2022年10月27日16時39分 / 提供:マイナビニュース
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SK hynixが2022年第3四半期(7~9月期)の決算を発表した。それによると、売上高は前四半期比20%減、前年同期比7%減の10兆9830億ウォン、純利益は前四半期比62%減、前年同期比67%減の1兆1030億ウォンとなったという。
PCやスマートフォン(スマホ)の需要低迷による半導体メモリの価格下落が背景にあるという。同社では、最新の1a-nm DRAMと176層4D NANDの販売比率と製造歩留まりを向上させ、競争力を高めたものの、価格下落が激しく、収益の減少を避けられなかったと説明している。
2023年の設備投資額を2022年の半分に抑制
同社の盧鐘元社長は「マクロ経済の悪化でサーバ投資も縮小しており、厳しい事業環境が持続する」とし、2023年の設備投資計画を、2022年の10兆ウォン台後半の見込みから50%以上減らす計画を明らかにした。また、採算の悪い製品を中心に生産量を削減し、サーバDRAMに注力し、収益性を高める準備を整えているという。
同社がサーバDRAMに注力する背景には、ハイパースケールデータセンターが、規模拡大に向けた投資を継続していることが挙げられる。そのため、一時的に需要が減退しても、中長期的には増加傾向が続くと予想している。また、HBM3やDDR5/LPDDR5などのサーバ関連で求められる先端技術に対応する製品供給ができているため、長期的な成長の観点からDRAMの地位を固めることができるとの見解を強調している。
さらに、2022年第3四半期に開発した238層4D NANDの量産も2023年より拡大していくことで、NANDでも収益性を高めるとしている。
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米国の対中規制が強化されれば工場売却も検討
米国政府は10月7日、中国にある半導体工場に対する米国製半導体製造装置の輸出規制強化を実施し、SK hynixのような外資系メーカーについてもケースバイケースで許可する可能性を示していた。
これを受けSK hynixは、1年間の18nm以下のDRAM製造装置購入許可(規制の1年間猶予)を米商務省から得たが、1年後にどうなるか不透明であり、今後さらに米中の対立が深まれば、先端DRAM製造用装置を中国に持ち込むことができなくなる可能性もある。そのため「米国の規制強化で中国工場に投資できず、工場運営が困難になるようなことが生じた場合は、工場売却や製造装置の韓国移転など様々な検討が必要になる」といった意向を示している。
EUV露光装置納入が以前から不許可
SK hynixは2021年7月に、韓国利川の本社工場にてEUV露光装置を採用した第4世代10nmプロセス技術「1α-nm世代」を適用したモバイルDRAMの量産を開始したが、同社のDRAM製品の約半分を製造している中国・無錫工場への導入は、未だに実現されていない。米国政府がオランダ政府に、ASMLのEUV露光装置を中国に出荷しないように要請しているとも言われており、ASMLも「出荷できないのはオランダ政府の輸出許可が得られないため」とコメントする事態となっている。
このため、無錫工場に将来に渡ってEUV露光装置が導入できないようなことになれば、中国での次世代DRAM製造ができず、競合に対する競争力を失う可能性が出てくることとなるため、そうなる前に無錫工場を売却するか、装置を韓国へ移転するか、といった選択を迫られることになると見られている。