2022年10月31日06時50分 / 提供:マイナビニュース
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日本メナード化粧品(メナード)、ファスマック、藤田医科大学の3者は10月28日、ニキビ内部の菌の構成を遺伝子レベルで解析した結果、個々人で菌の構成が異なり、多様な菌が生息していることが確認され、そのことからニキビには多様な菌が関与しており、菌全体のバランスを見た治療やスキンケアが重要であることが考えられると発表した。
同成果は、メナードの赤座誠文氏、同・三浦史帆里氏、同・八代洋一氏、ファスマックの高崎一人氏、同・西山依里、同・臼井敦子氏、藤田医科大 医学部総合アレルギー科の横井彩講師(研究当時)、同・二村恭子講師、同・鈴木加余子准教授、同・矢上晶子教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、皮膚疾患と化粧品・コスメに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology」に掲載された。
一般に、ニキビの原因はアクネ菌というイメージが強いが、メナードではこれまでの研究から、アクネ菌以外にもマラセチアなどの皮膚常在菌がニキビに関与していることを解明してきたという。そうした事実から、ニキビには、より多くの菌が複雑に関与していることが予測されているが、その全体像についてはまだ不明な点が多く残されているという。
そこで今回の研究では、ニキビ患者22名(女性12名、男性10名)を対象とし、次世代シーケンサーを用いて皮膚表面(ひたい、ほほ)とニキビ内容物(Tゾーン:ひたいや鼻など皮脂分泌が多い部位、Uゾーン:ほほやあごなど皮脂分泌が少なく乾燥しやすい部位)の細菌、真菌などを含む、ある特定の環境に生息する微生物の集まりである菌叢の解析を行うことで、そこに生息する菌の種類と構成比の解析を実施することにしたという。
皮膚表面サンプルは綿棒を用いて皮膚表面を擦る拭き取り法、ニキビ内容物サンプルは面皰圧出器を用いて内容物を押し出す圧出法によって採取された。そして細菌、真菌それぞれの菌叢解析が行われた。
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各サンプルの菌叢解析の結果、細菌については、皮膚表面と比較してニキビ内部においてアクネ菌「Cutibacterium」の構成比が高くなっていることが確認されたほか、ブドウ球菌「Staphylococcus」などの菌も検出されたという。真菌については、皮膚表面およびニキビ内部ともに、マラセチア「Malassezia」が多く検出されたとする。
菌叢の指標の1つとして、どれくらい多くの種類から構成されているのかといった「多様性」が評価に用いられる。細菌において皮膚表面とニキビ内部の菌叢を比較するため、遺伝的な相違に着目した解析法「Faith’s Phylogenetic Diversity」による多様性比較解析が行われた。
すると、ニキビ内部において、アクネ菌の比率が高いものの、そのほかにも多くの種類の菌が生息しており、皮膚表面よりも多様性が高くなっていることが判明したという。これはニキビ内部の菌叢は、皮膚表面よりもより多くの種類の細菌で構成されているということを意味するという。
またニキビ内部では、個々人でも菌の構成が異なっていることが確認されたともしており、このことから、皮膚の状態に個々人の菌のバランスが大きく関与していることが考えられるという。なお、皮膚表面、ニキビ内部ともに、細菌、真菌の構成比に男女差は認められなかったという。
研究チームでは、今回の結果から、菌のバランスを正常に保つことは、皮膚を健康な状態に保つことにつながることが推測できるとしている。