2022年10月24日12時29分 / 提供:マイナビニュース
SAS Institute Japanは10月21日、アナリティクスやAIの最新動向とユーザー事例を紹介するイベント「SAS INNOVATE」を開催した。本稿では、取締役副社長兼最高技術責任者(CTO )のブライアン・ハリス氏による基調講演の模様をお届けする。
重要性を増すテクノロジーの信頼性
基調講演のテーマは「Move the World Forward」だ。最初に登壇した常務執行役員 営業統括本部 本部長の宇野林之氏は、このテーマについて、次のように語った。
「現在、ウクライナ情勢や円安など、世界はさまざまな危機に面しているが、危機は不安をあおる一方で、チャンスをもたらす可能性もある。われわれは、アナリティクスの力で世界を前進させることを目指している」
さらに、宇野氏は「重要な意思決定にテクノロジーが活用されるようになっており、テクノロジーの信頼性は重要性を増している。アルゴリズムがどう信用できるのか、こうした問題がますます大きくなっていく」と述べた。
アナリティクスではAIが用いられるケースが増えているが、宇野氏は「AIを活用したアナリティクスにより、有害で予期せぬ結果が出ることを最大限抑える必要がある。責任あるAIを実現するため、リーダーの役割が不可欠となっている」と語った。
企業は課題解決に向け、データの理解が不可欠
続いてハリス氏が登場し、企業は現在、「サプライチェーンの課題」「金融ボラティリティ」「ESG(環境・社会・ガバナンス)」「労働者の変動」「デジタル化」といった課題に直面しているが、SASはAIAIカンパニーとして顧客の期待値に応えることが必要だと説明した。
こうした中で、企業には意思決定を拡張することが求められているとして、ハリス氏は「アナリティクス、機械学習、AIに精通するしかない。データを理解しないと競争に負けてしまう」と訴えた。
こうした施策に取り組むうえでは、「クラウドと信頼できるAIが重要になる」と、ハリス氏は指摘した。「長い目で見ると、クラウドはデータセンターと同等のコストが生じる可能性がある。しかし、クラウドはレジリエンスとアジャイルを実現し、データ量に合わせてスケールアップできる。ビッグデータはクラウドによって爆発的に大きくなった。そうした中で、説明可能な透明性の高い意思決定が必要」(ハリス氏)
企業が成功するための3つのステップ
さらに、ハリス氏は企業が成功するためのステップとして、「アナリティクス・パートナーとの提携」「永続的なデータ&アナリティクス戦略の実行」「意思決定の規模を拡大.という3つのステップが必要だと述べた。
アナリティクス・パートナーとの提携が必要な理由としては、企業で作られているAIのモデルの90%が本番環境にデプロイされていない現実がある。パートナーの力を借りてデプロイまで持っていく必要があり、「SASは長年、このタスクを請け負ってきた」とハリス氏はいう。
アナリティクス戦略の実行に関しては、経営層がコミットすることが重要であり、また、意思決定の拡大に向けては、「深刻な課題を引き受けほしい。リーダーシップがあれば、社員は集まってくる。集まってきた社員に対し、アナリティクス、ML、AIに精通させることで、困難な課題が解けるようになる」と、ハリス氏はアドバイスを示した。
企業が成功するためにSASができること
これら3つのステップに対し、ハリス氏はSASが推進することを示した。「アナリティクス・パートナーとの提携」においては、組織全体を巻き込み、あらゆる場所にアナリティクスを展開し、新しいインサイトが業績にきくかを把握する必要があるという。
例えば、製造業なら、ある製品の需要増えたら、その製品を市場に多く出せるよう、アナリティクスとデプロイを組織全体に広げる必要がある。SASは、製造業に対しては、「製造&サプライチェーン、カスタマーインテリジェンス、ロジスティックスの最適化を支援することができる」と、ハリス氏は語った。
第2のステップ「永続的なデータ&アナリティクス戦略の実行」については、エコシステムにパワーを注ぎ込むことが必要となる。ハリス氏は、「企業が利用するテクノロジーは増える一方であり、われわれはシンプルにしたいと考えている。そのため、オープンソースソフトウェアからも価値を引き出す支援をする」と説明した。
SAS製品は当初、独自言語にしか対応していなかったが、今ではPythonやJavaにも対応している。「ポピュラーになった言語はSASで使えるようにしていきたい。相互運用性やAPIのケイパビリティを高めるため、オープンフォーマットで統合できるようにしていく」と、同社のエコシステムに対する方向性を示した。
3つ目のステップ「意思決定の規模を拡大」に対しては、透明性と信頼性の確保を行っていく。AIの活用が増えるにつれ、バイアスと公平性など、AIにまつわる問題も明らかになってきた。こうした状況に対し、SASは「責任あるAI」を実現することを責任あるイノベーションと捉えているという。その具体例として、ハリス氏は、SASが責任あるAIに関するチームを作って、適切なアナリティクスとAIの運用を支援していることを紹介した。