2022年11月09日11時00分 / 提供:マイナビニュース
●かまいたち&チョコプラにひたすらイタズラ
テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第249回は、5日に放送されたフジテレビのバラエティ番組『イタズラジャーニー』(毎週土曜18:30~)をピックアップする。
今秋の改編は各局とも動きが少なかったが、新番組で最も楽しみにしていたのがこの番組。「かまいたち、チョコレートプラネットという現在の超売れっ子がひたすらイタズラを仕掛けられる」というシンプルなコンセプトだけに、山内健司、濱家隆一、長田庄平、松尾駿+進行役の渋谷凪咲がどう笑いに変えていくのか見ものだ。
20年にわたって放送された『もしもツアーズ』の後番組であり、局内での期待値も高いという。
○■イタズラの適正数はいくつなのか
オープニングでは、まず「旅に、笑いを。」の文字が表示され、「笑い」の上に「イタズラ」のふりがなが挿入された。続くナレーションは、「レギュラー発進した『イタズラジャーニー』。今回の舞台は愛知県犬山市」。ナレーターは木村匡也であり、この声を聞くといまだに『めちゃ×2イケてるッ!』(フジ系)を思い出して笑いのムードを感じる人が多いのではないか。シンプルだが、番組開始から数秒の演出で期待感が高まっていく。
次に映されたのは前回放送のダイジェスト。松尾がウェットスーツではなく「浮力ゼロ」の阪神タイガース・掛布雅之のユニフォーム姿にされ、野球のスコアボードを模したボードで激流下りの「リバーブギ」に挑むまでの経緯が映された。
さらに、今回の予告映像が始まり、激流に飲まれそうな長田、強烈な放水を受ける山内の姿が映されたあと、「濱家ヒーロー参上 コスプレ×ハロウィンBBQ」の文字を表示。のび太にふんした山内、プロゴルファー猿にふんした松尾の姿を映したところで2分弱のオープニングが終了した。「30分番組でここまでネタバレしてもいいのか?」と思わされたが、「まだレギュラー化2回目だけに、これくらいやって視聴者を引きつけなければいけない」ということか。
本編がスタートすると、画面左側にロールプレイングゲーム風のイラストで「イタズラ経験値」が表示された。そこには、「山内 大玉」「濱家 クリーム砲 ビリビリペン 痛風」「長田 クリーム砲 ビリビリペン」「松尾 クリーム砲 掛布 スコアボード」と初回放送で食らったイタズラが書かれている。
イタズラの種類は4つだったが、この数は適正なのか。少ないと物足りないし、多すぎると視聴者層を選ぶ番組になってしまいかねない。いち早く適正数を見極める作り手のセンスが問われそうだ。
リバーブギは朝7時にスタート。強烈なスケジュールだが、売れっ子をロケ番組に起用する以上、こうなるのは当然であり、手配する現場スタッフの苦労が感じられる。
ちなみに痛風の濱家は見学で、川下りは山内、長田、松尾の3人のみ。痛風持ちの濱家をメンバーに組み込んだことで、イタズラの幅に影響があるのか。構成作家たちにとっては腕の見せどころと言えそうだ。
○■涙目でブチキレたチョコプラ・松尾
リバーブギは全長3kmのロングコースだが、スタート直後は「気持ちいい」「楽しい」という声が出るなど、序盤は流れが緩やか。しかし、「強力放水武器屋×2」というテロップが表示され、猛攻撃を受けた3人はびしょ濡れにされてしまう。これが今回最初のイタズラだった。
それでも3人は、「イタズラの標的となったときに身代わりの指名ができるチケット」を賭けて、必死の形相でゴールを目指す。
一方、ゴール地点の2人は…
渋谷「濱家さんっていつもこんな台本を頭に入れてるんですか?」
濱家「入れてない。『手元カンペだけ』ってのはあんまりないなあ。前に出されるカンペがあるから」
渋谷「こんなんやってたら濱家さんスゴ~と思って」
濱家「いや全然」
渋谷「私、夜いっぱい読んでも何か全然頭に入らない」
と、のんびりモード。常に満面の笑みを浮かべている渋谷の主な役割は、過激なイタズラとのギャップを見せることなのだろう。
続く試練は、「前日の雨で絶賛増水中! 天からの贈り物、高さ2mの荒波ゾーン」。「作戦:いのちだいじに」の文字が表示され、「ギリ決行できる増水レベル。リバーブギ最上級のスリルを楽しむジャーニーたち」というナレーションが入るほどの荒波に、3人はいつ溺れてもおかしくない姿を見せたほか、水をガブ飲みしていた。
けっきょく勝ったのは長田で、山内は疲労困ぱいで流されながら2位を確保したが、松尾は逆流に乗ってしまい、断トツ最下位でゴール。松尾は開口一番、「僕は今日でこの番組辞めます」とこぼし、その後も「マジで危なかった。本当に危ないコレ」「死ぬかと思った」「ホント腹立っちゃって」「早退させてください」と涙目でブチ切れて笑いを誘った。
今の時代、「かわいそう」「イジメに見える」と思う視聴者もいるだろう。ただそれでも、「この4人なら笑いとして見せられる」というムードがあり、今後も「ボヤきながら、楽しそうにも見える」という絶妙のバランスを見せてくれるのではないか。
