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分子研、無機物のハロゲンと有機物配位子を組み合わせた非金属錯体触媒を開発

2022年10月21日17時52分 / 提供:マイナビニュース


分子科学研究所(分子研)は10月20日、無機物のハロゲンと有機物の配位子を組み合わせることで、高い活性を示す非金属錯体触媒を開発し、既存の触媒よりも少ない触媒量で、有機合成反応を完結することに成功したと発表した。

同成果は、総合研究大学院大学(総研大)の大石峻也大学院生、分子研の藤波武博士研究員(研究当時)、総研大の桝井悠院生(研究当時)、分子研の鈴木敏泰博士、総研大の加藤雅之大学院生、分子研の大塚尚哉助教、同・椴山儀恵准教授らの研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「iScience」に掲載された。

分子性触媒は環境調和性に優れており、その開発は、機能性物質を生み出す有機合成において必要不可欠な研究課題だという。金属に有機配位子を組み合わせた有機金属触媒や、金属を含まず炭素・水素・酸素・窒素などの元素からなる有機触媒など、開発研究が盛んに進められている。

一方、無機物であるヨウ素や臭素は、触媒としての潜在性が認められてはいたものの、分子性触媒としてデザインして有機合成反応に応用する試みは、これまで検討されていなかったという。そこで研究チームは今回、分子性触媒の研究分野で十分に活用されていなかった「ハロゲン」を有機配位子と組み合わせることで触媒を開発することにしたとする。

具体的には、一価ハロゲンである「ハロニウムX+(I+,Br+)」に、有機物である窒素系配位子が組み合わされて、非金属錯体触媒「[N…X…N]Y」がデザインされたという。


[N…X…N]Yは、ハロニウム(一価のハロゲン原子)、有機配位子、対アニオン(陰イオン)の組み合わせに自由度を持つ。そこで、触媒の高活性化に向けて、さまざまな組み合わせの[N…X…N]Yの合成を行うことにしたとする。そして、合成された[N…X…N]Yが含窒素化合物の脱芳香環化反応に適用されたところ、既存の触媒よりも圧倒的に少ない触媒量で有機合成反応を完結するという、非常に強力な触媒活性を示すことが見出されたという。

また、種々の対照実験や分光分析、量子化学計算が行われた。その結果、ハロニウムの形成する「三中心四電子結合」(電子不足な原子を中心原子とする電子豊富な2原子への結合)が反応駆動の鍵となっていることが明らかにされた。

今回開発された触媒は、活性中心のハロニウム、有機配位子、対アニオンを容易に変更可能だと研究チームでは説明しており、この成果は新たな分子性触媒として「非金属錯体触媒」の設計指針を提案するものであり、多彩な触媒反応の実現が期待されるとしている。そのため、今後の環境調和型触媒の設計に有用な基礎的知見を与えるとともに、医薬品や機能性材料などの有用物質を迅速に供給する分子生産技術の発展に貢献する成果につながるものと考えられるとしている。

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