2024年07月18日06時00分 / 提供:マイナビニュース
●看板企画「学校かくれんぼ」でスタートダッシュ図る
35回目を迎えるフジテレビ系大型バラエティ特番『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』(20日18:30~21日21:54)。4年ぶりに復活した昨年は「世代交代」を掲げて千鳥、かまいたち、ダイアンが総合司会を務めたが、今年はさらに若い『新しいカギ』の“カギメンバー”霜降り明星、チョコレートプラネット、ハナコの3組が、高校生たちと一緒に作り上げる企画が次々に展開される。
総合演出も田中良樹氏と杉野幹典氏というフジテレビ入社11年目の若い同期コンビが担当するが、そんな2人を中心とした制作陣は、どんな27時間を作ろうとしているのか。チーフプロデューサーの矢崎裕明氏(※崎は「立つ崎」)とともに、たっぷりと話を聞いた――。(第1回/全3回)
○学園祭のような仕事を一生したい人の集合体
3人が今年の『27時間テレビ』を担当することが決まったのは、昨年の生放送から1か月経った8月のこと。社長室に呼び出され、「入社11年目で行ったことのないフロアだったので」(田中氏)、「確実に何かすごいことを言い渡されるだろうなという雰囲気」(杉野氏)の中で、港浩一社長から「来年は『新しいカギ』をベースに行くぞ」と大役を命じられた。
テーマは、「日本一たのしい学園祭!」。矢崎氏は「自分の入社面接の時から言っているのですが、テレビ局でバラエティを作る人は、学園祭みたいな仕事を一生していきたい人の集合体だと思っていて、フジテレビは特にそういう人間が集まっていると入社してからも感じていたんです。その中で、『新しいカギ』という番組でコントやロケをやっていくうちに、『学校かくれんぼ』という世の中に向けて非常にキャッチーな企画を作ることができ、さらにいろいろな学生ものの企画をどんどん生み出していた流れで、今回のテーマは非常にシンプルに決まりました」と明かす。
総合演出を2人体制にしたのは、「効率化を含めて、各コーナーの精度を上げる意味でも、やはり1人より2人いたほうがいいと思って決めました。意見が合わない時にどうするかとか、どちらがジャッジするのかといった、2人体制によるデメリットもあると思いますが、青春ものに強い田中と、お笑いものに強い杉野という得意分野がそれぞれあるので、バランスよくタイムテーブルが作れると絶対的な信頼を寄せてこの2人にしました」(矢崎氏)という狙いから。
田中氏は「杉野とはものの考え方が真逆な気がしていて、勝手にそれぞれ補っている感じがしています。同期入社はたぶん同じような人を採らないから、うまいこと補い合っているのかなと思います」といい、杉野氏は「最後に決めなきゃいけないことがあるときは番組ごとに担当を分けていますが、そこに向かっていく過程は二人三脚でやっている感じですね」と、同期ならではのあうんの呼吸で取り組めているようだ。
○目黒蓮は「ものすごくバラエティ的センスがある」
最初のメイン企画は、『新しいカギ』の看板コーナー「学校かくれんぼ」(※)の豪華版「超!学校かくれんぼ」。過去最多約2,600人の生徒が通う横浜高校(神奈川県)を舞台に、カギメンバーとともに目黒蓮(Snow Man)とやす子が隠れるが、杉野氏は「カギメンバーと割と近しい世代のゲストと一緒に『27時間テレビ』を作っていこうという思いもあります」と、ブッキングの狙いを語る。
(※)…長田庄平(チョコレートプラネット)率いる「新日本かくれんぼ協会」のメンバーが、テレビの力を駆使して実際の学校内に隠れ、生徒全員が制限時間内に探し出すという大規模なロケ企画
目黒に対して、田中氏は「ものすごくバラエティ的センスがあるなという印象でした」とのこと。「学校かくれんぼ」の助っ人ゲストはアイドルが多いが、「皆さん総じてバラエティで鍛えられてる印象があります。隠れ場所の作戦会議をするシーンは、カギメンバーたちが笑いを作るところなんですが、そこに負けずとも劣らず入ってきますね」と驚かされるという。
すでに収録済みで、27時間のスタートダッシュを切る1日目のゴールデンタイムという時間帯に、生放送でなくVTR中心の企画を置くことになるが、昨年もVTRをスタジオで見守る「サビだけカラオケ タッグモード大会」がスタートで結果を出したこともあり、今年はやはり『新しいカギ』の看板企画で満を持して勝負に出る。
●「新しいカギだあー!!」に生徒たちが大盛り上がり
土曜8時というフジテレビの伝統枠を任された中で、『新しいカギ』をコア視聴率(13~49歳男女)の高い人気番組に押し上げた「学校かくれんぼ」。回数を重ねるごとに、生徒たちの歓声が大きくなっていくのを感じているそうで、田中氏は「カギメンバーの名前を呼びながら捜す子がどんどん増えているんですよ。ハナコの秋山(寛貴)さんを“アッキー”って呼ぶのはうちの番組だけだと思うんですけど(笑)、それがうれしいですね」と手応えを語る。
杉野氏も「“新しいカギだあー!!”って叫んだ瞬間に、どの企画でも生徒さんたちが“ギャー!!”って盛り上がってくれる瞬間がすごくうれしいですね。もちろん、演者さんがそれぞれ名乗っても盛り上がるのですが、番組名でこれだけ喜んでくれると、まだまだテレビを見てくれる人たちがいるんだと感じられますし、それをきっかけに生徒さんたちが熱狂できる企画は何だろうと常に意識しながら作っています」と、喜びとともに気を引き締める。
