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農業害虫のハダニはアリの足跡を避ける、京大が発見

2022年10月27日17時55分 / 提供:マイナビニュース


京都大学(京大)は、農業害虫のハダニが、自分たちを捕食するアリだけでなく、捕食しないアリのどちらの足跡にも残る化学物質を避けることを発見したと発表した。

同成果は、京大大学院 農学研究科の矢野修一助教、京都工芸繊維大学の小西麻結大学院生(研究当時)、同・秋野順治教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、ダニに関する基礎と応用の両面の研究を扱う学術誌「Experimental and Applied Acarology」に掲載された。

ハダニの中でも、ナミハダニは効かない農薬の種類が最も多いことが知られている。10日ほどで世代交代し、ヒトの1000倍以上の速度で進化するため、あっという間に耐性を身につけてしまうためだという。ところがそんなハダニが、捕食者がいる自然生態系では低密度に抑えられている。これは、捕食者がハダニなどの餌動物を食べて減らすことに加え、餌動物に警戒させることで活動を抑え込んでいるからと考えられているという。

ハダニの天敵といえるのが、至る所にいて、小さな昆虫などを無差別に捕食するアリだが、何らかのアリ対策を獲得したからこそ、ハダニは絶滅せずに今まで生き延びてきているとも言える。

ハダニは通常、餌植物の葉に防御網を張って、その中で暮らすことが知られているが、餌葉が劣化したときは雌成虫が網を出て新しい葉を開拓することとなり、そのときは無防備となるという。その体長0.5mmほどで、それに対してアリは2.5~5mmと大きく、移動速度で敵わないため、網の外でアリに狙われれば、まず助からないと考えられることから、ハダニが生き残るにはアリに出会う前にアリを避ける必要があると考えられてきたという。

アリは、通り道に足跡物質(フェロモン)を残すことが知られていることから研究チームは今回、ハダニは、この足跡物質を手がかりにして、アリを避けているのではないかと推測。ハダニを捕食するアミメアリと捕食しないクロヤマアリの足跡と、その抽出物に対するハダニ雌成虫の忌避性を調べることにしたとする。


具体的には、ハダニがアリの足跡を避けるかどうかを調べることを目的に、アリの人工巣の入口に実験に使うマメの葉片を玄関マットのように置いて自動的に足跡がつくように仕掛け、全体的にアリの足跡物質のついた葉片を用意。

「玄関マット作戦」と命名され、玄関マット作戦の葉片と、足跡をつけていない葉片を隣り合わせにしてハダニに選ばせたところ、ナミハダニもカンザワハダニも、自分たちを捕食するアミメアリだけではなく、捕食しないクロヤマアリの足跡も避けることが確認され、ハダニは捕食されるかどうかに関わらず、アリ全般の足跡を避けている可能性が示唆されたという。これは、「危ない臭い」がする場合は、とりあえず避けるという慎重な戦略を採用していると考えられるという。

また、カンザワハダニがアミメアリの足跡を避け続ける時間は、1時間以上続くことも確認されたほか、ハダニは自分たちを捕食するもの、またはそれに似ているものの臭いに敏感で、同じダニでも捕食者のカブリダニ、そして捕食しないマダニの足跡も避けることも確認したが、別の農業害虫であるワタアブラムシ3匹を5分間閉じ込めた葉片は避けないことも確認したとする。

さらに、餌植物の枝についたアミメアリの足跡をカンザワハダニが避けるかどうかが調べられたところ、葉片同様に、ハダニはアリの足跡がある枝を避けることを確認。このことから、ハダニ以外にも小さな害虫はいるにも関わらず、自然界においては餌となる植物がごく一部しか被害を受けないのは、アリの足跡による抑止効果の可能性が考えられると研究チームでは説明する。

加えて、ハダニがアリの足跡物質を避けることを確かめることを目的に、アリの足跡から抽出された成分がT字型の濾紙の片方に塗られ、反対側には溶媒だけが塗られ、カンザワハダニをT字の下端から登らせて分岐でどちらを選ぶかを観察したところ、アリの足跡抽出物を避けたことから、ハダニがアリの足跡物質を避けることが確認されたという。

これらの結果について研究チームでは、アリの足跡物質という天然化合物を利用して忌避剤を作ることで、化学農薬に耐性を持つハダニたちを農作物から追い払える可能性があるとしている。

従来の化学農薬は、有害物質で害虫を殺したり追い払ったりする仕組みのため、それが人体や環境を害する恐れもあったが、アリの足跡物質は、アリが仲間同士で使う無害な化学物質であり、ハダニはその臭いからアリの存在を察知して捕食から逃れようとしているだけなので、もしアリの足跡物質に耐性をつけて避けなくなった場合、アリに捕食されるという運命が待つこととなる。ハダニに限らず、農業害虫は自然生態系では大発生しないとされていることから、彼らの大発生を抑えている仕組みを解明して応用することにより、合成農薬に頼った農業から脱却できる可能性があると研究チームでは指摘している。

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