旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

宮崎駿が『紅の豚』に忍ばせた“ちょっぴりオトナ”な要素を解説「ビーチに敷いたバスタオル」「家の隣に立てたテント」の真相とは?

2018年11月12日11時30分 / 提供:ニコニコニュース

 毎週日曜日、夜8時から生放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。11月4日の放送では、宮崎駿監督作品である『紅の豚』の解説が行われました。

 この中で、パーソナリティの岡田斗司夫氏は、冒頭10分で展開される「主人公ポルコ・ロッソと空賊マンマユート団との戦い」を細かく解説し、本作の企画当初にあったコンセプトを説明した上で「このシーンの裏には“中年オヤジ的なギャグ要素”がある」と指摘しました。
岡田斗司夫氏。
─あわせて読みたい─

本当は子供に見せられない『もののけ姫』。無防備なサンとアシタカに何があったのか問われた宮崎駿「わざわざ描かなくてもわかりきってる!」

「飛ばねぇ豚はただの豚だ」粘土で『紅の豚』のジオラマを作ってみた。カッコイイとは、こういうことさ
『紅の豚』は疲れた中年オヤジを癒やすために作られた
岡田:
 この作品は、もともとJALの国際線の中で上映される短編映画として作られる予定だったので、当初は「疲れて脳みそが豆腐になったオジサンを楽しませる」といった目的で作られていました。なので、この冒頭10分は「そういったオジサンの好きそうな、ちょっとエッチなコントを見るんだ」という目線で見ると、かなりわかりやすくなると思います。

 宮崎駿が狙った“オジサンギャグ”というのが、実はこの中にはかなり入っているんですけど、普通に見ているだけではよくわからないんですよね。
『紅の豚』
画像はAmazon『紅の豚 [DVD]』より
 実はこのアニメ、こういう言い方をすると、ちょっと誤解を受けちゃうかもしれないんですけども、スケベなんですよ。漢字の「助平」じゃなくて、カタカナの「スケベ」。まあ、“東スポ”みたいな夕刊紙の風俗欄のような、中年のオジサンが電車で読んでるエロ記事があるじゃないですか。ああいうノリが詰まっている。どちらかというと「中年オヤジとは、こういうことさ」というアニメなんですよね。

 実はこの『紅の豚』の面白さの本質というのは、そこなんですけど。そういった中年オヤジのちょっとスケベな感じが入ってるということが、あまり女子供にはバレていないんですよね。今夜は、それについて「こっちの見方した方が絶対に面白い!」といった、楽しみ尽くすための見方について話そうと思います。
不可解なことの多いポルコの秘密基地
岡田:
 まず、最初にタイプライターの音と共に字幕がカチャカチャと出てくると、次のシーンではいきなりポルコの秘密基地が映ります。

 注目すべきポイントは、ポルコの赤い飛行艇の右にある、小さいボートなんです。この小さいボートについて、僕も最初は「飛行艇が飛ばせない時や、エンジンの調子が悪い時に、街まで出かける用のボートなんだな」と思ってました。だけど、これは、ちょっと違う感じなんです。

 さて、次は音楽が掛かり始めて、浜辺で寝ているポルコが映されます。ここでは、ポルコが寝そべっている椅子の隣になぜか敷いてあるバスタオルに注目してもらいたいと思います。さらには、椅子の脇にはさりげなくバケツが置かれ、シャンパンが突っ込んであります。

 ほんの少しだけ見えるボトルの首の先が大きくなっているので、これはシャンパンであることがわかるんですけど。ポルコは、シャンパンをバケツの中で冷やしているんです。まあ、もう氷も溶けちゃってるんでしょうけど。

 ポルコは、ここで「CINEMA(シネマ)」とうい雑誌を顔に載せて寝ています。ただ、このシーンで皆さんに注目してもらいたいのはポルコの首のネクタイなんですね。ここでのポルコはちゃんとネクタイをしてるんですよ。

 これについても、最初は「ポルコ・ロッソというのは、僕らが思ってるより仕事熱心なのかな?」って思ったんですよ。なぜかというと「マンマユート? 安い仕事はやらないぜ」なんて答えながら、足で机を近くに引きずり寄せて、ラジオを切るんです。もう、この仕事をやる気満々だからです。

 おまけに、キッチリ航空服を着込んで、シャツにネクタイまで締めて、手袋までしてフル装備なんです。じゃあ、普段からこんな戦闘服を着て、用意バッチリで昼寝しているような男なのかというと、そうじゃないんですよね。

