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すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器PFSがファーストライトを達成

2022年11月14日17時25分 / 提供:マイナビニュース


東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と国立天文台(NAOJ)は11月11日、国立天文台ハワイ観測所において9月21日から26日にかけて行われた、すばる望遠鏡の新型観測装置である超広視野多天体分光器「Prime Focus Spectrograph(PFS)」の試験観測で、意図的に配置したファイバーを通して多数の星からの光を同時に分光器で観測しスペクトルを取得することに成功し、エンジニアリング・ファーストライトを達成したと発表した。

同成果は、Kavli IPMU所属で、PFSプロジェクトマネージャーを務める田村直之特任准教授を中心とする、米国、フランス、ブラジル、台湾など、国内外の合計24の大学や研究機関が参加した国際共同研究チームによるもの。

2022年度から始まったすばる望遠鏡のアップグレード計画「すばる2」において、2024年の科学運用開始を目指して開発が進められている分光装置がPFSであり、すでに稼働中の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC)」と共に、8.2mの口径を持つすばる望遠鏡の集光力と主焦点の広い視野を最大限に活かして、観測効率を向上させることが期待されている。

PFSの一度に見渡せる視野は満月の数倍も広く、その中から選出した最大で約2400の天体の光を同時に分光観測することが可能だ。それぞれの天体からの光を波長ごとに分散させて、近紫外域から可視光域を挟んで近赤外域までの幅広い波長範囲でスペクトルとして記録するのである。

PFSでは、望遠鏡やドームの複数の箇所に設置されたサブシステムが連携して観測を行う。約2400もの天体を観測するのがそれと同数の光ファイバーで、すばる望遠鏡の主焦点において直径1.3度角の視野内に取り付けられる。そして、それぞれが十数μmの精度で、観測したい星や銀河へと向けられる機構となっている。

観測された多数の天体からの光は、「青」、「赤」、「近赤外」の3つのカメラからなる分光器システムへと送られ、380nmから1260nmの広い波長範囲に及ぶスペクトルとして一度に分光観測される。このようにして得られたスペクトルにより、撮像観測だけではわからない、天体の詳細な運動や化学的性質、年齢など、さまざまな特徴を調べることができるようになるのだという。


PFSの開発は、2018年からはその装置の一部を望遠鏡に取り付けてテストが実施されてきた。そして最近になり、天体の光をPFSに取り込むための重要なテストがスタート。9月21日から26日にかけて実施されたすばる望遠鏡での試験観測で行われたのが、光ファイバーが天体に対してどの程度正確に配置できているかを調べるラスタースキャンというテストだという。目的の天体が写ると予想される主焦点装置(PFI)焦点面上の位置に光ファイバーをセットした上で、望遠鏡の指向位置を少しずらしては分光器でスペクトルを取り、この動作を格子状に並んだ指向位置においてデータの取得ができるまで繰り返された。これにより、実際の光ファイバーの位置と、天体が実際に写っている位置のずれを測定できるのだという。

試験の開始後、多くの明るい星でラスタースキャンによるデータが取得され、位置ずれを修正するために可能な最適化が繰り返された。最終的に、光ファイバーをターゲットに対して正確に配置できたことが確認されたとする。なお今回の観測で得られたデータは今後、慎重に分析・議論される予定としている。

なお、次回のPFS光学観測は、11月14日~20日と12月15日~18日に予定されている。より細かいピッチでラスタースキャンが行われる予定で、可能な限り暗い天体でより長い時間露光を行うことが目標とされている。

また、PFSが科学運用を開始した後には、HSCと連携しての大規模サーベイ観測「SuMIRe(すみれ:Subaru Measurement of Imagesand Redshifts)計画」も予定されている。遠方銀河と星の広域巨大統計から、ダークマターやダークエネルギーの正体、多種多様な銀河の形成・進化の物理過程に迫る内容としている。

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