2022年10月11日11時43分 / 提供:マイナビニュース
メールの返信が早く、相手から喜ばれた経験はありませんか。対応が早いことで相手から感謝されたり、仕事が早いと評価されたり。こうした経験があるからこそ、人は常に早い返信を心がけようとします。
営業など顧客対応にあたる組織では、「お客さまからの問い合わせには素早く対応しよう」といったスローガンが掲げられることもよくあります。いわゆる「即レス」の奨励です。ところが、いざ実践しようとしてもなかなか組織に浸透しないという悩みが。スタッフからは「他の業務もあるのに、即レスなんて無理」の声。結果、「即レス」の取り組みに挫折してしまう組織も珍しくありません。早く返信した方が良いと分かっていながら、なぜこの取り組みはうまくいかないのでしょうか。
○「即レス」の定義を考える
一般的に、相手からの連絡に即座に返信することを「即レス」と呼びます。SNSやチャットなど身近なコミュニケーションツールの増加が、「即レス」への期待をより高めるきっかけとなったように感じます。メールも、仕事を進める上で手軽なコミュニケーションツールの一つ。しかしながら、一般的な「即レス」をそのままビジネスメールに求めるのは考えものです。
デスク上に置かれたスマホに表示されるSNSやチャットの新着通知。一度気になり始めると、業務に集中できなくなることってありますよね。それと同じで、絶えずメールの受信を気にしていたのでは、他の業務に集中することは極めて困難。業務の効率を著しく落としたり、質の低下を招いたりしかねません。そもそもメールは緊急の用件を伝えるには不向きなツールと言えます。そこで、ビシネスメールでは「即レス」の定義を次のように転換してみましょう。「メールが届いたら即座に返信」ではなく「メールを読んだら即座に返信」。定義を変えてみると、挫折する可能性が大幅に減少。失敗していた「即レス」の取り組みが、効果的な取り組みへと変貌を遂げることになります。
○メールを確認するだけの行為はリスクを伴う
「メールを読んだら即座に返信」を実践し続けるポイントはいたってシンプル。「メールは、返信できるときにだけ確認をする」。これを徹底することです。返信できないタイミング、つまり他の業務に集中すべき状況下では、むしろメールを確認しない方がベター。メールを既読にし、対応を後回しにすれば、それだけで返信を忘れてしまうリスクは高まります。忘れることなく頭に残っていれば、それが気になり目の前の業務の進行に支障をきたすことも。メールに対応する時間と他の業務にあたる時間をしっかりと分断することが、業務の効率化や質の向上をもたらすのです。
○手段が変わっても目的は変わらない
相手の心情に意識を向けることも大切です。時折、メールの送信後に確認の電話をしてきた相手に対して、「メールの件ですよね」などと応じている光景を見かけることもあります。対面でのやりとりを想像してみてください。話を聞いているはずの相手がまるで無反応だったとしたら、不安や不信感を覚えますよね。同様に、メールを確認したはずの相手から何の返信も得られなかったとすれば、自分が送ったメールを無視された、あるいは後回しにされたと受け止められても決して不思議ではありません。
メールは対面や電話と違い、相手と時間や空間を共有する必要のないツール。好きな時間に送ることができるし、読む時間も選びません。しかし、手段は違えども「相手とコミュニケーションを取る」という目的に変わりはありません。相手とのコミュニケーションを成立させることができない状況ならば、メールを確認すべきではないのです。
○組織に応じた定義や基準を
もちろん、返信できるタイミングを成り行きに任せてはうまくいきません。ビジネスメールの「即レス」の取り組みを成功させる鍵は、一日の中でメールを確認する時間をあらかじめ決めておくことです。例えば8時間労働であれば、【朝・昼・夕方】のように一日に3回メールを確認する時間を確保するだけでも、およそ4時間以内の返信が実現できます。メールを確認すべき適切なスパンは業種や職種によっても異なりますので、環境に応じてそれぞれ設定すると良いでしょう。
「即レス」の取り組みを成功させるには、その定義を明確にすること、基準となる時間軸を設定することが肝といえます。それがメンバー間の共通認識を生み、成功へと導きます。自社の組織にとって必要な真の「即レス」とは何か。これを機に見つめ直してみてはいかがでしょうか。
井上賢治 一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。 1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を生かし、印刷の新会社立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、移籍した会社では東京支社長、営業本部長を歴任。30名の部下を統括するかたわら、ウェブサイトを活用した印刷サービスの運営を行う。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を生かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。 この著者の記事一覧はこちら
日本ビジネスメール協会 日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、メールに関する書籍を中心に34冊出版(内3冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,500回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信している。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行い、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールやビジネス文章、ビジネスマナーなどの集合研修(講師派遣)や講演(公開講座)を会場とオンラインで実施中。 日本ビジネスメール協会サイト この著者の記事一覧はこちら