 後に出てくるポルコの普段着というのは、タンクトップにショートパンツというだらしない格好なんですよね(笑)。

 つまり、この冒頭の蔵でのシーンのポルコは、もうすぐ出撃要請の電話が掛かってくることがわかっていたんですね。それを知っていたから、戦闘服を着て、ネクタイを締めて、手袋までして、そして、なぜか砂浜にバスタオルを敷いた上で、シャンパンまで用意して、電話が掛かってくるのを待っていたんです。

 しかし、ポルコの予想よりずいぶんと電話が掛かってるのが遅かったから、いつの間にか寝てしまった。というのが、このシーンの真相なんだと思います。

ポルコが目論んでいた女子大生との秘密基地デート
岡田:
 電話の主が「ベニスからのチャーター船が狙われている。鉱山銀行の給料を積んでるんだ!」と言うと、ポルコは「それだけか?」と聞き返します、すると、相手は言いにくそうに「実はバカンスツアーの女学校の生徒達が乗ってるんだ」と言うんです。

 それを聞いたポルコは、すごく嬉しそうに「そいつはチト高くつくぜ」と、ニヤッと笑うんですね。もう、実に嬉しそう。「その知らせを待っていた!」という感じなんです。

 なぜポルコは、すでに出撃用の戦闘服を着込んでいて、シャンパンまで用意して、ネクタイと手袋までしていたのかというと、僕が思うに「ベニスからのチャーター船に、鉱山会社の給料である大量の金貨が載ってることと、女子大生が乗っているという情報を知っていたから」なんですよ。

 そして、「バカンスツアーの女学生」と言われたもんだから、たぶんポルコは反射的に“女子大生”と考えたんですね。

 「となると、これは襲われるに違いない! それだけの金貨を一度に運んで、おまけに女の子が乗っているとなると、マンマユート団あたりが見逃すはずがない!」と。「じゃあ、電話が掛かって来たら、すぐに出撃できるように、フル装備で待ってよう!」と。

 「そんでもって、マンマユート団なんかを目の前ですぐに倒したりしちゃったら、誘拐された女子大生も素敵なオジサマが助けてくれたというふうにビックリするだろう!」と。

 「そしたら、助けた女子大生を連れてきて。さあ、ここがオジサマの隠れ家だよ。2人きりで乾杯しようなんて、シャンパンを開けよう」と。そんなことを考えてたんじゃないかなと。

 なので、必要のないバスタオルが砂浜に敷いてあるんですよ。だって、自分はデッキチェアにもたれているんだから、ここにバスタオルを敷く意味なんて何もないはずなんですよ。バケツにシャンパンを突っ込んで冷やしていたのもそのためなんです。

 これらは全て、空賊を退治した時に女子大生と一緒に乾杯するために用意したもので、敷いているバスタオルは「オジサマ、ここの海ってすっごく綺麗! この秘密基地ってステキね。アタシ、ちょっと裸になって日光浴したいわ。あら偶然、こんないいところにバスタオルが……」という感じを演出するために、あらかじめ用意していたものなんですよね。

 これを考えると、最初のシーンも、もう違って見えてきちゃうんですよ。砂浜に無造作に用意された小さなボートも、これは「この島、星空も最高なんだよ?」とかなんとか言って、助けた女子大生と一緒に乗るために、わざわざこの位置に停めていたということなんですよ。そうやって気分を盛り上げて、どうにか夜まで引っ張るためのものなんです。

 おまけに、後ろを見ると、この島には、ドアと窓がある家がちゃんとあるんですよ。これ、実は「ポルコの秘密基地」って家があるんですよ。じゃあ、なんでこんなドアも窓もある家がちゃんとあるのに、テントを張っているのか? これはもうこんな男所帯の汚い家なんて、女子大生には見せたくないからです。そのために、ロマンチックなテントと灯油ランプをわざわざ用意してたんですよね。

 「なのに、後にそれをフィオ相手に使うハメになるとは、トホホ……」というのが、全体の流れなんですね。
原作『飛行艇時代』に込められた容赦ないスケベさ
岡田:
 宮崎駿が『紅の豚』を作る前に模型雑誌に描いていた原作漫画として『飛行艇時代』というのがあるんですけど。その中で、マンマユート団が拐うのは、もうパッと見からわかる通り、クラリスみたいな美少女なんですよね。

 おまけに、マンマユート団に拐われた美少女をポルコが助けに行くと、途中で観光用の飛行船とすれ違うんですよ。ポルコが出撃すると“偶然”、遊覧用の飛行線が通りかかって、その中は、これまた“偶然”若い女の子だらけなんです。

