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『熱狂! 1/365のマニアさん』目指すべきは“オモウマい店”のマニア版か

2022年10月19日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●『マツコの知らない世界』との棲み分けは
テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第246回は、14日にスタートしたTBS系バラエティ番組『熱狂! 1/365のマニアさん』(毎週金曜20:00~ ※14日の初回は19:00~2時間SP)をピックアップする。

その番組名を見れば、どんな内容なのか分かるのではないか。「あるジャンルのマニアが熱狂する1日に密着する」というコンセプトの新番組だが、同局には似たコンセプトの『マツコの知らない世界』がある。

はたして両番組をどう棲み分けしていくのか。重要な1回目の放送から、その制作スタンスを探っていきたい。

○■「キャラか情報か」の試行錯誤

番組冒頭、初回の放送内容が「北北海道グルメに人生を捧げるマニアさんが年に一度の巨大北海道グルメフェスで狂喜乱舞」「さつまいもが好きすぎて農林水産省に入っちゃったマニアさんが年に一度の激ウマ サツマイモグルメが集まる祭典へ」「美容マニアが熱狂、年に一度の最新美容博覧会も」の3つであることが紹介された。

ただ、サブタイトルは「秋の激ウマ2大グルメSP」だけにメインは北北海道とさつまいもの2つなのだろう。「重要な初回に無難なグルメを選ぶ」という選択は、テレビマンとしては当然かもしれないが、視聴者目線ではインパクトに欠ける感が否めない。「思い切った勝負をさせてもらえない」のか、「思い切った勝負が怖い」のか。どちらにしても、彼らの悩みと課題が透けて見える。

まずは、さつまいものマニアさんからスタート。「大学4年間さつまいもの研究に没頭し、農林水産省に就職」「同省公認のYouTuberとしても活動中」という渡邊さゆりさん(28歳)が登場した。服、マスク、指輪などコーディネートのすべてがさつまいもであり、ファーストインパクトの分かりやすさは、いかにもゴールデンタイム向けのキャラだ。

渡邊さんは「『さつま芋の良さを伝えなきゃ』という使命感で生きています」「さつまいもで人類を救いたいんですよね」と熱っぽく語るが、同僚は「会うたびにさつまいもを押しつけられる」と苦笑い。この情熱とやりすぎ感を見せる演出はオーソドックスなものと言っていいだろう。

ただ、同じ一般人をフィーチャーしたドキュメントバラエティ『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日本テレビ系)のヒットを踏まえると、もっとキャラの面白さにつなげるほうが、現在の視聴者を引きつけられるのかもしれない。

渡邊さんは1万5,000人が来場するという「夏のさつまいも博2022」へ。90分間の入れ替え制というイベントの規定がある中、「絶対に食べたい10品」を掲げて会場を駆け回ったが、結局半分の5品に留まってしまった。

終了のアナウンスを聞いた渡邊さんは「何だよ!」といら立ちを見せたが、最後の入場枠に空きが出たことで、再び行列に並んで2度目の入場に成功。最後は計6時間かけて全商品をゲットして「満足度120%です」と満面の笑みを見せた。

その他でも、早口で質問して情報収集したり、愛読書のいも類振興情報誌に店主からサインをもらったりなど、マニアならではの姿を映すシーンがあったほか、ホクホク系とねっとり系によるブランド戦争や、焼き芋専用調理器具の紹介など情報番組の要素が満載。

ただ、全体のバランスを見ると、マニアさんよりグルメが主役の感が強く、この点では「『オモウマい店』のようなキャラの面白さを見せるドキュメンタリーではなく、情報要素の濃い『マツコの知らない世界』に近い」という印象を受けた。
○■「スーパーリポーター」のマニアさん

続くコーナーは「食べ歩いた数3000軒! 北北海道グルメマニアさんの1/365」で、その対象エリアは有名観光地の札幌や函館ではなく、南北は富良野から稚内、東西は紋別から留萌まで。10年間ほぼ毎朝欠かさずグルメブログをアップしている星野智哉さん(39歳)が9月17日に開催された「旭川 北の恵み食べマルシェ」を訪れるという。

星野さんは、MCの東京03・飯塚悟志が「エッ!? この人ずっとこのテンション?」と声をあげるほどのハイテンションキャラ。最初の店だけで「気づけば紋別にワープしてる」「口の中が紋別でいっぱい」「紋別ずっこいわ」などの食リポで笑いを連発した。

さらに、旭川市長から直々にあいさつされたと思ったら、同僚に「イカれポンチ」「何かに取り憑かれている」「勝手な使命感」と斬り捨てられるなど、ロケの撮れ高が止まらない。この番組は良くも悪くも“マニアさん”のキャラ次第で盛り上がりが変わるのだろう。だからこそ、制作サイドの人選と演出が鍵を握りそうだ。

星野さんは、カニ、ホタテ、和牛、コロッケ、ジンギスカン、クラフトビール、カレー、ラーメン、ウニなどを次々に食べ、「プッハーだぜ、これマジで」「(ローストビーフを手に)見てください。この色、エロ!」などの爆笑コメントを連発。その一方で、2年前に大病を患い味覚を失ったことで、「人生楽しんでいかなきゃダメだと思った」「一食一食のおいしさを大切にしたい」と食に執着する理由を語った。

