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大阪公大など、結晶とガラスのような非晶質両方の性質を併せ持つ物質を発見

2022年10月31日19時58分 / 提供:マイナビニュース


大阪公立大学(大阪公大)、東北大学、日本原子力研究開発機構(原子力機構)、J-PARCセンター、高輝度光科学研究センター(JASRI)の5者は10月28日、結晶質固体「Ba1-xSrxAl2O4」の特定の原子振動が、構造量子臨界点付近の化学組成において乱れた状態で停止し、原子配列に部分的にずれが生じることで、結晶と非晶質両方の性質を併せ持つ状態になることを発見したと発表した。

同成果は、大阪公大大学院工学研究科の石井悠衣准教授、物質・材料研究機構の佐藤直大研究員、同・森孝雄グループリーダー、東北大 金属材料研究所の南部雄亮准教授、J-PARCセンターの河村聖子研究副主幹、同・村井直樹研究員、JASRIの尾原幸治主幹研究員、同・河口彰吾主幹研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物性物理とその関連分野全般を扱う学術誌「Physical Review B」に掲載された。

水が冷やされると氷になるような、同じ物質の性質が不連続に変化する現象を「相転移」という。相転移には、固体から固体に変化する場合も数多く存在する。そして結晶の化学組成などを適切に制御すると、絶対零度での相転移である「量子相転移」が起こることがある。これまで、磁気相転移が引き起こす量子臨界点については非常に多くの研究が行われてきたという。しかし、構造相転移の抑制によって現れる「構造」量子臨界点に焦点が当てられることは少なく、物質科学の未踏領域となっていたとする。

構造相転移の起源の1つに、「音響ソフトモード」とい原子の集団的な振動がある。通常、同モードの振動周波数(ω)が温度低下に伴って徐々に減少していき、ある有限温度でω=0となったとき、その原子振動パターンを反映した構造に構造相転移する。そこで研究チームは今回、充填トリジマイト型の酸化物強誘電体であるBaAl2O4が示す音響ソフトモードと、それが引き起こす構造相転移に注目することにしたという。


BaAl2O4ではバリウム(Ba)をストロンチウム(Sr)で全置換することができ、Ba1-xSrxAl2O4の化学式においてx=0.1付近で構造量子臨界点が現れる。そして今回の研究では、Ba1-xSrxAl2O4の構造量子臨界点近傍では、非晶質固体が通常示す過剰な格子比熱や、SiO2ガラスと同等の低熱伝導率が観測されることが発見された。

また、放射光X線を利用して結晶構造やその局所構造が詳細に調べられたところ、通常の構造相転移で期待されるような結晶の長距離秩序構造が、構造量子臨界点に向かって抑制されていることが判明したほか、構造量子臨界点以上の組成では、もともと原子振動の小さいBa原子は理想的な位置付近にとどまっているものの、AlO4(酸化アルミニウム)ネットワークにおいて理想的な原子配列からのずれが生じていることも明らかにされた。

さらに、中性子を用いてその原子振動状態の詳細な解析が実施されたところ、構造量子臨界点組成に向かって原子振動が全体的に大きく減衰していることが確認されたとする。そこで得られる中性子スペクトルは、非晶質固体において通常観測されるものに、その特徴が一致していたという。つまり、構造量子臨界点では、原子振動の位相が乱れた状態で音響ソフトモードが停止する(凍結する)ことで、Ba副格子は結晶の並進対称性を維持しながら、AlO4ネットワークではまさにガラス状となった「副格子ガラス状態」が実現し、上述の非晶質的な特性を引き起こしていることが、明らかにされた。

通常、結晶質固体は周期的な原子配列を基本としており、それによって並進対称性が満たされている。今回の成果は、ガラスのような周期構造の乱れが、結晶の並進対称性と共存可能であることを示すものだという。

今回の研究で発見された、結晶の周期性と非晶質のランダムネスを併せ持つ副格子ガラス状態では、それを形成する周期構造と、ガラス状ネットワークのハイブリッド構造を取る。この特殊なハイブリッド構造によって、同物質は、明らかに結晶質固体であるにもかかわらず、SiO2ガラスと同程度の低熱伝導率など、非晶質固体で一般に見られる熱的特性を示すことが確かめられた。またこの副格子ガラスの原子振動状態は、非晶質固体が示す原子振動状態と、特徴が一致していることもわかったという。

なお、この副格子ガラス状態は、原料を均一に混合して加熱するという簡便な方法で作り出すことが可能だという。また同現象は、音響ソフトモードを持つ物質であれば原理的に起こり得ること、またこの原理の適用に関し新たなプロセス開発は不要だとする。このことから、同原理をさまざまな物質へ適用することで、結晶と非晶質の2つの性質を併せ持つ、ハイブリッド材料の実現が期待できると研究チームでは説明している。

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