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フジ、深夜のトライアル枠倍増で「次なるヒット番組を多面的に生み出す」 外部クリエイター発掘の狙いも

2022年10月09日07時00分 / 提供:マイナビニュース

●SNSで話題『ここにタイトルを入力』が社内の刺激に
テレビ各局で近年、深夜ゾーンを中心にクリエイター育成やコンテンツ開発を目的としたトライアル枠を強化させている。この10月改編でテレビ東京は、24時台の企画開発枠としては約3年ぶりとなる『ドラスティックマンデー』を月曜深夜に新設。日本テレビは、次世代の制作者の育成に主眼を置いた『フルスイング』を金曜深夜に配置した。

そうした中で、最も大胆な動きを見せたのがフジテレビ。従来の『月曜PLUS!』と『火曜NEXT!』(『水曜NEXT!』から枠移動)の2枠に加え、『火曜ACTION!』『水曜RISE!』を新設して倍増させた。

この狙いは何か。編成部企画担当の竹内誠氏と、深夜担当チーフの春名剛生氏という、ともに番組制作出身の2人に話を聞いた――。

○■半年分に130以上の企画提案

フジテレビにおける近年の深夜のトライアル枠は、2020年10月にスタートした『水曜NEXT!』が1つの契機となった。「フジテレビらしい」「置きに行かない」「新しい笑いを追求」を掲げて前・後編構成を基本とし、3回目に放送された『トークィーンズ』はGP帯での特番を経て、今年4月から木曜23時台でレギュラー化。ほかにも、『日本一めんどくせぇ料理店』(GP帯の特番では『サンドの日本一めんどくさ~い料理店』に改題)、『かまいまち』、『バチくるオードリー』、『ボーっと過ごした人のへぇ~ノート』といった番組が、上の時間帯で特番化されている。

また、当時入社2年目の原田和実ディレクターが手がけた『ここにタイトルを入力』は、“収録済みのひな壇と、リアルタイムのMCの掛け合い”、“番組放送中に視聴者の意見を反映”というカオスな内容でSNSを中心に反響が集まり、社内クリエイターの刺激に。企画募集を行うと、半年分の対象に130以上の提出があったという。

こうした流れもあり、今年4月には『月曜PLUS!』を新設し、『ここにタイトルを入力』を全6回のシーズン放送。さらに、「次なるヒット番組を生む確率をより上げていく、そして多面的に生み出すべく動き出しました」(春名氏)と、今回の10月改編に至った。
○■社内/外部クリエイターを対象とした裏目的

それぞれの枠の狙いを見ていくと、『水曜NEXT!』は、「次代を担うネクストクリエイターたちが、どんどん自分を磨きながら、新たな企画を世に送り出していく」(春名氏)という方針。今回の改編で『火曜NEXT!』(毎週火曜24:55~)に移行し、9月27日から人気YouTuber・コムドットの初冠バラエティ番組『コムドットって何?』(全6回)がスタートした。その後は、従来のような前・後編のラインナップを編成する予定だ。

『月曜PLUS!』(毎週月曜24:25~)は、「既存の番組に何かプラス・オンできるような新しいアイデアやバズを載せられるようなものを選んで編成する」(春名氏)という枠で、男女6人が恋愛マンガで起こりそうな様々な出来事を体験し、漫画を執筆していく新感覚バラエティ『恋愛トキワ荘』(全13回)が、9月5日からスタートした。

この2枠について、竹内氏は「『火曜NEXT!』は社内クリエイターの育成も裏目的にあって、番組の頭にプロデューサーと演出の名前を大きく入れています。一方の、『月曜PLUS!』は、外部の優秀なクリエイターの皆さんにもフジテレビで立っていただきたいという思いも、大きいです」と明かす。

また、ドラマの開発枠として、『火曜ACTION!』(毎週火曜24:25~)を新設。「バラエティは3枠ありますが、ドラマはこの枠しかないので、『火曜NEXT!』的な社内クリエイター育成の意味合いもあります」(春名氏)といい、第1弾として『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』(10月11日スタート ※初回のみ25:25~、全8話)、第2弾は『ブラック/クロウズ ~roppongi underground~』(12月13・20日、全2話)を放送する。
○■とにかく機会を増やすことが大事

