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スタンレー電気など、ワット級の高ビーム品質GaN系フォトニック結晶レーザーを開発

2022年11月08日15時15分 / 提供:マイナビニュース


スタンレー電気と京都大学(京大)は11月7日、共振器としてフォトニック結晶を用いた半導体レーザーである「フォトニック結晶レーザー」をGaN系材料で構成した結果、青色かつワット級出力ながら高ビーム品質を実現したレーザーの発振に成功したと発表した。

同成果は、スタンレー電気の江本渓研究員、同・小泉朋朗研究員、京大大学院 工学研究科の野田進教授、同・メーナカ・デ・ゾイサ講師、同・崎賢司特定准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の材料科学全般とその関連分野を含めたオープンアクセスジャーナル「Communications Materials」に掲載された。

GaN系材料を用いた半導体レーザーは、広く普及しているが、従来の端面発光型レーザーは、高出力化目的で光出射面積を拡大すると、ビーム品質が劣化するという問題を抱えていた。また、ビーム形状は楕円のため、レンズなどの複雑な光学系を用いる必要があり、応用の幅を制限していたという。

フォトニック結晶レーザーはそうした課題を解決できることから、研究チームも開発に力を入れており、これまでにGaAs系材料を用いて、赤外線で動作する10W~数10W級の高出力・高ビーム品質動作を実証済みのほか、青色で動作するGaN系フォトニック結晶レーザーも、基礎的な動作実証に成功したことを報告していたという。しかし、GaN系フォトニック結晶レーザーはしきい値電流密度が高く、また出力もミリW以下にとどまっており、十分な特性が得られていなかったとのことで、今回の研究では、同レーザーのワット級高出力・高ビーム品質化の実現を目指すことにしたという。


今回の研究におけるポイントは3点だとしている。

1つ目は、「適切なデバイス層構造の設計による光の漏れ(面内損失)の低減」で、過去のデバイスのしきい値電流密度が高い原因に関する課題抽出として、過去のデバイス層構造に対する独自解析が実施された結果、デバイス面内方向の光の漏れ(面内損失)が大きな値であったことが判明。これを受けて、適切な層構造や共振器サイズを選択することで、面内損失を十分に低減する構造が見出されたという。

2つ目は、「GaN系フォトニック結晶形成法の確立」で、フォトニック結晶の形成方法に関して見直しが図られたという。従来はフォトニック結晶を形成する際、二酸化ケイ素(SiO2)層を下敷きに利用した手法が用いられていたが、同手法では空孔が不均一になりやすく、それにより光の共振が乱され、レーザー特性を悪化させる要因となっていたとする。

そこで、有機金属気相成長法(MOVPE法)の成長条件を整えてGaNの結晶成長を制御し、SiO2を用いずに空孔を形成する手法を開発することで、極めて均一で高品質なフォトニック結晶の形成が可能になったとする。

そして3つ目は「正方格子・2重格子フォトニック結晶構造の採用」で、これまでGaN系フォトニック結晶レーザーにおいては、フォトニック結晶の不均一性の問題で、レーザー発振させやすい三角格子構造が採用されてきたものの、それでは出力を得にくいという問題があったという。それに対して今回は、高品質フォトニック結晶形成方法の考案により高品質なフォトニック結晶の形成が可能となったため、高出力化が期待できる正方格子構造を採用することにしたとする。

さらには、GaAs系フォトニック結晶レーザーで開発された、2重格子フォトニック結晶の概念が、GaN系フォトニック結晶レーザーでも採用されたほか、電極構造の見直しも行われたという。具体的には、従来はレーザー光が電極で遮られていたが、出射方向が変更され、電極に光取り出し口を設置することで、光取り出し効率を向上させたという。

これら3点を踏まえた上で、デバイスが作製されたところ、GaN特有の結晶面で囲まれた、極めて均一な空孔の形成が確認されたほか、青色の波長でもってワット級の出力、かつビーム拡がり角が~0.2度という狭いビームの出射に成功したとする。

青色系の高出力・高ビーム品質なレーザー光源の需要は多いことから、今回の研究成果は、電気自動車生産における銅の加工のほか、CFRPのレーザー加工、金属3Dプリンター、車載用光源などの高輝度照明、水中(海中)LiDARなど、さまざまな分野への応用が期待されると研究チームでは説明するほか、出射されるビームは単峰形状で極めて狭い拡がり角であることから、光学系を省略することが可能となるため、応用製品の小型化も期待できるため、今回の成果は工業的にも大きな意義を持つともしている。

なお、今後については実用化を目指し、さらなる高出力化や高効率化を進めていく方向で研究開発を進めていくとしている。

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