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近未来テクノロジー見聞録 第206回 大成建設がカーボンリサイクルコンクリートを自社以外の施設に初めて適用

2022年10月06日08時03分 / 提供:マイナビニュース

2022年9月14日、大成建設はCO2排出量収支がマイナスとなるカーボンリサイクルコンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を、自社施設以外に初めて適用したというプレスリリースを発表した。これまで大成建設は、このカーボンリサイクルコンクリートを自社技術センター内に新設する実験施設内部の壁部材などに適用してきた。では、このカーボンリサイクルコンクリートとは、どのようなものなのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

カーボンリサイクルコンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」とは?

大成建設がT-eConcrete/Carbon-Recycleの開発成功を発表したのは、2021年2月16日までさかのぼる。T-eConcrete/Carbon-Recycleは、その前身である環境配慮コンクリート「T-eConcrete」の課題を補うかたちで開発された。その代表的な課題としては、以下の3つが挙げられる。

まず、回収したCO2を直接コンクリートに吸収させると、コンクリートが中和され、鉄筋の防錆機能を喪失してしまう。また、CO2の吸収を容易にするため、コンクリート内に微細な空隙を増やす構造にした場合、コンクリート強度が低下してしまう。さらに、回収したCO2を用いて製造した炭酸カルシウムを大量にコンクリートに添加すると、粘り気の増加や硬化遅延により施工性が著しく低下し、硬化後の強度が低下してしまうという。

そこで大成建設は、これらの課題を解決すべく、これまでのコンクリート技術とノウハウを駆使して、回収したCO2から製造されるカーボンリサイクル材料である炭酸カルシウムを、製鋼副産物である高炉スラグ主体の結合材により固めることで、コンクリート内部にCO2を固定するカーボンリサイクル・コンクリートの開発に成功したのだ。

T-eConcrete/Carbon-Recycleは、いくつかの特徴を有している。それは、コンクリート内部にCO2の固定が可能なこと・製造過程におけるCO2収支のマイナスを実現していること(下図)・コンクリート内部の鉄筋腐食を防ぎ、構造物の耐久性を維持できること・通常設備で製造でき、普通コンクリートと同程度の強度、施工性を発揮できることなどだ。

いかがだったろうか。大成建設は、自社で開発したカーボンリサイクルコンクリートの外部適用に成功した。今後、さまざまな顧客にこのT-eConcrete/Carbon-Recycleの適用を増やし、カーボンリサイクルに貢献していくことだろう。

齊田興哉 さいだともや 2004年東北大学大学院工学研究科を修了、工学博士。同年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、2機の人工衛星プロジェクトチームに配属。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。 現在は、コンサルティングと情報発信に注力。書籍に「宇宙ビジネス第三の波」、「図解入門業界研究 最新宇宙ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」など。テレビ、新聞、Webサイト、セミナー・講演も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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