2023年03月03日07時30分 / 提供:マイナビニュース
本連載の第194回では「業務に本当に必要な情報を見極めるためにすべきこと」という話をお伝えしました。今回はがらりとテーマを変えて、この4月に異動を控えた人が今のうちにやっておくべきことについてお話します。
「次はこの部署に異動かぁ……」
3月は部署異動の辞令が下る時期。あちらこちらで「あの人、例の部署に異動になったって」などと異動に関する話で持ち切りになっているのではないでしょうか。さて、そんな中で自分が異動になると分かると「異動先の部署はどんなところかな」とか「仕事、覚えられるだろうか」と不安になるかもしれません。
自身の異動先のことが気になるのは仕方ありませんが、その一方で異動するあなたの後任になる方のことも考えてあげられるといいですね。後任の方が気持ちよく仕事を始められるように、今のうちから準備しておきましょう。
それでは異動するにあたって、後任の人や部署のために今のうちにやっておくべきことをお伝えします。
○1. ミッション、責任、役割の明記
まずは自身のポジションについて、何のミッションを果たすことが求められているか、何に対してどれだけの責任を持つのか、またどのような役割を担っているのかという3つの項目について改めて振り返り、後任のために記録を残しておきましょう。
引き継ぎというと、すぐに「業務手順書」の整備に取り掛かる人がいますが、ぜひその前にこちらを行っていただきたいです。なぜなら、業務手順はそのポジションの人が果たすことが求められるミッション、責任、役割を全うするために最も効率よく行うための「手段」だからです。手段の前に、目的に当たる3つの項目を明確にします。
今のあなたのポジションに求められるミッション、責任、役割は何でしょうか。それをまずは後任の方にどう伝えればよいか、ということを優先して考えましょう。
○2. 業務の棚卸し
あなたが後任に引き継ぐ業務を漏れなくエクセルやパワーポイントなどの資料に記述しましょう。その際、最初から細かい手順を書くのではなく、まずは大まかな分類から記述し、徐々に細かく分解していくのがお勧めです。大まかな分類を書いたら、一度「漏れているところはないか」をチェックして、もしあれば追記して一旦、大枠からしっかり固めて次のレベルに落としていきましょう。なお、細かい手順を記述していく中で「これは既存の分類には入らないな」と思ったら新しく分類を追加しても構いません。
原則として大枠から詳細へと移っていきますが、実際には大枠と詳細を行き来しながら作っていくことになることが多いでしょう。
○3. 業務の構造の整理
あなたの業務の多くはきっと、部署内外の誰かの業務と関連しているのではないでしょうか。そこで、他の人から送ってもらったデータを帳票に記入/入力して、それをまた別の人に送ったりシステムに入力したりといった感じに、情報やデータは常に他者との間で流れるので、自分自身の中だけで完結するケースはほぼないはずです。
後任の人にとっては、異動してきたばかりでは「どこの誰とどのように関わるのか」が分からずに戸惑ってしまうかもしれません。そこで、各々の業務におけるインプットとアウトプットがどこの誰と繋がっているかを可視化しておいてあげると大変役に立つはずです。
なお、この可視化を部署レベル或いは会社レベルで出来ると上司や同僚などにとても喜んでもらえるはずです。
○4. 業務フローの可視化
業務構造が整理できたら、今度は各々の業務がどのように進んでいくのか、そのフローを可視化しましょう。PowerPointやExcel、Visioなどのツールを使って、業務の流れをぱっと見で分かるようにします。その際、先ほどの業務構造の整理で挙げた登場人物も必ず出てくるはずなので、誰がどの業務を行って、それが次にどのように繋がっていくのかを時系列で整理します。業務フロー図の描き方には見やすいようにするための作法があるため、作り始める前に調べてみるとよいでしょう。
また、業務フロー図には情報やデータのインプット/アウトプットや帳票類/システムなども含めると後任の人にとって、より使える資料になります。
○5. 業務手順書の作成
業務フローの可視化まで終えたところで、ようやく手順書に移ります。手順書は業務フローでは表しきれない細かなルールや気を付けるべきポイント、判断ロジックなども記入していきます。また、システムの扱い方や帳票類への記入の仕方なども含めます。その際、目次を付けたりアプリケーションなどのスクリーンショットを添付したり図解したりすることで、後任の人が理解する上での負担を極力、減らすような工夫ができるとよいですね。
本日は他部署に異動する人が後任に引き継ぎをするために事前にやっておくべきことについてまとめました。皆さまのご参考になれば幸いです。
相原秀哉 あいはらひでや 株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役 慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。著書に『リモートワーク段取り仕事術』(明日香出版社)がある。 この著者の記事一覧はこちら