2023年01月23日16時54分 / 提供:マイナビニュース
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国土交通省港湾局(港湾局)の両者は1月20日、同月5日に人工衛星画像データの活用に関する協定を締結し、今後災害が発生した場合はこの取り組みを活用して、港湾施設の被害状況を迅速に把握し、港湾機能の早期復旧に努めることを共同で発表した。
地震・風水害などの大規模災害発生時、港湾は、緊急支援物資の受け入れやサプライチェーン維持の観点から港湾機能の維持が求められる。その一方で、港湾施設は被害を受けた場合に面的な広がりを持つため、被災状況の把握に時間を要してしまう。さらに、津波・高潮警報などが発令されれば、現地調査に着手できない可能性もある。
こうした課題に対応できるのが、衛星画像データを活用した被災状況把握だ。上空からであれば、現地調査が不可能な場合でも迅速に状況を把握できることから、今回、JAXAと港湾局は衛星画像データの活用に関する協定を締結することにしたという。
なおJAXAでは現在、災害が発生した際に、国内の防災関係機関や国際協力の枠組みによる要請を受けて緊急観測を実施し、JAXAが2014年5月に打ち上げた陸域観測技術衛星2号「だいち2号(ALOS-2)」の衛星画像データを提供している。同衛星には、昼夜・天候を問わず観測が可能な合成開口レーダー(SAR)が搭載されており、「平成30年7月豪雨」、「令和元年東日本台風」や「令和2年7月豪雨」において、浸水域の把握などの防災業務に実際に活用された。
今回の協定では、このように防災業務で実績のあるだいち2号が主に活用される。ただし同衛星の運用期間は5年で、目標としていた7年も超えているため、後継機の打ち上げも準備されている。2023年2月12日にH3ロケット試験機1号機で打ち上げ予定で、陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」の光学ミッションを引き継ぐ先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」と、2023年度中に同じくH3ロケットで打ち上げ予定で、2号の後継機である先進レーダー衛星「だいち4号(ALOS-4)」だ。
3号と4号はそれぞれ衛星としての機能・目的が異なるため、役割を分担して被災状況の把握を行うという。まず、高分解能を持つ光学衛星である3号は、港湾近傍の海上漂流物の把握による航路の安全確認や、面的な広がりを持つ港湾の迅速かつ広範囲にわたる詳細な被災状況把握という点で活用される。また、先進レーダー衛星である4号は、2号同様にSARを搭載していることから、夜間や荒天時も含めた広域の被災状況を確認する役割を担うとした。
JAXAと港湾局は今回の協定により、災害発生時の緊急観測のための連絡体制を整備すると同時に、港湾の被災状況把握を対象とした、衛星画像データの活用を推進するためのワーキンググループを設置。衛星画像データの効果的な活用方法の検討を行うという。
また両者は、今回の取り組みにより、衛星画像データを活用した迅速かつ効果的な災害対応を可能とし、緊急物流ネットワークの確保や港湾機能の早期復旧による社会経済活動への影響を最小化することを目指すとしている。