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地域の課題も解決するIIJのスマート農業システム「MITSUHA」とは?- good digital award

2022年10月21日13時11分 / 提供:マイナビニュース


デジタル庁はこのほど、「デジタルの日」にちなみ、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」に貢献している、または今後貢献し得る個人や企業・団体の取り組みを「good digital award」として表彰した。

本稿では、農業/水産/林業/食関連部門で部門優秀賞を受賞した、インターネットイニシアティブ(IIJ)のスマート農業システム「MITSUHA」を紹介する。
始まりは農林水産省の実証事業

「MITSUHA」は、水田水管理の省力化を実現する安価な水田センサーと無線通信基地局を展開するプロジェクトだ。ネットワーク関連のビジネスを主とする同社が、スマート農業システムを手掛けることになったきっかけは、農林水産省による平成28年度補正予算革新的技術開発・緊急展開事業だ。同事業の実現目標は「水管理に係るコストを2分の1程度削減すること」。

プロダクト本部長 兼 IoTビジネス事業部 副事業部長 兼 アグリ事業推進室の齋藤透氏は、「当社がこれまでネットワークビジネスを広く手掛けていたことから、農林水産省からお声がかかりました」と話す。

同事業において、同社は水田センサーの開発、LoRa基地局、インフラ提供を担当した。自動給水弁の開発とアプリの開発は富山県の笑農和、センサーの最適配置と水管理コストの測定などは、実証を行った農研機構が担当した。

新しい取り組みということで、特定の分野に強みを持つスタートアップと手を組む形で、プロジェクトが始まった。
稲作りで負担が大きい水管理をもっとラクに

農業にまつわる課題の中から、なぜ水管理が選ばれたのだろうか。齋藤氏は、「稲作農家の方は、大規模になると1人で40枚から50枚の田の水管理を行っています。朝と晩の1日2回、田んぼの水位が適切かどうかを確認する必要があります。この作業の負荷が大きいため、テクノロジーの力でもっとラクにできないかというわけです」と話す。

プロジェクトでは、静岡県磐田市と袋井市の計75ヘクタールの水田に水位・水温センサー300台と自動給水弁100台を設置、LoRaWANによる無線ネットワークを介して水位・水温などのデータを収集し、遠隔で自動給水弁の開閉を制御した。

その結果、見回りルートの効率化により、 7割から8割の水管理時間を削減することができたという。こうした実証の成果をもとに、「MITSUHA」が製品化された。

低コストでオープンなLoRaWANを採用

「MITSUHA」は、水田センサー、自動給水弁、LoRaWANゲートウェイ、センサーデータを共通化する「水管理プラットフォーム」から構成されている。IoTビジネス事業部 アグリ事業推進室長の花屋誠氏は、「MITSUHA」の特徴の一つとして、「LoRaWAN」を挙げた。

「LoRaWAN」は免許不要で使える長距離無線技術で、1キロメートルから5キロメートルの距離をカバーする。加えて、「LoRaWAN」はオープンな規格であるため、LoRaWANに対応していれば、他社が提供するセンサーも利用することできる。花屋氏によると、水田管理プラットフォームはAPIを公開しているため、他社のスマホアプリも接続可能だという。

「LoRaWAN」はコストメリットも大きい。「MITSUHA」では水田センサーからゲートウェイまでの通信費用はかからず、ゲートウェイからLoRaWANのネットワークサーバまでの通信費だけ支払えばよい。

齋藤氏は「LTEによる通信は農家の方の負担が大きいです。なぜなら、1反当たりの粗利は1万円を切ることもあります。そうした中、数多く設置するセンサーの通信を全てLTEで行うことは現実的ではありません」と話す。


農家の方の意見を取り入れ水田での利用に耐えうる機器を開発

農業メーカーではないIIJが水田センサーや自動給水弁の開発に関わるにあたっては、これまでに体験したことがない苦労があったはずだ。「MITSUHA」はバージョン4を迎えており、さまざまな改良が行われてきた。花屋氏は、水田センサーについて、次のように語る。

「水田の水は必ずしもきれいとは限りません。水田センサーは濁った泥水でも水位を測定できなくてはいけません。また、水田に設置されるため、風雨にさらされる中、365日正常に稼働することが求められます。また、電池も当初は単三電池4本が必要でしたが、省力化したため、最新製品は単三電池2本で動作します」

また、農家の方の意見を取り入れ、農薬をまくときにパイプが邪魔にならないような工夫も凝らされているとのことだ。「製品がつかいにくいと、使ってもらえませんそのため、改良を重ねています」と、花屋氏は熱く語っていた。

スマホアプリも、農家の方に必要な情報のみを届けることに重きを置き、シンプルさやみやすさにこだわっており、水位、水温が一目でわかる画面になっている。その文字も大きい。「農家の方は水回り作業の前に水位をチェックすることで、水田に足を運ぶ必要があるかどうかを判断することができます。そのため、直感的に現在の値が分かるUIが重要なのです」と、齋藤氏は話す。
農家の支援にとどまらず、地域の活性化に貢献を

そして、IIJではスマート農業システム「MITSUHA」は農家を支援するだけでなく、地域の防災に活用することも視野に入れている。例えば、「MITSUHA」を地域で共有して用水やため池の水位管理を行うことで、自治体の職員が現地まで足を運ぶことなく、台風などの大雨が降った時にいち早く対策を講じることが可能になる。災害対策は時間との戦いだ。

地域全般に関わる防災のための施策となると、その地域の住民に恩恵がもたらされることになり、公共性が出てくる。結果として、自治体として推進することが可能になる。

まさに、「good digital award」のコンセプトである「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」につながってくる。デジタルの力で、多くの人がハッピーになれるというわけだ。

齋藤氏も花屋氏も「『MITSUHA』は非常にやりがいがある仕事。地域の活性化に貢献できるという発展性もあります」と、胸を張って語る。

実のところ、IIJは「good digital award」に複数の事業を応募したのだが、「MITSUHA」のみが受賞したそうだ。やはり、農業システムという位置づけではあるが、地域の課題解決や活性化に資するポテンシャルがある点を評価されたのであろう。

齋藤氏は「後継者がおらず、人を増やすこともできないことから、離農する人が増えています。この問題を解決するのはITしかありません」と語る。実際、同氏らは、ITによって、農業の課題を解決している。あらためて、IT、デジタルの可能性を感じた取材だった。

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