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佐野正弘のケータイ業界情報局 第88回 AI技術を活用した「Pixel」の独自機能、Androidに反映されない理由

2022年10月13日11時30分 / 提供:マイナビニュース

グーグルが2022年10月6日に発表した最新スマートフォン「Pixel 7」シリーズ。新しいプロセッサ「Tensor G2」を搭載し、AI技術を活用して高解像度の30倍ズームや写真のボケを補正する機能など、カメラを中心に新たな機能を多数搭載しているのが特徴です。ですが、そうした機能の多くはグーグルのOS「Android」に必ずしも反映されているわけではありません。なぜでしょうか。
AI技術による機能強化がなされた「Pixel 7」シリーズ

すでにデザインなど多くの要素が公開されていたこともあって、正式発表前から注目を集めてきたグーグルの新スマートフォン「Pixel 7」シリーズ。そのPixel 7シリーズが、2022年10月6日に正式発表され、翌10月7日には日本のメディア向けにも発表会が実施されました。

その発表会には、グーグルのCEOであるスンダー・ピチャイ氏が登場するというサプライズもあって一層注目を集めたPixel 7シリーズですが、その大きなポイントとなるのはやはり、AI技術を用いた新機能でしょう。

Pixelシリーズは、グーグルが強みを持つAI技術をフル活用して従来にない機能を実現したことで注目を集めてきましたが、前モデルとなる「Pixel 6」シリーズからはグーグル独自のプロセッサ「Tensor」を搭載。写真に写り込んだ人物などを消す「消しゴムマジック」や、日本語の文字起こしができるボイスレコーダーなどが関心を呼びました。

そしてPixel 7シリーズは、TensorのAI関連処理を一層強化した新しいプロセッサ「Tensor G2」を搭載し、基本性能を強化しただけでなく、より強力になったAI処理を生かした新機能を搭載しているのがポイントとなっています。

その1つが「ボケ補正」で、ピントがずれたりブレたりした写真をAI技術で自動補正するというもの。Pixel 7シリーズで撮影した写真だけでなく、過去に撮影した写真にも適用できるので、活用範囲はかなり広いといえるでしょう。

そしてもう1つは、デジタルズームした写真をきれいに撮影する超解像ズーム機能です。この機能自体は、従来のPixelシリーズにも搭載されているのですが、Pixel 7シリーズではそれがより強化されているようで、「Pixel 7」では最大8倍、光学5倍ズーム相当の望遠カメラが搭載されている上位モデルの「Pixel 7 Pro」では最大30倍ズームで撮影しても被写体をきれいに写し出せるようになっています。

このほかにも、Tensor G2の高い性能とAI技術を生かしたいくつかの機能強化がなされており、ボイスレコーダーアプリでは新たに複数の話者を認識して文字起こしができる機能を搭載。生体認証に関しても、フロントカメラのみで安全性の高い顔認証システムを実現するにいたっています。
ハード・ソフト一体でのエコシステム構築を目指すグーグル

Pixel 7シリーズはPixel 6シリーズのデザインを踏襲するなど、ハード面で劇的な変化があったわけではありませんが、独自技術で他社との明確な差異化を図ることに成功していることは確かでしょう。ただ一方で気になるのが、こうしたAI技術を活用したPixel独自機能が、必ずしもグーグルが開発しているスマートフォン向けOSの「Android」に反映されるわけではないことです。

例えば、Pixelシリーズの特徴の1つでもあるボイスレコーダーアプリはAndroidに存在しませんし、Android標準のカメラアプリもPixelシリーズほど機能が豊富なわけではありません。Pixelシリーズで得た成果をAndroidに反映するのではなく、あくまでPixelシリーズ独自の機能とし続けることは気になる人も多いのではないでしょうか。

その理由はどこにあるのかといえば、やはりグーグルがOSだけでなくハードでもシェアを獲得し、米アップルのように独自のエコシステムを構築したいと考えているからこそでしょう。Pixel 7シリーズと同時に発表されたスマートウォッチの「Pixel Watch」や、すでに販売を開始している完全ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds」、そして2023年の発売が予定されているタブレットの「Pixel Tablet」など、周辺デバイスを急拡大していることがグーグルの狙いを象徴しているといえます。

グーグルにとってAndroidと、それを搭載するパートナーが重要であることに変わりはありませんが、市場飽和とともに主要なメーカーの数は減少しています。それに加えて、韓国サムスン電子が米マイクロソフトと提携して「Windows」「Microsoft 365」などとの連携を強めるなど、“上客”であるはずの高いシェアを持つ大手メーカーもAndroidだけに頼らない独自路線を強化するようになっています。

そうしたことから、スマートフォンOSのビジネスだけでグーグルの事業を拡大するには限界も出てきているといえ、Androidを提供していることを生かして自身でソフト・ハードが一体となったエコシステムを強化し、継続的なビジネスの拡大につなげたいというのがグーグルの狙いといえるでしょう。そのためには、ハードの魅力を高める必要があることから、Pixelシリーズの機能とAndroid標準機能との明確な差異化を図るようになったといえます。

もちろん、スマートフォンメーカーとしてのグーグルの存在感はまだ大きいとはいえず、現在は投資フェーズにあることも確かでしょう。急速な円安が進むなかにあって、Pixel 7シリーズやPixel Watchの値段が思いのほか高くなかったことが話題となっていましたが、それも日本でエコシステムを機能させるのに必要な顧客基盤を構築するための先行投資、といえるのではないでしょうか。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら

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