そして、バラエティの『水曜RISE!』(毎週水曜24:25~)は、RISE=上昇するの意味の通り、「より明確な意志を持って次のGP帯のヒット番組を狙えるような企画を置きます。ある程度の話数を放送することによって、じっくり見ていく。そうすると制作者も何回か収録していくうちに変化をつけられて、実際にGP帯に上がったときのためにいろんなことを試していけるという戦略を持っています」(春名氏)。

第1弾は、誰も調べたことがないせまい歴史をプレゼンするバカリズムMC『私のバカせまい史』(10月12日スタート ※初回のみ25:15~、全6回)。第2弾は、世間で過小評価されている“もっと評価されるべき”ものを有名人がプレゼンする劇団ひとりMC『#もっと評価されるべき!審議会』(11月23日スタート、全6回)が放送される。

竹内氏は「1回や2回の単発番組で結果を出すのは、難しいところがありますが、6回というレギュラー運用をしていくことで生まれるものがあると思うんです。それはヒットコーナーの芽だったり、もしくは人気者であったり。そういう要素が出てくると、GP帯に行ったときに、スタートダッシュを切りやすいという意味合いがあります」と狙いを語った。

土曜昼帯にも、『土曜RISE!』(毎週土曜13:30~)を新設するが、「基本的には同じと思っていただいていいです。個人的には、昼のほうが浅めのGP帯、深夜のほうが遅めのGP帯を狙うという意識もありますが、『水曜RISE!』で『これは19時台のほうが向いてるな』と思ったらその編成でいく可能性もあると思います」(竹内氏)という位置づけ。

春名氏は「このように戦略を練りながら編成していきますが、正直言うと、結果がどうなるかというのは、実際に放送してみないと分からないことが多いんです。僕らがこうなってほしいと考えていたのとは全然違う角度から話題になることもあると思うので、今回の改編で枠を増やしてとにかく機会を増やすことが実は大事で、こちらとしてもできるだけフレキシブルな姿勢でいるつもりです」とした。

●企画書に一点でも光るところがあれば残す
こうして枠を設置し、次は何を放送するかという作業になるが、企画の選定はどのような意識で行っているのか。

竹内氏は「企画書に一点でも何か光るところがあったら、残すようにしています。企画書は全体として不完全かもしれないけど、ここは良い、しかもこのクリエイターだったら面白くしそうだなというところは、経験や勘を働かせて選んでいます」と説明。また、「GP帯を狙う番組を増やしたいというのはありますが、深夜として面白いものも捨ててはいないです。いろんな個性があるほうがいいですからね」と語る。ちなみに、『ここにタイトルを入力』の企画書は、「僕はその頃、原田のことは顔も知らなかったんですけど、やりたい事が明確で、構成もしっかり見えている感じだったので、これはいいな! と思い切って立たせました」とのことだ。

そして企画を走らせた上で、次のステージに上げる判断の指標は、「視聴率とひと言で言っても、個人もあるしコア(13~49歳男女)もあるし、今はTVerやFODがあるのでその回転数も指標の1つになるし、どれくらいバズったのかというのは明確には難しいですが、それも1つの指標。あとは、テレビをずっとやってきた僕らが見て、面白い・面白くないと感じることも1つの指標ですし、その中で明確にこれが良ければ必ずヒットするっていう方程式を編み出した人は誰もいないから、試行錯誤ですね。さらに、例えば『このクイズ番組はすごく面白いけど、今は全局クイズ番組がいっぱいあるな…』というタイミングの難しさもあるので、それを総合的に見て、判断していくしかないというのが、現実だと思います」(春名氏)と、まさに編成の腕の見せどころとなっている。

竹内氏は「昔、『東京マスメディア会議』っていう番組をやったとき、当時制作の部長だった港(浩一、現・社長)さんに『最初のCMまで見ようと思ったら、最後まで見ちゃったよ!』って言ってもらい、編成に『面白いから』と口添えしてくれて、5回やらせてもらったんですよ。だから我々も、純粋に『面白い』と思ったらチャンスをあげたいと思います」と、経験から述べた。
○■編成は“いい滑走路”を作ることに注力

