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NAIST、大腸菌などの薬剤耐性などを高精度かつ高速に調査する装置を開発

2022年10月12日18時00分 / 提供:マイナビニュース


奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)は10月10日、大腸菌などの微生物の薬剤に対する耐性や感受性について、細胞の電気的な特性を調べる「電気インピーダンス計測法」を用いて、高精度に素早く自動で測定・分析・判定できる装置として、「AI搭載型マイクロ流体デバイス」を開発したと発表した。

同成果は、NAIST 先端科学技術研究科 物質創成科学領域 生体プロセス工学研究室のヤリクン・ヤシャイラ准教授、同・細川陽一郎教授、同・大学 物質創成科学研究科 分子複合系科学研究室の上久保裕生教授、同・山崎洋一助教、同・大学 バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学研究室の末次志郎教授、豪州・マッコーリー大学のリ・ミン講師、中国科学院 深海科学技術研究所のヤン・ヤン教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は2本の論文にまとめられ、1本目は化学/バイオセンサーや化学アクチュエータなど全般を扱う学術誌「Sensors and Actuators B: Chemical」に、2本目は米国化学会が刊行するセンサに関連する分野全般を扱う学術誌「ACS Sensors」に掲載された。

病原性微生物による感染症に対する治療には、抗生物質の投与が有効であるため、対象となる微生物の感受性や耐性が、薬剤感受性試験を用いて調べられている。微生物の形態変化と薬剤応答の間には関連性があることから、電気インピーダンス計測法を用いた形態変化を調べる手法があるが、従来のシステムにはいくつかの課題があることから、その計測結果は、熟練の経験者によるデータ分析と判定が必要といされており、迅速かつ高効率に微生物の詳細情報を取得するのが困難だったという。

微生物の薬剤感受性試験をより正確・高効率に実行することは診断、創薬、治療法の開発や生命科学研究などの分野にとって重要とされることから、研究チームは今回、これまでの既存の微生物の電気インピーダンス計測手法の課題だった、データの校正方法や流路の構造について、AIを導入するなどの新たな手法も用いて解決し、薬剤耐性や感受性評価システムの高精度化および自動化を実現することにしたという。


具体的には今回のシステムではデータに影響する校正用微粒子を使わないことにしたとする。これは、大腸菌などが長い楕円形をしているのに対し、校正用微粒子は球体であり、両者の違いは無視できず、その後の判定で誤差が発生していたためだという。

また、2つの電極付きチャネルを並列したマイクロ流体デバイスを採用することによって、抗生物質処理を行わない試料と処理試料からの電気信号を隔離させ、それぞれの流路で同時に計測できるように設計を行ったとする。従来のマイクロ流体デバイスでは、校正用微粒子を流した後に測定したい微生物試料を流す構造のため、汚染の問題が生じていたが、それを回避するための設計だという。

これにより、機械学習プロセスに薬剤未処理の微生物の信号を直接かつ正確に提供し、電気的な特徴を抽出することで、高精度な判定基準をその場で作れるようになったとする。

同時に、もう1つのチャネルで異なる薬剤の濃度条件で処理された同種の微生物に対する、薬剤感受性高いものと耐性があるものを区別する計測・分析を行うことで、先に作成された判定基準に基づいてAIが判定することによりリアルタイム分析が実現され、判定結果を表示することが可能になったとする。

実際に今回のシステムの有効性を証明することを目的に、大腸菌を用いた薬剤(抗生物質)感受性・耐性を調べる実験が行われた。大腸菌はヒトの胃腸管にコロニーとして生存しており、ヒトと共存して特定の炭水化物の分解に重要な役割を果たしているが、ベロトキシンなどの毒素を産生する病原性大腸菌もあり、抗生物質などの薬剤を投薬して治療する場合があることが知られている。

今回は同じペニシリン濃度で、異なる時間(0時間、2時間、4時間、6時間)で処理した数万個の大腸菌の測定と分析・判定が行われ、システムの有効性が証明されたとする。結果として、処理時間が長いほど、球状に変化した大腸菌が増加し、6時間の経過で30.7%の大腸菌が応答していたという。

研究チームでは、今回の研究により、既存の電気インピーダンス計測システムの課題がなくなるとともに、データの後処理や経験者による判定などの作業が一切不要になり、薬剤耐性・感受性評価システムの智能化、高効率化と自動化が実現されたと説明するほか、今回のシステムはサイズに限界のある光を用いる方式では得られないナノメートルからマイクロメートルサイズの微小な試料に適用可能なため、細菌以外にも各種がん細胞、ウイルスなどに対応ができるという特徴があり、診断、創薬、疾病治療の研究に加えて、生命科学研究の効率向上も期待できるとしている。

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