最後も、「素晴らしい日々、素晴らしい人生ですね。本当に生きててよかった」と感情を込めて語ったが、驚かされたのはリポーターとしてのスキル。テンション、フレーズ選び、リアクションのバリエーションなど、そのすべてが芸能人のお手本となるようなレベルであり、番組が続いていけば再登場は間違いないだろう。

●マニアの人選は一般人か有名人か
最後のコーナーは、「美容を愛し、美に人生を捧げるマニアさんの1/365」。君島十和子(56歳)が9月26日に開催された「Diet & Beauty Fair」を訪れ、最新美容商品をチェックしつつ、コラボできる会社を探すという。

多くの視聴者が「番組が一変した」と感じたのではないか。「有名人が強いこだわりと美容メソッドを紹介していく」という構成は、まるで『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)や『ポップUP!』(フジテレビ系)などの情報番組を見ているようだった。

なぜ最後に有名人を登場させ、よくある情報番組のような内容にしてしまったのか。その理由は制作サイドの不安なのかもしれない。今後も含め、一般人のマニア中心でやっていくのか。それとも、一般人と有名人の両者をバランスよくやっていくのか。あるいは、数字が獲れなかったら有名人を増やしていくのか。

含みを持たせたスタートにしたい気持ちは分かるが、安全志向が色濃くなるほど裏番組の『ウワサのお客さま』(フジ系)との差別化が難しくなっていくだろう。締めのナレーションが「以上、美のマニアさん、君島十和子が熱狂する1日でした」だったことも、有名人をベースにした情報番組のような印象を強めていた。

今後は、「一般人のマニアさんをどれだけ面白く見せられるか」という理想に向かって突き進めるか。『マツコの知らない世界』との棲み分けという意味も含め、制作サイドにはその覚悟が問われているのかもしれない。
○■博覧会のようなイベントばかりに

その他のポイントとして目についたのは、マニアさんの見せ方、「1/365」のバリエーション、撮り方、テロップの4点。

まずマニアさんの見せ方だが、前述したように『オモウマい店』のような「キャラの面白い人=愛すべき人」という要素をもっと引き出せそうな伸びしろを感じさせた。たとえば、渡邊さんの夫や星野さんの妻子も登場したものの、出番はひと言程度で終了。家族などの身近な人々を絡めてプライベートにもしっかり触れることで、より人間的な魅力を伝えつつ笑いも増やしていけるのではないか。

次に「1/365」のバリエーションは、「結局、博覧会のようなイベントばかりにならないか」と感じた。視聴者の反響さえあれば毎年同じイベントをピックアップしても、それなりの違いは出せるし、何よりマニアさんのキャラが面白ければいいのかもしれない。ただ、それでも似た構成に偏る可能性があるだけに、やはり「面白いマニアさんをどう発掘できるか」が重要なのだろう。

撮影と編集からは、労力を惜しまずテンポを生み出す努力を感じさせられた。特に撮影の手法は、アングルと距離感、スローや静止画、テーブル置きとスプーン上げなど、かなり細かいカット割で撮影・編集。また、一般人のマニアさんは試食シーンをタレントのように長尺で流すことは厳しいため、「スタジオのゲストに試食させてコメントとビジュアルの不安を担保する」などのバランスも抜群だった。

最後にテロップだが、たとえば最初のコーナーでは画面上部に、「農林水産省で働くさつまいも命のマニアさんが1年で1番熱狂する究極の1日 8/17(水)」「1.5万人の争奪戦! 年に一度のさつまいも博」「ツウしか知らない 新さつまいもグルメまで…00:10(※カウンターが表示)」と文字がてんこ盛り。

新番組ゆえ、説明したくなるのはわかるが、2回目以降はどれだけ減らしていけるか。もし今後、「人物ドキュメントの要素を濃くしていきたい」のであれば、過剰なテロップは没入感や笑いを削ぎやすいものだけに、できるだけ避けたほうがいいのではないか。
○■次の“贔屓”は……ガチンコの期待大!『住んで良かった!街ランキングBEST100』

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、23日に放送されるテレビ東京系バラエティ特番『住んで良かった! 街ランキングBEST100』(18:30~)。

「関東エリアの本当に住んでよかった街BEST100を発表していく」というコンセプトの特番だが、ポイントは「住んでみたい人」ではなく「実際に住んだことがある人」に聞いたランキングであること。

2万6,180人に「交通便」「家賃や物価など生活コスパ」「商業や飲食店の充実度」「おしゃれさ」「環境」の6部門で、印象や憧れではないリアルな声を拾っていくという。このところテレビ朝日系の『○○総選挙』を筆頭にランキングをベースにした特番は多いが、リアリティで差をつけられるか。

長嶋一茂とイェール大助教授・成田悠輔のMCコンビも含め、何気に楽しみな要素が多い。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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