自身も制作者として、様々な深夜番組を手がけてきた2人。竹内氏は、その時間帯の魅力を「のびのび自由にできるところが一番です」といい、春名氏は具体的に「GP帯は、自分の意思に反していたとしても、数字(=視聴率)が取れるんだったら、どこにCMを置くのか、ゲストを誰にするのかというところで1分1秒単位の細かな作業をしますが、深夜だとより自分のやりたいことや、美しいと思う流れができるというのがあると思います」と語る。

それだけに、竹内氏は「我々編成が、制作の内容に口を出すのはよくないと思うんです。もちろん、聞かれたことには答えますが、やっぱり企画が選ばれたら、その企画者がゼロイチで作ることが大事だと思います」という姿勢を強調。

春名氏も「やっぱり番組は作り手の気持ちで作ることが一番良いので、編成としては、いかに“いい滑走路”を作ることができるか。『なんだ!?あの飛行機』とか『面白そうな飛行機飛んでるな!』と思ってもらえるものを1つでも多く送り出したいです」と意欲を示した。

●かつては深夜黄金時代も…「昔を目指してもダメ」
フジテレビの深夜番組と言えば、80年代後半から「JOCX-TV2」などと銘打ち、『やっぱり猫が好き』『夢で逢えたら』『カノッサの屈辱』『カルトQ』など、バラエティに富んだラインナップで深夜黄金時代を迎えた。この再興という意識について聞くと、竹内氏は「個人的には、昔を目指してもダメだと思います。これだけ深夜に枠ができたので、今の時代に合ったものが生まれないと」との考えを披露。

春名氏も同調した上で、「話題になる番組がいっぱい出るという意味では目指すところだと思いますが、時代があまりにも違うと思うんです。当時視聴者だった自分は、夜中にこっそり物音を立てずにリビングにたどり着いて、いかに小さな音で楽しめるかみたいなことをやってましたが、僕の高校生の息子はスマホというものがある以上、わざわざリビングまで忍び込むのは対価に見合わないわけです。その中で何をやったら面白がってもらえるかを考えていかなければ」と語る。

一方で当時は、三谷幸喜、小山薫堂、飯田譲治など、クリエイターの発掘という点でも大きな役割を果たしたが、その部分は今回も強く意識。

「この業界は同じ人間で回っていきがちなので、外のクリエイターの方にフジテレビでヒットを当ててもらいたいという思いは、すごくあります。脚本家もそうですし、ディレクターもそうですし、僕ら自身、外の方に学ぶことが非常に多いですから。ずっとパソコンでコソコソ調べているよりも、人にいっぱい会って、面白い人と『一緒に番組をやりませんか?』となっていくことが、次のヒット番組が生まれるポイントじゃないかなと思います」(竹内氏)

○■企画を出すということにおいて、ルールはない

10月改編でトライアル枠増強を発信したことで、竹内氏は「僕の古巣のバラエティ制作センターの人たちからは、みんなどんどん企画を出すぞ! というモードになっていると聞きますし、社内だけじゃなく外の方からも、『ちょっとフジテレビに企画出したいな』となってもらえたらいいなと思います」と期待。

春名氏は「企画を出すということにおいては、ルールはないと思いますので、どこからどんな形でご提案頂いてもいいんです。ぜひ、竹内と春名までお願いします!」と、広く募集をアピールしている。

●竹内誠
1971年生まれ、兵庫県出身。神戸大学法学部卒業後、96年に毎日放送入社。05年にフジテレビジョンに入社し、『IPPONグランプリ』『ワイドナショー』『FNS27時間テレビ』『バカリズムのそこスルーする?』『嵐ツボ』『お笑い脱出ゲーム』などで演出を担当し、21年に編成部に異動して企画担当を務める。

●春名剛生
1976年生まれ、東京都出身。上智大学文学部卒業後、99年にフジテレビジョン入社。『SMAP×SMAP』『笑っていいとも!』『おじゃMAP!』『痛快TV スカッとジャパン』『さんタク』などを担当し、17年に編成部に異動。『突然ですが占ってもいいですか?』の企画を担当し、深夜担当のチーフを務める。

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