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【東芝】量子暗号通信で世界最長600km以上の通信距離を実証

2021年06月09日11時33分 / 提供:Digital PR Platform

都市間・国家間を長距離量子暗号通信で結び、量子インターネット構築に貢献

■概要
 当社は、量子暗号通信の通信距離を拡大するデュアルバンド安定化技術を開発し、世界最長となる(*1)600km以上の通信距離の実証に成功しました。量子暗号通信は、量子コンピュータを用いても、理論上絶対に破られない暗号通信技術で、金融、医療、個人情報といった秘匿性の高いデータ通信における利用への期待が高まっています。現在の製品の通信距離は100-200kmで、都市内のネットワークへの適用に限られていますが、今般開発した技術を用いることにより、都市間・国家間を安全な暗号通信で接続することが可能となります(図1)。また、本技術は量子情報通信の長距離化への応用が可能で、量子コンピュータが長距離量子情報通信リンクで接続された量子インターネットの構築に必要な基礎技術です。
本成果の詳細は、6月7日に発行された、国際学術誌Nature Photonicsに掲載されています(*2)。なお、本成果の一部はHorizon 2020プロジェクトOpenQKDを通じてEUの支援を受けています。

開発の背景
 量子コンピュータの実用化に向けてその研究開発が急速に進展しています。現在広く利用されている暗号通信における暗号鍵は、将来、量子コンピュータによって解読される可能性が指摘されています。量子暗号通信では、通信中の暗号鍵の盗聴を検出できることが物理法則によって保障されています。盗聴を検出した際はその暗号鍵を無効にし、新たな暗号鍵を発行することで、盗聴されることのない安全な通信を実現します。量子暗号通信は、量子コンピュータ時代における脅威に備えた新たな安全対策として期待されており、その関連市場は、2020年度に全世界で約20億米ドル(約2100億円)、2035年度には約200億米ドル(約2.1兆円)と見込まれています(*3)。
しかし、量子暗号通信に利用する光ファイバは温度変化や振動などの環境変動により伸び縮みし、微弱な光信号の位相によって表現される量子ビットに影響を与え(位相変動)、損失の大きい長距離通信では正しく情報が伝わらないという課題があります。これにより、現在製品化されている量子暗号鍵配信システムの通信距離は100-200km程度に限られており、実験室での最新の実証でも500km程度となっています。都市間、国家間といった長距離の安全な通信経路の構築には、環境変動の影響を受けにくい安定した通信技術が必要です。

■本技術の特徴
 そこで当社は、東芝欧州社ケンブリッジ研究所において、環境変動の影響を補正することができるデュアルバンド安定化技術を開発しました。本技術では、位相変動を補正するための参照信号(*4)として、2つの異なる波長の光を用います。第1の参照信号に、連続波を用いることで位相の高速な変動を連続的に補正し、第2の参照信号は、量子ビットと同じ波長にすることでその波長で起こる微小な変動を補正し、精度の高い位相調整を実現します。本技術により、数百キロの伝送でも、1550nmの光信号の波長に対し、常に数%の範囲内で位相変動を高精度に抑制することができるため、通信距離を延ばすことが可能となります。
本技術の量子暗号鍵配信への応用は世界で初めてとなります。さらに、本技術を、当社が2018年に発表した当社独自の量子暗号鍵配信プロトコルであるTwin Field QKD(*5)に適用することで、世界最長となる600kmを超える量子暗号通信を実証しました(図2、図3参照、*6)。その際の鍵配信速度は1 bit/秒でした。これまでの到達限界である距離500kmにおける鍵配信速度は0.1bit/秒であったのに比べ、本実証では約400倍の40 bit/秒を確認しました。
 本成果は、長年研究開発を行い、多数の実証により実用性を高めてきた当社の量子情報技術に関する最新の成果です。昨年、英国のBT Group plcと東芝欧州社ケンブリッジ研究所は、英国初となる量子暗号通信ネットワークの実証を通して産業分野への展開を行いました(*7)。昨年のこの実証では、当社の多重化送信技術により、データと量子暗号鍵を同じ光ファイバで送信し、鍵配送のための高価な専用光ファイバインフラが不要となりました。今回の成果は、この多重化送信技術と同様に、実用的で安全な世界規模の量子暗号通信ネットワーク構築に向けた重要な技術マイルストーンです。

[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/1398/48196/700_319_2021060818304060bf38c080c86.png

図1:開発した技術の適用によって実現される2都市間での量子暗号通信のイメージ図

[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/1398/48196/500_324_2021060818241260bf373c466e9.png

図2:暗号鍵配信性能

[画像3]https://user.pr-automation.jp/simg/1398/48196/500_310_2021060818241560bf373fe2797.png

図3:ケンブリッジ研究所における実証試験の様子

■今後の展望
 当社グループは、本成果の5年以内の実用化を目指します。また、本成果を含む技術をベースに、量子情報技術サービスのためのプラットフォームや世界規模のセキュア通信の構築と、クラウドベースの量子コンピューティングや分散量子センシングの実現を目指し、当社グループの量子ビジネスの早期拡大を図ります。

*1: 2020年6月当社調べ
*2: 国際学術誌であるNature Photonicsには、最高品質のフォトニクス技術関連の研究論文が掲載される。Nature誌は、フォトニクスを含む幅広い分野の論文が掲載されるが、Nature Photonicsはフォトニクス関連技術専門の学術誌。本成果についての研究論文:https://www.nature.com/articles/s41566-021-00811-0
*3: 調査会社他の短・中期市場予測を基に当社で独自に長期予測。
https://www.global.toshiba/jp/news/corporate/2020/10/pr1901.html
*4: 位相変動を抑制するために、暗号鍵送信用光信号とは別に光ファイバに流す既知の信号(あらかじめ準備しておく信号)
*5: https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/18/1805-01.html
*6: 超低損失ファイバでの実験結果。コーニング社より提供されたSMF-28® ULLファイバーを使用した。
*7: https://www.toshiba.co.jp/qkd/case3.htm

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