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アルコールから医農薬品原料のケトンを合成するマンガン触媒、東工大が開発

2022年10月11日16時16分 / 提供:マイナビニュース


東京工業大学(東工大)は10月7日、バイオマスに多く含まれるアルコールから、医農薬品の原料として多用される「ケトン」を合成できる「マンガン触媒」の開発に成功したと発表した。

同成果は、東工大 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の原亨和教授、同・喜多祐介助教、同・鎌田慶吾准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する触媒作用に関する全般を扱う学際的な学術誌「ACS Catalysis」に掲載された。

医薬品や農薬、サプリメントの原料となるピロール類やキノリン類はパラジウム、ルテニウムなどの貴金属を触媒として製造されるため、製造コストが高くなってしまっている。また貴金属は埋蔵量が少ないだけでなく、近年の触媒構造の複雑さから触媒材料のリサイクルも容易ではないため、代替の触媒材料の研究開発が進められており、マンガンや鉄などのユビキタスで安価な金属が貴金属代替材料として注目されている。

原教授らはこれまで、バイオマスに含まれるアルコールの変換反応において、酸化マグネシウム(MgO)が顕著な促進効果を示すことを報告していた。そこで研究チームは今回、このMgOの促進効果をマンガン触媒に適用することで、アルコールの炭素-酸素結合を炭素-炭素結合に変換可能なことを確かめることにしたという。

その結果、実際に変換可能なことを解明し、同反応により、医薬品や合成染料の合成中間体として利用されるピロール類やキノリン類の合成を達成することに成功したとする。同マンガン触媒は、既存のマンガン触媒や単純なマンガン酸化物だけでなく、同じ手法で調製した貴金属触媒よりも高い活性を得ることができたという。

また、反応機構の検討が行われたところ、ヒドリド種(負の電荷を持った水素イオン)を経由した経路で反応が進行することが判明。同反応機構中では、MgOからマンガンへの電子供与によりマンガンとヒドリドの間の結合が伸長し、ヒドリド種の反応性を向上させることが確認されたという。この特異な反応経路を経ることで、一般的なマンガン触媒では変換することが困難な、脂肪族アルコールの変換も可能になっているとする。

不均一系マンガン触媒についてはこれまで、4価のマンガンが触媒活性種として形成することが報告されていたが、今回の研究では、高活性を示す触媒では2価が主として存在し、酸化数が大きくなると触媒性能が低下したとする。


高酸化数のマンガンは一般に酸化触媒として利用されることから、不活性ガス雰囲気と酸素雰囲気でそれぞれの触媒の性能が評価されたところ、マンガンの酸化数が触媒性能に影響を与えることが見出され、酸化数の低いマンガンはヒドリドを形成する反応経路で進行し、酸化数の高いマンガンはアルコールの酸化を経る反応経路で進行することが確認されたとする。

研究チームによると、マンガンの酸化数により触媒性能が大きく変化する触媒系は珍しいという。また、マンガン上に結合したたヒドリド種の反応性についての詳細な検討が行われたところ、MgOからマンガン酸化物への電子供与が反応促進に寄与していることが確認できたとする。

今回の成果について研究チームでは、自然界に豊富に存在するマンガンやマグネシウム、アルミニウムを触媒として用いることで、入手容易な有機化合物から有用な有機化合物を少工程数かつ低コストで合成するという究極的な目標達成につながるものだとしており、将来的には、環境負荷の高い金属触媒に頼る化学合成から脱却し、有用な有機化合物を提供することで、人類の持続的発展に貢献することが期待されるとしている。

なお、今回の研究で開発されたMgO共担持マンガン触媒は、ヒドリドを経由した変換反応を促進することから、分子状水素やヒドロシランなどのヒドリド源を用いた変換反応にも適用できる可能性が高く、高付加価値な化成品合成に利用できることが考えられるとしており、今後、金属の酸化数が触媒性能に与える大きな影響を、さまざまな非貴金属触媒において系統的に調べることで、特異的な触媒作用の開拓に貢献することが期待されるともしている。

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