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東大など、「トポロジカル欠陥」の動きを3次元で観察することに成功

2022年10月06日21時05分 / 提供:マイナビニュース


東京大学(東大)と科学技術振興機構(JST)は10月5日、静止した欠陥への蛍光色素の集積現象を運動観察に応用できることを見出し、「トポロジカル欠陥」の動きを3次元で観察することに成功したと発表した。

同成果は、東大大学院 理学系研究科の図司陽平大学院生、同・竹内一将准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

「ネマチック液晶」は細長い分子で構成され、分子の向きを互いに揃える配向秩序を持つことが知られているが、系全体で必ず分子の向きが揃うわけではなく、配向の整合しない特殊な領域が現れることがあり、これがトポロジカル欠陥と呼ばれている。

2次元の場合のトポロジカル欠陥は、同欠陥の周囲で配向が1/2回転(180度回転)しており、回転方向に応じて「+1/2欠陥」、「-1/2欠陥」と呼ばれる。同欠陥同士は、液晶弾性を通じて相互作用し運動する。

また3次元の場合には、ひも状のトポロジカル欠陥の「線欠陥」がよく見られる。同欠陥の断面では、2次元欠陥の場合と同様に、配向が180度回転しているが、回転軸はどちらを向いていても問題ない。同欠陥は変形を伴って運動し、接してつなぎ替わったり(再結合)、ループ状になってそのまま縮んで消えてしまったりもする。同欠陥の性質や運動は、欠陥の持つ特性を応用する観点からも盛んに研究され、液晶研究における一大トピックとなっているという。

ちなみに現在の技術では、欠陥そのものではなく配向の3次元分布を観測する手法が用いられているという。原理的には配向から線欠陥の位置を特定することは可能だが、実際には欠陥周囲のイメージングにはさまざまな困難が伴い、欠陥位置を3次元的に特定することは容易ではないためだという。

そこで研究チームは今回、静止した欠陥への蛍光色素の集積現象を運動観察に応用し、蛍光色素をトポロジカル欠陥のラベルとして利用することで、その3次元運動を共焦点顕微鏡で直接観測することを試みることにしたという。


その結果、液晶に高電圧をかけて乱れた流れを起こすことで生成したトポロジカル欠陥が、電圧を切った後に動き回りながら次第に消えていく様子の観測に成功したほか、再結合やループ縮小・消滅といった線欠陥に特有の現象を捉えることにも成功したとする。

また、平行に近づくタイプの再結合に着目して、より詳細な解析が実施されたところ、2次元欠陥の運動と共通する性質と異なる性質の両方が明らかにされたという。

具体的には、3次元線欠陥が再結合の際にどのように接近するのかが調べられたところ、再結合時刻は欠陥同士の距離は√(t0-t)に比例することが判明。これは2次元の±1/2欠陥同士が近づき、ぶつかって消える対消滅の際に成り立つのと同様の法則であり、3次元線欠陥でも同じ法則が成立していたとする。

さらに、再結合に向かって接近してくる2本の線欠陥それぞれが、どのように運動しているのかが調べられたところ、2次元欠陥の対消滅の場合には、流れ場の効果により、+1/2欠陥が-1/2欠陥よりも速く動くという非対称なふるまいが起きるとされていたが、今回解析された線欠陥の運動は一見、2次元と同じように非対称だったが、注目している欠陥が周辺の領域から受ける影響を取り除いたところ、実際には2次元の場合とは異なり対称に運動していることが確認されたとする。

研究チームでは、このような2次元と3次元の対称性の違いは、トポロジーとエネルギーの観点から議論できるとしている。2次元で±1/2欠陥はトポロジーとして区別できるのに対し、3次元では区別できない理由として、3次元では配向の回転軸がどの方向でも向ける点を挙げているほか、+1/2欠陥と-1/2欠陥の中間的な構造も取ることができ、+1/2欠陥から-1/2欠陥へと連続的に変形できるので、±1/2欠陥とその中間構造はすべてトポロジカルに等価となるとする。

この中間構造の中には、近づく際に対称な運動をする構造(ねじれ欠陥)がある。今回用いられた液晶をはじめとして、ほとんどの液晶でこの構造はほかの構造よりもエネルギーが低い。つまり、トポロジーによって3次元でのみ許される構造が、エネルギー安定性のため、確かに実現すると考察することができ、実験的にも確認されたこととなった。トポロジカル欠陥の概念は液晶に限られたものではないが、同様の議論は液晶以外の同欠陥でも成り立つと考えられ、この「自発的対称性の回復」メカニズムには、液晶を超えた一般性があることが期待されると研究チームでは説明している。

なお、トポロジカル欠陥は液晶だけにとどまらず、物理の広い領域に現れ、重要な役割を果たしているという。近年では生物系でも、細長い細胞や微生物などの集団的ふるまいが、液晶の理論やトポロジカル欠陥の概念で理解されるようになってきた。今回得られたトポロジカル欠陥の挙動に関する成果は、同欠陥が関わる広い学問領域に貢献する可能性があるとしている。

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