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橋本愛、未来のために命を使えるのは「とても幸福」 映画界の労働環境改善に意欲を燃やす

2022年10月22日07時00分 / 提供:マイナビニュース

●2年連続TIFFアンバサダーに意気込み「自分の気持ちや意見を発信したい」
第35回東京国際映画祭が10月24日~11月2日、日比谷・銀座・丸の内・銀座地区で開催される。上映会場を拡大、海外ゲストの招へいを本格的に再開し、上映本数は昨年の86本から110本へ増やす。また、東京宝塚劇場でオープニングセレモニーを初実施し、レッドカーペットも復活する。同映画祭を彩るフェスティバル・アンバサダーに2年連続で選ばれ、9月21日のラインナップ発表記者会見で世代間のギャップを埋める重要性などを訴えて報道陣の注目を集めた女優の橋本愛は「自分が生きている間に変わるかどうかわからないですが、自分の目で結果を見たいからやる、というのではなくて、もっとその先にある希望みたいなものを目的に据えながら命を使えるのはとても幸福です」と語っている。

2年連続で同アンバサダーに任命されたことは「ありがたく光栄なこと。まさか、2年もやらせてもらえると思っていなかったです。驚いたのが一番大きいです」という橋本。「去年はアンバサダーとして何をすべきか模索しながら終わっていた印象が強いです。今年は少し自分の気持ちや意見を発信したいと考えています。もちろん自分が絶対正しいと思っているわけではまったくなくて『私の発信を通してどんなムーブメントが起きるのか?』とある種、実験みたいにやってみたいです」

35回を数え、日本屈指の歴史ある同映画祭については「単純に、日本映画が世界に出ていく機会がそんなに多くない中で、こうした催しがあると、作るほうも『もっと世界の人たちに見てもらえる』とモチベーションにつながります。そして世界の人たちと交流することで、もっと自分たちの世界も切り広がるまたとない機会です」と話す。

一方で橋本はこう語る。

「毎回参加させてもらうたびにすごく緊張します。アジア交流ラウンジなどもそうですが、いっそのこと逃げて帰りたい気持ちでいっぱいでした(笑)。でも『エイッ!』と飛び込んだら、自分の知らなかった世界が見えてきました。自分1人では来られなかった場に連れてきてもらったからこそ、大きく成長できる場だと思います」

違う見方をすると、同映画祭はカンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭など世界を代表する映画祭に比べて歴史が浅く、規模も大きくない。東京国際映画祭の課題を尋ねると「課題はまだ把握しきれていませんが、去年は是枝裕和監督(アジア交流ラウンジに登場)の言葉を聞いて『そういう問題もあるんだな』と感じました。私は映画祭そのものというより、日本で映画作りに携わる身として、思うことはたくさんあります」

そんな橋本が肌で感じる、日本の映画界に思うこととは何なのか。

「世間で取りざたされていることそのものになってしまうかもしれませんが、特にハラスメントの問題は、私自身が女性であることも含め、この身で強く感じるトピックのひとつです。労働環境などについても、まわりのスタッフさんたちを見ていると本当に『もっとちゃんと寝てほしい……!』という場面をよく見かけます。もう少しでいいから、余白をもった環境を作れたらいいなと思いますし、世界のモノづくりの現場について話を聞くと、すごくゆとりがあってうらやましいな、とも思ったりします」

近年、ハラスメント問題を中心に有名監督の名前があがり、一部週刊誌などでその実態が報じられている。旧態依然とした日本の映画界を良い方向へ変えていくことはできるのか?

「もちろんそれが簡単に実現できるなら、とっくの昔にされていると思います。でも実現していない。変えることがなかなか難しい中で、自分たちは何ができるか考えたとき、とにかく言い続けることなのかなと。光が当たれば、必ず影ができます。それは避けようのないこと。その影にさらに光を当てようとすると、また新たな影ができます。『それなら始めから光を当てることすらやめよう』という姿勢を多く見受けることもありますが、そうなってしまうと業界そのものが停滞してしまう。それは死とイコールだと思います」

さらに橋本は「影に光を当て続けることが大事です」と力説する。「毎回誰かが幸福であれば、他の誰かがこぼれ落ちてしまいます。そのこぼれ落ちた人々の声を聞き続ける、寄り添い続けることが大事なのではないかなと思います」