 すると「豚さんよ! カワイイ!」という歓声が飛ぶんですね。しかし、ポルコは、そんな黄色い声を上げる女の子達に、クールに「こんなところを飛んでると、団体で拐われちゃうよ?」なんて答えて、投げキッスまでするんです。それに対して、女の子たちはまた「カッコいい!」と叫ぶ。この時のポルコの返事が「ウヒョヒョヒョヒョ」なんですよ(笑)。

 これ、志村けんのコントみたいなものを想像してくれるといいと思うんですよね。最初に「当初、宮崎駿が作りたかったのは“脳細胞が豆腐になったオジサン達を慰めるためのアニメ”だ」と言っていたんですけど、本当は、そういうことをやろうとしてたんですよ。

 だけど、『紅の豚』として作っている内に、どんどん話が深刻になってきて、あらゆる人物に奥行きを与えてしまった結果、こういった単純な話が出来なくなっちゃったんですね。ところが、Aパートと言われるこの冒頭の10分、15分には、まだ、そういったニオイがプンプン残ってるんですよ(笑)。だから、そこが見どころだと僕は思っているんですけど。

 この原作漫画には、ここから先もまだ続きます。かくして美少女をマンマユートの魔の手から救ったポルコ・ロッソ! しかし、助けた美少女は海に飛び込んでビショ濡れだった。

 そこでポルコは「これはいかん! 私にはエッチな気持ちは1ミリもないが、濡れた服のまま飛ぶわけにはいかん。……仕方がない。服を脱ぎなさい」と言って、彼女の服を脱がすわけですね。「愛機サボイア号の羽の上で濡れた服を干せば、アドリア海の陽光で、すぐに乾きます。毛布の下はスッポンポンでも、私はエンジンの修理をしてるので、大丈夫。見てませんよ」って。

 で、「服は乾きましたか? さあ、ご両親の元へお送りしましょう」ということなんですけど。「困ったな、この飛行艇は1人乗り……そうだ! このポルコめの膝の上に乗りなさい。1人乗りだから仕方ないでしょう。さあさあ」と。さっきまでスッポンポンだった美少女を“仕方なく”膝の上に乗せたポルコ・ロッソは、夕焼けのアドリア海を飛ぶのであった。

 というのが、この漫画のラストシーンなんですよ。すごいの描いてますよね(笑)。
カッコいい男の裏には童貞中学生男子がいる
岡田:
 だから、映画版の『紅の豚』の「この後、ポルコが実際に助けたのは、女学生は女学生でも“幼稚園児”たちでした」という展開というのは、当てが外れて「ハラヒレホレハレ」となる、志村けんのコントみたいなものなんですよ。

 これが、映画版『紅の豚』の冒頭10分の構成なんです。なんか、中年オジサンが笑って楽しめる上に、「お色気もあるのか?」と思ったら、実は当てが外れたと。だから、『こち亀』なんですね。「金に汚い両さんが失敗する」という話みたいに、スケベな妄想ばっかりしている中年ポルコが、当てが外れてガッカリするギャグアニメとして、わりと最初の10分は作ってあるんですよ。

 しかし、両さんがいつも失敗する感じと同じように、ポルコというのは、徹底的にスケベ親父として描かれているんですけど、実際に女の子が目の前に来ると手を出せないんですよね。だから、フィオが隠れ家に付いて来た時も、いきなり服を脱いで「私、泳ぐね」と言った瞬間に、「やめろ」とも言えず、「おいおい……」と言うだけで固まってしまう(笑)。

 この「フィオがいきなり服を脱いで泳ぐ」というシーンは、実は、前半10分に出てくる隠れ家のシーンと呼応関係にあるというか、伏線と回収に当たるんですよね。『紅の豚』という作品の楽しみ方の1つには「カッコいいとは、こういうことだ」というキャッチコピー通り、もちろんカッコいい男を見るところにもあると思うんですけど。

 そのカッコいい男の裏には童貞中学生がいると思って見ると“中年男としての『紅の豚』”が見られるんです。

▼記事化の箇所は6:20からご視聴できます▼

#255表 岡田斗司夫ゼミ「疲れた中年男のためのマンガ映画『紅の豚』を楽しみ尽くす!!冒頭10分を徹底解説!」(4.63)

─あわせて読みたい─

本当は子供に見せられない『もののけ姫』。無防備なサンとアシタカに何があったのか問われた宮崎駿「わざわざ描かなくてもわかりきってる!」

「飛ばねぇ豚はただの豚だ」粘土で『紅の豚』のジオラマを作ってみた。カッコイイとは、こういうことさ

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連してるっぽい地図

あなたにおすすめの記事

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

マピオンニュース ページ上部へ戻る