダンスを披露し、384点を獲得。最小12人で挑んだ聖徳学園が優勝を果たした。
○■学生生活のあらゆるシーンが対象に

『ハモネプ』(フジテレビ系)という番組もあるが、あらためて合唱というコンテンツとテレビの相性は抜群だと思わされた。さまざまな声が重なり合う合唱自体の素晴らしさはもちろんのこと、歌い終えたあとの緊張や重圧から解放された表情、全員で手をつなぎながら審査結果を待つ姿、結果が出て思わず抱き合い、大粒の涙がこぼれて止まらないなど、感動的なシーンが続出。

「今までの練習の中で一番キレイにできました」「今日のために頑張ってきてよかったです」「みんながみんな殻を破れた」「本当にびっくりするくらいめっちゃ輝いてた」「めっちゃ悔しいけど、めっちゃ楽しかった」などの心を洗われるような言葉が次々に飛び出した。

ソロパートやダンスのオリジナリティによるエンタメ性アップ、昭和・平成の曲を使えば両親や祖父母世代も引きつけられるなどのメリットも含め、当番組が続くのなら毎年放送される定番企画となっていくだろう。

今回の特番はいつの間にか、「歌を歌って完全燃焼! 昭和・平成の名曲で自分の殻をぶち破れスペシャル!」というサブタイトルがつけられ、歌に特化した内容だった。ただ、音楽系なら吹奏楽やダンスがあり、その他の運動部も文化部もフィーチャーできるだろう。

逆に言えば、恋や友情、休み時間や放課後の過ごし方なども含めて、幅広く切り取っていかなければ『学校へ行こう!』の後継番組にはなり得ない。V6の解散から1年が過ぎた今、特番放送のタイミングとしては上々だっただけに、次の展開に期待が持てそうだ。

TBSが本当に「コロナ禍の高校生を応援したい」と思っているのなら、最低でも季節に1回以上、できれば毎月・毎週のレギュラー放送をしてもいいのではないか。
○■次の“贔屓”は……一夜限りのスペシャルユニットコントを披露!『ドラフトコント』

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、19日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『ドラフトコント2022』(21:00~)。

千原兄弟・千原ジュニア、小籔千豊、オードリー・春日俊彰、アンガールズ・田中卓志、チョコレートプラネット・長田庄平の5人が「一緒にコントをやりたい」と思う芸人を20人の中から指名。コントをイチから作り上げ、1カ月後に披露してチャンピオンを決める。

昨年11月27日に放送され、今回が約1年ぶり2度目の放送となるが、前回はとにかくレベルの高さに驚かされただけに、今年も期待していいだろう。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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