旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

高齢者のうつ・不安症を検出する尿中の新規バイオマーカー、京都産業大が発見

2022年10月31日06時30分 / 提供:マイナビニュース


京都産業大学(京産大)は10月28日、高齢者のうつ・不安症を非侵襲的に尿中から検出できる3種の揮発性物質からなるバイオマーカー群を発見したことを発表した。

また、同バイオマーカー群は、偽陰性がなく、既存のうつ病評価尺度(GRID-HAMD)との相関性が高いことから、診断に十分利用できると期待されることも併せて発表された。

同成果は、京産大 生命科学部の藤田明子研究員、同・加藤啓子教授、弘前大学の井原一成教授、東京都健康長寿医療センターの河合恒研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、メンタルヘルスを扱う学際的なオープンアクセスジャーナル「Discover Mental Health」に掲載された。

高齢者は、うつ病や不安障害の罹患率が高く、健康と要介護の中間の状態を示す「フレイル」の進行リスクを高めることが知られている。フレイルには、精神的フレイル(うつ・不安症)、身体的フレイル(サルコペニア)、社会的フレイル(ひきこもり)の3因子がある。この3因子を早期発見して適切な介入を行うことができれば、要介護状態への移行を阻止し、自立した健康な生活に戻すことができると期待されている。ただし、この3因子の中では精神的フレイルの診断が特に難しく、簡易的な手法が切望されていたという。

今回の研究は、東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チームの大渕修一部長が、板橋区において2011年以降現在も実施中の長期研究「板橋お達者健診2011コホート調査」において、板橋区在住の年齢66歳から88歳までの女性(374名)と男性(265名)を対象に、2015年度に実施された検診で回収された尿が用いられた。尿が着目された理由は、フレイルの進行には加齢に伴う代謝変化もリスクになると考察されたからであり、尿中揮発性有機化合物(VOCs)を解析したパイロット研究とされたためだという。

精神科医が診断した9名の、大うつ病および/または不安症罹患者と対象者のVOCsを、固相マイクロ抽出法とガスクロマトグラフ質量分析法を用いてプロファイリングが行われたところ、高齢者のうつ・不安症のバイオマーカーの発見に至ったという。


うつ・不安症と診断された高齢者と対照の高齢者のVOCsが分析されたところ、157種の揮発性有機化合物が検出され、その中から特に5種のうつ・不安症バイオマーカーが同定された。受信者動作特性曲線(ROC)を用いて解析が行われた結果、5種すべての正確さが70%以上であり、感度も高いものだったとする。さらに詳しく調べられたところ、5種類のうちの3種類の揮発性バイオマーカーが、大うつ病の判定に有効であることが示されたという。

今回報告された高齢者の研究成果を、以前研究チームがマウスモデルを用いた結果と比較したところ、うつ・不安症バイオマーカーは、ヒトとマウスで類似の代謝経路を通り、尿における最終代謝産物となっていることが判明した。このヒトとマウスの代謝経路の類似性は、これらのマウスモデルが、ヒト食品の機能性評価や薬理試験の評価試験に有用であることが示されているという。

なお、今後については、非侵襲性の簡便な尿検査キットの開発を目指し、より多くの高齢者に試してもらえるよう、工夫を進める必要があるとするほか、ヒトとマウスで類似の代謝経路を通り、尿中に排泄されるバイオマーカーの起源や体内動態、さらには、うつ・不安症の発症と関連する生理学的な意味の解明が、今後の課題であると考えているとしている。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る