そうして、生徒たちと交流するたびに番組が浸透しているのを感じながら『27時間テレビ』の本番に臨めるのは、「すごく心強いです」(田中氏)と、大きな力になっているようだ。
○既存番組コラボも「日本一たのしい学園祭!」踏襲
そのほかの既存番組とのコラボレーションでも、「日本一たのしい学園祭!」というテーマを踏襲。杉野氏は「『逃走中』は普段、大きなショッピングモールなどを舞台にやっている番組ですが、今回は学校を舞台にして高校生の前で逃げたり、『ハモネプ』もいつもは大学生などが参加するところを高校生の大会を開いてくれたりして、伝統のあるフジテレビの番組が、『新しいカギ』のやりたい方向性とうまく掛け合わさって、いい融合感のあるタイムテーブルが組めたかなと思います」と手応えを語る。
田中氏は、個人的に『ハモネプ』に思い入れがあるそうで、「いろんなテレビ局の入社面接で、好きな番組を聞かれて(『ハモネプ』発祥の番組である)『力の限りゴーゴゴー!!』と答えていたんです。小学生の時も真似事で友達とチームを作ってアカペラをやったりしているので、どの企画も自分の持つものを全部出すぞという気持ちで作って入るのですが、『ハモネプ』は見る側としてものすごく影響を受けたので、今回ハマってくれて良かったなと思います」と喜びを振り返った。
●粗品の“お笑い脳”全開の深夜企画
タイムテーブルの中で異彩を放っているのが、「粗品ゲーム~日本一不条理なお笑いバトル~」。毎年恒例の深夜のお笑い企画だが、ゲームマスターである霜降り明星・粗品の進行のもと、次世代を担うネクストブレイク芸人たちが、チーム対抗でし烈なバトルを繰り広げる。その内容は、粗品から出される無理難題や“粗品力”を試すオリジナルゲームに挑戦し、「粗品の思考にどれだけ近づけるのか?」を競うという。
『新しいカギ』のレギュラー放送でも、これまで粗品発の企画はなかったが、杉野氏は「テレビで粗品さんの“お笑い脳”が全開になる番組をあまり見てこなかったなと思って提案させてもらいました。ゲームの内容は、粗品さんと半年くらいかけて、めちゃくちゃ会議しました(笑)。企画とキャスティングとのバランスというところで、非常にこだわっていると思います」と、粗品がこの企画に懸ける熱量を明かす。
『R-1ぐらんぷり2019』の優勝特番で、ロケの様子が何度もループする番組を放送して深夜の視聴者をザワつかせた粗品だけに、彼の頭の中を番組に落とし込むのは、スタッフ側も骨の折れる仕事になったのではないかと想像する。それに対し、田中氏は「粗品さんはメディアの特性や分析がものすごく優れていると思っていて、YouTubeとサブチャンネル、X(Twitter)、TikTokと、それぞれのメディアでどういうものをやっていけばいいのかをすごく考えているんです。なので、今回の企画も“『27時間テレビ』の深夜企画にはどのようなパッケージがいいか”ということに対して、僕ら制作側と同じ方向を見ていて、粗品さんの脳みその中を具現化するのが難しいという感覚はなかったですね」とのことだ。
粗品は、生涯収支が億単位になるほど競馬で大勝負に出ることで知られている。『27時間テレビ』では毎年、日曜昼に競馬中継があるだけに、ここでも粗品企画が行われることを期待したいところだ。
○「ラブメイト10」「ビートたけし中継」見送りの理由
深夜企画といえば、恒例の「明石家さんまのラブメイト10」が見送りとなり、5年ぶりに『さんまのお笑い向上委員会』が放送される。これは、高校生たちと絡んでいくカギメンバーとコーナーのマッチングを考慮した判断で、「『27時間テレビ』において、さんまさんとカギメンバーで何が一番ハマりがいいかと考えた時に、やはり『向上委員会』だったということに尽きます」(杉野氏)とラインナップを組んだ。
それに伴い、火薬田ドンでおなじみのビートたけし中継も、今年は見送り。矢崎氏は「やはり、たけしさんの中継は『ラブメイト』との掛け合わせの妙だったりするので、火薬田ドンを見て育った世代としては個人的に残念ではあるのですが、今年に関しては『向上委員会』一本で行かせていただくことになりました」と説明している。
●矢崎裕明1981年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『IPPONグランプリ』『まっちゃんねる』などのチーフプロデューサーを歴任。現在は『新しいカギ』『何か“オモシロいコト”ないの?』のチーフプロデューサーを務める。
●田中良樹1991年生まれ、埼玉県出身。早稲田大学卒業後、14年にフジテレビジョン入社。『アウト×デラックス』のADを経て、『BACK TO SCHOOL!』『関ジャニ∞クロニクルF』演出、『さまぁ~ずの神ギ問』『ホンマでっか!?TV』ディレクターなど、数々のバラエティ番組制作に携わる。現在は『新しいカギ』の演出を担当する。
●杉野幹典1992年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、14年にフジテレビジョン入社。『ワイドナショー』『IPPONグランプリ』『ホンマでっか!?TV』『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』などを経て、現在は『さんまのお笑い向上委員会』で演出、『新しいカギ』でディレクターを務める。