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糖尿病治療薬による尿路結石の形成抑制作用、東北医科薬科大などが確認

2022年11月08日15時00分 / 提供:マイナビニュース


東北医科薬科大学、東北大学、四谷メディカルキューブの3者は11月7日、糖尿病治療薬として使用されている「SGLT2阻害薬」の腎結石(尿路結石)形成抑制効果を明らかにしたことを発表した。

同成果は、東北医科薬科大 医学部 泌尿器科学教室の阿南剛助教(現・四谷メディカルキューブ 泌尿器科科長)、東北大大学院 医学研究科の廣瀬卓男助教(東北医科薬科大 医学部 統合腎不全医療寄附講座 非常勤講師兼任)、東北医科薬科大 病院薬剤部の菊池大輔副薬剤師長らの共同研究チームによるもの。詳細は、薬理学全般に加えてその関連分野も扱う生物医学系の学術誌「Pharmacological Research」に掲載された。

尿路結石症は猛烈な痛みを伴うことが知られ、男性は約15%(およそ7人に1人)、女性も約7%(およそ15人に1人)が患うという罹患数の多い内分泌代謝疾患の1つとして知られているほか、再発率も高く、5年で約50%が再発することも知られている。

尿路結石の約90%は結晶成分としてシュウ酸カルシウムを含むが、このカルシウム含有結石の形成を抑制したり、溶解したりする薬はなく、根本的な治療薬は存在しないとされてきた。結石の有効な予防方法は「しっかり水分を摂ること」であり、これは約2000年前から変わっていない。そのため、尿路結石症の成因の究明、再発予防法、治療薬の確立が長年の課題とされてきた。

一方、近年の糖尿病は、腎臓でのグルコースの再取り込みを抑制し、以前とは異なって積極的に糖を体外に排泄するという考え方が採用されているが、それを実現するのがSGLT2阻害薬である。そして最近になって注目されているのが、SGLT2阻害薬は糖尿病としての効果だけでなく、心臓保護作用や腎臓保護作用があるという点のほか、利尿作用や抗炎症作用といった結石形成に抑制的に働く効果も持つことも指摘されるようになってきたという。そこで研究チームは今回、SGLT2阻害薬が結石形成を抑制するのではないかと考察したとする。


しかし、これまでSGLT2阻害薬と腎結石形成に関する詳細な検討はなされていなかったことから、今回の研究では、まず日本のDPCデータベース(糖尿病患者約153万人)を使用し、リアルワールドデータ(医療ビッグデータ)を用いて、SGLT2阻害薬処方の有無で尿路結石の有病率に差があるのかどうかを検証することにしたという。

約90万人の男性糖尿病患者のうち、SGLT2阻害薬を処方されている患者での尿路結石有病率は2.28%、SGLT2阻害薬の処方されていない患者での尿路結石有病率は2.54%であり、SGLT2阻害薬の使用患者では尿路結石の有病割合が有意に低下していることが確認された。

また、シュウ酸カルシウム腎結石形成ラットとマウスを使用した動物実験により、SLGT2の阻害が結石形成にどのように関与しているかの検討が行われたところ、シュウ酸カルシウム腎結石形成ラットでは、SGLT1/2阻害薬であるフロリジン投与により、腎結石形成量が有意に抑制されたとする。

さらに、結石形成に重要なタンパク質であるオステオポンチン(OPN)の発現や炎症マーカータンパク質、腎障害・線維化マーカータンパク質もフロリジン投与により有意に低下することが判明した。

一方、フロリジンの利尿作用による尿量増加が想定されていたが、飲水量と尿量に有意な差は認められなかったとのことで、今回の腎結石形成抑制作用は利尿作用ではなく、抗炎症作用によるものと考えられると研究チームでは説明している。

加えて、SGLT2ノックアウトマウスでは、シュウ酸カルシウム腎結石の形成がほとんど認められず、OPNを含む結石形成や炎症に関わる遺伝子発現もワイルドタイプマウスに比べて有意に低下していることが判明したほか、ヒト近位尿細管培養細胞を使用した検討においても、動物実験の結果と同様に、SGLT2の阻害によりシュウ酸カルシウム結晶接着量の低下ならびにOPNを含む結石形成や炎症に関わる遺伝子発現の有意な低下を認められたという。

なお、今回の研究結果を受けて研究チームでは、カルシウム含有腎結石に対する予防薬・治療薬はこれまで存在していないので、腎結石形成メカニズムの解明ならびに腎結石治療薬への応用が期待できるとしている。

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