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東北大、神経に柔らかく巻き付いて密着固定を維持できる神経刺激ゲル電極を開発

2022年10月07日15時28分 / 提供:マイナビニュース


東北大学は10月6日、水分を含む高分子のハイドロゲルを基材としたオール有機物かつ、神経に柔らかく巻き付いて密着固定を維持できる神経刺激電極(カフ型電極)を開発したことを発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科 ファインメカニクス専攻の照月大悟助教、同・大学院 医学系研究科 神経外科学分野の大沢伸一郎助教、同・大学院 工学研究科 ファインメカニクス専攻の西澤松彦教授(同大学 高等研究機構 新領域創成部兼任)、同・大学病院臨床研究推進センターらの共同研究チームによるもの。詳細は、材料・生体材料と工学・生物医学およびナノサイエンス・ナノテクノロジーを扱う学際的な学術誌「Advanced Healthcare Materials」に掲載された。

人体への埋め込み型デバイスは、「生体親和性」が重要とされている。しかし、脳などの柔らかい組織の弾性を表すヤング率が数10kPaのところ、現在の埋め込み型デバイスの場合、白金などの金属タイプはGPaレンジで、シリコーンゴム基材タイプでもMPaレンジと適しておらず、構成材料の変更による、根本的な生体親和性の改善が求められている。また、金属の磁性により、MRIなどの医療撮像が制限されるといった課題も抱えているという。

研究チームはこれまでの研究により、炭素繊維と水分を含む高分子のハイドロゲルを基材とするオール有機物のシート状電極を開発したことを報告済みなほか、2022年9月には、てんかん焦点の診断に用いる頭蓋内電極として、薬事承認へ向けた医師主導治験をスタートさせている。脳と同等に柔軟なハイドロゲルが脳表面の凹凸に密着するため、高精度の脳波計測が可能になっているという。

これらを踏まえた今回の研究では、これまでのハイドロゲル電極開発で蓄積された技術を活かし、デリケートな神経束に対して安全に密着維持を可能とする、巻き付く機能を持ったカフ型電極の開発に挑むことにしたという。

開発のポイントは、ハイドロゲル基材に付与された自然に巻き付く性質と、ゲルの変形を邪魔しない伸縮性を持った導電性ポリウレタンの適用だという。伸縮性の導電性ポリウレタン(PEDOT-PU)は、ポリウレタン薄膜の内孔に導電性高分子PEDOTを析出させることで独自に開発された。これは、伸縮性(~150%)、導電性(<20Ω)、高容量(~30mF/cm2)を兼ね備えた有機物導電材料だという。


カフ型電極は、PEDOT-PU電極を2枚のPVAハイドロゲルフィルムで挟み込んで一体化させる形で実現。挟み込む際に、下側のフィルムを引き伸ばしておくことで、接着後に管状に変形させるようにしたという。管の内径はフィルムの厚みと引き延ばしの強度によって1~6mmの範囲でコントロールできたとする。

実際にカフ型電極の巻付きによる固定力の評価が行われたところ、直径2mmの棒に対して「横滑り(ズレ)」と「剥がし」のどちらにおいても電極の自重を十分に超える固定力が観測されたとする。一方で、ゲルの巻付きによって発生する圧迫圧力を自作の棒状センサで計測すると、神経に傷害が生じ得る1.3kPaよりも十分に小さい200Pa程度であることが確認されたともしているほか、有機物のみで構成されているため、MRI撮像時にもアーティファクト(ノイズ)が発生しないことも確認されたともする。

さらにブタによる動物実験により、迷走神経に対する密着固定の維持と刺激有効性の検証からは、ブタの迷走神経に取り付けたゲル製カフ電極による刺激(10mA、0.5ms幅、30Hz)で生じた徐脈(心拍数の低下)の観測に成功し、迷走神経刺激が適切に行えていることが示されたという。加えて、サーモカメラによる観察も行われ、電極周辺に有意な発熱が生じていないことも確認された。

,A@)PEDOT-PU/PVAカフ型電極の作製の模式図|

なお、研究チームでは、実用化に向けて、長期留置による電極性能(固定力、刺激性能)の劣化を最小に留める電極形状のデザイン、ゲル材料の改質、癒着防止剤などの徐放機能の搭載などを予定しているという。また、迷走神経刺激に限定せず、ほかの末梢神経(感覚神経、運動神経)や「動く」筋組織への刺激など、ゲル製電極の特徴が活きる応用への拡充も進めていくとしている。

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