●声をあげる上で一番大事なのは声のあげ方「表現方法を磨きたい」
昨今の日本映画界は、暗い側面にスポットが当たる一方、アカデミー賞・国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督・西島秀俊主演の映画『ドライブ・マイ・カー』など世界で評価される作品も少なくない。

「ご一緒したい監督はたくさんいます。『この人の新作は絶対見たい!』という機会もたくさんあります。それはすごくうれしいですし、業界が豊かである証です。最近そうやって世界で評価されている監督たちにお会いしたり、実際現場に参加させてもらうと、皆さん優しい。さっき言ったハラスメントの問題やいろいろ面にしっかり目を向けて取り組んでいる姿勢をひしひし感じます。それがすごくうれしいですし、安心して現場にいられます。昔の話を聞くと『作品は良くても本人の人柄がね』と、なかなか大変な話を耳にすることもあります。今は作り手の人格や人徳みたいなものがそのまま作品に反映されている気がしていて、それはすごく健全な印象を受けます」

橋本は、業界内のさまざまな問題、LGBTQ+、同性婚などの社会問題がクローズアップされる令和の時代に女優として第一線で活動する意義についてこう語る。

「“風の時代”と言われ、時代が数百年ぶりに大きく変わる節目が2020年くらいにあったと言われます。それが本当だとしても、本当ではなかったとしても、肌で感じていることはあります。団体や組織から個人へ、という個々を尊重する風潮は感じますし、私がこうやって自分の気持ちを押し殺さずに発信できる場所を、なんなら自分で作ることもできる。今までならバッシングの対象になったり、浮いた存在になったりしていたはずです。それができる流れがあるのはすごく救いです。もうひとつは、過渡期だからこそ、どうなっていくかわからない中で……それこそ自分が生きているうちに問題が改善されるかわからない中で、自分の結果のために頑張るのではなく、先が見えない、そして生きている間に見られないかもしれない結果のために自分の命を使えるのが醍醐味だなと思っています」

未来の人たちの明るい世界のために命を燃やす。この考えの芽生えは、小梅役で出演したNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』だと明かす。

「役所広司さんが演じた嘉納治五郎さんが、スポーツの世界を変えることに人生を捧げ、スポーツの自由度が高い世界を見る前に亡くなりました。でも世界が変わったのはまぎれもない事実です。そんな風に、自分が生きている間に変わるかどうかわからないですけど、自分の目で結果を見たいからやる、というのではなくて、もっとその先にある希望みたいなものを目的に据えながら命を使えるのはとても幸福です」

日本映画界のより明るい未来を実現すべく、橋本が思い浮かべるアクションは一体何なのか?

「まずはしっかり知識を持つこと。世界を知ること、見ることが大事です。そこがなければ土台も築けない。私自身、まだぜんぜん勉強できていません。土台がぐらぐらです。ただ、実体験をもとにした気持ちだからこそ、そこに嘘はありません。私のように若い世代ができることは、まずこうやって声をあげること。声をあげる上で一番大事なのは声のあげ方です。曲解されたり、届かなかったりすることをよく経験してきました。言葉をよく知り、言い方をちゃんと工夫する。表現方法を磨いて発信していきたいです。もし上の世代の方々が、歴史や伝統を守る姿勢とは少しずれた古い考えに執着してしまっている部分があるとすれば、そこはきちんとほどいてほしいという願いがあると同時に、こちらもそこをほどいていくために何かアプローチできることはないか。そこを探る姿勢を示し続けたいです」

業界が変化の時を迎え、先行きが不透明な令和の時代に、幸せな生き方を見出す橋本。この橋本の幸福論はどのような結果を迎えるのか。長い目で見守る必要がありそうだ。

■橋本愛
1996年1月12日生まれ、熊本県出身。2010年『Give and Go』で映画初出演初主演。同年映画『告白』で注目を集め、2013年映画『桐島、部活やめるってよ』などで数々の映画賞を受賞。同年NHK連続テレビ小説『あまちゃん』に出演し幅広い世代から認知された。近年では、NHK大河ドラマ『西郷どん』(18)、『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)、そして『青天を衝け』では主人公・渋沢栄一の妻・千代役を好演した。今年は、映画『ホリック xxxHOLiC』が公開され、主演ドラマ『家庭教師のトラコ』(日本テレビ)も放送された。現在、アニメーション映画『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』が2作同時公開中。そのほか、コラム・写真・ファッションについての連載企画を担当するなど、幅広く活躍している。

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