そんなひん死の松尾を尻目に、渋谷は「それではみなさん、次の目的地に行きましょう!」と容赦なし。やはりその笑顔が番組のメリハリになり、土曜夕方らしい明るいムードを保つ立役者に見えた。
●かまいたち濱家が最後に見せた小さな笑い
9時30分になり、次のテーマである「ハロウィンBBQ大会」がスタート。しかし、雨に降られて4人のテンションはさらに下がっている。
そんな4人に、「ハロウィンBBQらしくみんなで仮装しましょう」という旅のガイダンスが発表され、コスプレ衣装をランダムに入れた4つのテントが用意された。しかし、テントやコスプレ以前に、「落とし穴がないか」と怪しむ松尾。特番時代にヘビが置かれていたこともあるため警戒心が強く、そのビビりぶりも楽しみの1つだ。
けっきょく長田がアメリカンポリス(常夏のマイアミ風)、山内がのび太くん(41歳)、松尾がプロゴルファー猿(木で作ったクラブは8万円)、濱家がスパイダーマンのコスプレで登場。「もちろんこの中にはイタズラ誘導のためのキャラクターが……」という意味深なナレーションが流れるが、それ以前にスパイダーマンの濱家が松葉杖で登場して笑わせた。
「痛風で歩けないスパイダーマン」はそれだけで最高のイタズラだったと言っていいだろう。さらに、「覆面をかぶって顔が見えない濱家に渋谷がホクロをつけてイジる」という細かい笑いも忘れない。こういう細かく小さい笑いが増えるほど、この番組のファンは増えていくのではないか。
番組は、「役割分担をしてバーベキューの準備をしてください」という旅のガイダンスによって、濱家・長田・渋谷が調理担当、山内がみんなの座るイスを取ってくる担当、松尾が薪を取ってくる担当に分けられ、「『準備しないとイタズラしちゃうぞ』のハロウィンBBQが開幕」というナレーションであっさり終了。正直、「次が早く見たい」より「もう終わり?」という“小出し感”のようなものを感じてしまった。
○■過密なスケジュールが必要な理由
最後に次回予告として、「坂道から転がってきた大玉に襲われる松尾」「南海キャンディーズ・しずちゃんらしき女性からパンチを受ける山内」「フルスイングのケツバットを受ける松尾」の姿が映し出された。しかし、注目すべきはそれだけでなく、BBQに「うま~」と声をあげる濱家や、幸せそうな顔で食べる渋谷の姿も映されていたこと。
よく見ると、「いつも何か素敵なことが貴方を待つよ」というテロップも表示されていた(「素敵なこと」に“イタズラ”というふりがなが振られていたが)。このような「あくまで楽しげムードを前面に押し出していく」という演出なら、ファミリー層にも見てもらえる可能性はありそうだ。
番組内で「過密スケジュール」とうたっていたが、まだバーベキューのあとに、「PM0:00お菓子の城」「PM2:30遊園地」が予定されている。このペースで進むと、1日の旅を5週程度にわたって放送するのだろう。
つまりスケジュールは過密だが、逆に編集はゆるめでの放送ということか。ゴールデン・プライム帯の番組と比べると密度の薄さが気になってしまうが、レギュラーのロケ番組に、かまいたち、チョコレートプラネット、渋谷凪咲という売れっ子をそろえればこうなるのは必然であり、旅先のエリアも限られてくるだろう。ならば、放送1回あたりのイタズラをもう少し増やしたほうがいいのかもしれない。
「ジャーニー」というフレーズが番組名に入っているように、旅番組であることは間違いなく、前番組『もしもツアーズ』からの流れを感じさせられる。しかし、旅の情報性はほとんどないだけに、「売れっ子をそろえた」からと言っても、これまでの視聴者にそのまま見てもらえるかは分からない。
とは言え、放送しながら試行錯誤を重ね、笑いのポイントを見つけ、面白さを増していくタイプの番組であり、まずはスタート時のハイテンションをできるだけ保っていきたいところ。売れっ子をそろえた分、手応えがなければ撤退は早そうなだけに、スタッフの奮闘が鍵を握るのではないか。
○■次の“贔屓”は……コロナ禍で『学校へ行こう!』が復活!?『学校中を笑わせよう!』
今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、11日に放送されるTBS系バラエティ特番『学生が芸人パワーで大変身 学校中を笑わせよう!』(19:00~)。
コンセプトは「全国の学校に笑いを届ける令和の学生応援バラエティ」。コロナ禍で修学旅行、体育祭、文化祭などが中止になり、人生に一度しかない貴重な時間を奪われている現代の高校生たちに笑ってもらうべく、芸能人たちが奮闘するという。
予告されているのは、悩みを持つ高校生のために芸人がオリジナルの歌詞を作って熱唱してもらうコーナーや、ミリオンアーティストが合唱部に光を当てる大型企画。そのコンセプトと内容を見れば、誰もが同じTBSで放送された『学校へ行こう!』を思い出すだろう。
V6が解散して同番組の復活は不可能になったが、それから1年が過ぎた今、特番放送のタイミングとしては上々。今年8月に深夜帯で放送され、早くもゴールデン特番というスピード感も含め、継承番組としての期待感が募る。
木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら