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東大、電子の運動状態を量子レベルで観測・制御するハイブリッド手法を発明

2022年10月04日13時55分 / 提供:マイナビニュース


東京大学(東大)は9月30日、電磁場により真空中に浮遊する電子の運動状態を、電子と超伝導量子回路および電子と真空中に捕獲された原子イオンという、2つのハイブリッド量子系の利用によりそれぞれで量子レベルで観測・制御する手法を発明したことを発表した。

同成果は、東大大学院 総合文化研究科の長田有登助教、同・谷口建人大学院生、同・重藤真人大学院生、同・野口篤史准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物理とその関連分野を扱う学際的なオープンアクセスジャーナル「Physical Review Research」に掲載された。

量子コンピュータや情報理論的安全性を付与できる量子通信、それらを組み合わせた量子ネットワークなどの応用に向けて、超伝導量子回路や真空中に捕獲された原子イオンをはじめとする、さまざまな物理系を利用した量子系の個別制御が試みられている。そのような物理系に要求される主要な性質としては、主に以下の2点が挙げられる。

量子状態を保っていられる時間であるコヒーレンス時間が長いこと
そのコヒーレンス時間より十分短い時間で量子操作・量子測定などの制御が可能であること

この2点を兼ね備えた新たな物理系として、電磁場により真空中に浮遊させた電子の利用が近年脚光を浴びている。これまで、浮遊電子のスピン状態を量子ビットとした量子操作の提案および電子を実際に捕獲したという実験の報告があるが、高精度な量子操作のために重要な電子の運動状態の冷却と観測を量子レベルで行うのは浮遊電子のみでは困難だったという。

そこで研究チームは今回、すでに技術がある程度確立された超伝導量子回路および真空中に捕獲された原子イオンに対し、それぞれ浮遊電子を組み合わせ、ハイブリッド量子系を開発することで上述した課題の解決を図ることにしたという。


浮遊電子は、捕獲ポテンシャル中でマイクロ波領域の周波数で振動するため、マイクロ波領域の極微のアンテナのように見なすことが可能だという。

今回の研究では、同じくマイクロ波領域で動作する超伝導量子回路が、電子という極微のアンテナとエネルギーを効率的にやり取りできることを用いて、電子のアンテナの状態、すなわち運動状態の量子レベルでの観測と制御が可能であることを見出すことに成功したという。

また、原子イオンと電子はクーロン力により互いに引き合っていることから、これは電子の運動が原子イオンの運動にも影響を強く及ぼすことを意味しているとする。

通常、原子イオンの振動周波数は電子のものと大きく異なるため、エネルギーのやり取りを効率的に行うことはできないが、クーロン力に起因する電子・イオン間の非線形な相互作用により、効率的なエネルギーのやり取りが可能になるとのことで、これにより原子イオンを用いた場合にも、電子の運動状態を量子レベルにおいて冷却・制御が可能であることが示されたことになったとする。

なお、今回の研究成果によって、新たな量子ビットの候補である浮遊電子は、先行研究で示されたような高精度な量子操作の可能性のみならず、残る課題だった運動状態の量子レベルでの冷却と制御および観測の手法についても解決の道筋が示されたことになることから、研究チームでは、今後の浮遊電子系の量子技術応用、特にエラーに耐性のある量子コンピュータの実現に向けた研究開発が進むことが期待されるとしている。

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