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森林の増減とその内訳から見た「木材を使うこと」の功罪

2022年12月21日07時55分 / 提供:マイナビニュース

●木材を使うのは良いこと?
「日本国土の約70%が森林」「日本の木材を使って林業に還元していこう」といった言葉を、何度も耳にしたことがあるのではないだろうか。

たしかに都会の喧騒から抜け出せば、探さなくとも山や森が目に入るため、3分の2が森林であることは間違いなさそうだ。また、日本のような国土が小さく資源に乏しい島国にとって、大量にある森林はまさに「宝の山」といえよう。その宝物の1つである木材を活用することで、地元の林業、ひいては地域の活性化につなげていこうとするのも理解できる。

では、「木材を使うことは良いことだ」、と言いたいところだが、実はそう簡単な話ではない。「木材を使うこと」にも影は存在する。今回は、そういった日本の林業と木材産業の光と影について話したいと思う。

「木材を使うこと」の功罪

まず、木材を使うことが良いかどうかについてだが、結論からいうと「良いこと」である。理由は単純明快で、木材は"再生産可能"な資源であるからだ。石油や石炭などの化石燃料は枯渇性の資源であるのに対し、木材やバイオマスといった天然資源は再生産が可能な資源である。

簡単に関係式を示すと、前者は「地球の資源増加量<人間の利用速度」であるのに対し、後者は「地球の資源増加量>人間の利用速度」となり、木材を資源として使うことは「良いこと」と考えるのが一般的であろう。持続可能な社会にしていくには、生活の豊かさとともに進行する資源の枯渇を止め、森林や木材などの再生産可能な資源と共存する道に向かって走り出さなければならない。

しかし、これはあくまで理想の話だ。現実は少し違う。

国際連合食糧農業機関(FAO)の調査では、1990年から2020年の30年間で世界の森林面積が約1億7800万ha減少しているという。これは、日本国土の約5倍に相当する面積だ。

一方で、1990年以降の森林面積の純減速度は、1990年~2000年間の784万ha(年平均)から、517万ha(2000年~2010年)、474万ha(2010年~2020年)と鈍化しつつある。これは一部地域での自然拡大活動によるものだが、それでもアフリカ地域の森林純減速度は加速し続けているのが現状だ。

これらを踏まえると、木材がいくら再生産可能資源であるとはいえ、持続可能な使用量を凌駕する勢いで消費しているように思える。これでは「地球の資源増加量>人間の利用速度」の関係式が成り立っていないのではないか。このような情報を見れば、「木材を使うことは森林破壊につながる」という意見も出てくるだろう。

●木材にも「良い使い方」がある
使うべき森林と使わざるべき森林

ただし、だからといって生態系や自然環境保護といった問題を盾に木材資源を「使わなければ良い」というのは大きな間違いだ。そういった展開はあまりに短絡的すぎる。

たしかに世界の森林面積は減少傾向にあるが、森林には「保護する森林」と「資源生産を担う森林」の2種類があり、その境界を曖昧にしてはいけない。保護する森林とは、生物多様性の保全や土砂災害の防止、水源のかん養といった森林の多面的機能を享受するために必要な森林を指す。この森林はあくまで保護すべき森林であり、資源生産を行う森林ではない。

私たちが資源として使っていくべきは、資源生産を担う森林である。そして、その森林こそが人工林である。人工林は、木材生産のために人の手を加え育成されている森林で、植林から伐採までを人が管理しながら行う。

世界における人工林面積は2億9400万haであり、地球上の森林全体の7%を占める。さらに、この人工林面積は1990年から2020年にかけて1億2300万ha増加しているという。

つまり、世界の森林破壊が進んでいる主な原因は「保護する森林」から資源を得ているということだといえよう。さらにいうと、私たちもそれに加担している可能性だってある。ホームセンターで買った本棚の材料がどういった経緯で辿り着いたかなど、消費者は気にもかけない。食品の原材料を気にする人は見かけるのに、木材製品の原材料を気にする人は見たことない。

本当にそれでいいのだろうか。

しかしながら、保護する森林の伐採によって生計を立てている人もいれば、適切な医療や学習をするための道路開通などのインフラ整備によって伐採を余儀なくされるケースもあるだろう。それは自由経済や弱肉強食の社会構造、一極集中型の消費形態など、私たちが生んだ歪みの被害者という見方もある。これらはどれも、環境・社会・経済が絡み合った非常に難しい問題だ。
「良いこと」といえる木材の使い方

さて、ここで冒頭の質問に戻るが、「木材を使うことは良いこと?」については、大前提として人工林から適切に生産された木材でなければ「良いこと」にはならない。不当に伐採された木材を使うことは、あくまで地球環境上「良いこと」ではない。

また、世界には森林認証制度がある。同制度では、第三者機関が国際基準に則り、森林管理や木材などの製造・加工・流通が適切に行われているのかを審査する。その審査を通過した木材にはラベルが付けられ、森林認証製品として販売することができる。そういった、森林認証をうけた木材を使うことは、たしかに「良いこと」になるのだろう。

今回は、木材を使うことについての内容だったが、これはあくまで世界の視点から見たものだ。次回は日本について詳しく話していく。

○参考資料

・https://www.fao.org/forest-resources-assessment/2020/en/

渡部剣太 わたなべけんた 【信条】うちのばあちゃんにも分かる文章にする 【最近始めた趣味】将棋・ジョギング 【克服したい感情】エモさへの恥じらい 【まさかの得意分野】木材・室内温熱環境 【14歳の時の夢】よろづや 【24歳の時の目標】研究者 【血液型】B型 【星座】しし座 【高校の学園祭】デコレーション担当 【苦手】球技 【好意】猫・地球 この著者の記事一覧はこちら

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