2022年10月13日14時58分 / 提供:マイナビニュース
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米国商務省が10月7日に発表した新しい半導体輸出規制により、ロジックICに対するこれまでの制裁がメモリにも影響を及ぼすことになったことを受け、半導体市場動向調査会社TrendForceは、この新規制がファウンドリ業界やメモリ業界にどのように影響するのかについての分析結果を発表した。
ファウンドリ業界への影響を分析
同社によると、2020年にSMICが米商務省のエンティティリストに掲載された後、ファウンドリへの製造装置の供給について、米商務省は中国ファブに16/14nm未満の先端プロセス向け製造装置の輸出を希望する米国製造装置メーカーを規制対象としていた。
これは中国にある外資系の生産拠点への輸出でさえ対象となるものであり、結果として現在、中国にあるほとんどのファブは、28nm以上のレガシープロセスの生産能力を拡大させている。中国資本以外のウェハファウンドリとしては、TSMCのみが28nmプロセスの拡充に焦点を当てているが、先進プロセスによる生産計画は打ち出されていない。
一方の中国資本のファブは、米国以外の技術を中心とした生産ラインを開発しようとして、中国国内、およびヨーロッパや日本の製造装置メーカーと積極的に提携し、28nm以上のプロセス開発に注力してきたが、今回の規制強化により、16nmプロセス以下の微細プロセスの開発および拡大が事実上無理となる。将来的には28nm以上も規制対象になる可能性もあるという。
さらに米国政府は、NVIDIAのA100/H100やAMDのMI250などのハイエンドGPUの輸出禁止に8月末に決定。今後、HPC向けのCPUやGPU、ならびにデータセンター向けAIやスーパーコンピュータ向けAIアクセラレータなどを扱う米国の製造業者が、そうした品目を中国に輸出する際には、事前審査が必要となる。またファウンドリは、中国のファブレス企業向けにこうしたHPC関連チップを製造できなくなる可能性があるともされている。
TrendForceでは、クライアントが中国または米国のファブレスかどうかに関係なく、ほとんどのHPC関連チップは現在、TSMCの7/5nmまたは特定の12nmプロセスを使用して製造されていると認識しており、これらのほとんどが米国政府の規制対象となると見ている。
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メモリ業界への影響
米商務省の新たな規制によると、DRAMは配線のハーフピッチ18nmプロセス以下が規制対象となり、その製造に必要な装置を輸出する際には、商務省による審査とライセンスが必要になるという。
この動きは、中国のDRAM事業の持続可能な開発を制限または遅らせることになるとTrendForceでは見ている。中国のDRAMサプライヤであるCXMTは、2022年第2四半期以降、19nmプロセスから17nmプロセスへの移行に取り組んできたが、米国政府がそこを狙い撃ちした模様である。CXMTは、将来ニーズを満たすための製造装置の購入を規制開始前に進めていたようだが、量的には不十分だとみられる。そのCXMTは、SMICと協議中の合肥およびSMBC(SMIC Jingcheng)の第2期工事を含む新工場建設を続けている模様である。
この規制は無錫にあるSK HynixのDRAM生産センター C2工場にも影響を与える模様である。同工場は、世界のDRAM生産能力全体の約13%を占め、そのプロセスは1Y nm以降へと進化を続けており、先端DRAM生産に必要な設備を今後も継続的に追加するには、米商務省による承認が必要となるとされる。
TrendForceはこうした規制の動きほか、地政学的リスクを考慮すると、3大DRAMメーカー(Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technology)は、今後10年間で母国での生産能力を強化する一方、中国での生産比率を減らす可能性が高いと予測している。
一方のNANDも、特に128層以上のNAND製造に用いられる装置については、事前承認が必要となる。そのため、この動きは、中YMTCの工場アップグレードという長期計画、およびSamsungの西安工場や大連のSolidigm(旧Intel)のプロセス移行計画に影響を与えるとTrendForceは予測している。
なお、TrendForceでは、今回の米国政府による規制が、YMTCの顧客獲得の動きを制限すると見ている。現段階では、YMTCは2023年に中国外の顧客のサプライチェーンへの浸透を期待して、検証のためにSSD製品を海外顧客に積極的なサンプル出荷を行ってきたが、米国の規制が強化されるにつれて、中国外の顧客が中国企業の製品を採用することが制限されることが想定されている。