2022年11月11日07時00分 / 提供:マイナビニュース
●僕はずっと嫉妬してました
11月13日よりWOWOWプライム&WOWOWオンデマンドにおいて、『連続ドラマW 両刃の斧』(毎週日曜 22:00~全6話※第1話は無料放送、WOWOWオンデマンドは無料トライアル実施中)が、放送・配信スタートする。ドラマは、15年前に長女を何者かに殺害された元刑事・柴崎佐千夫(柴田恭兵)と、柴崎を慕う後輩で、現在は所轄刑事・川澄成克(井浦新)が、迷宮⼊りした殺⼈事件の真相をめぐって激しくぶつかり合う、慟哭の推理サスペンス。初共演にして、柴田恭兵とダブル主演を務めた井浦新に、柴田への"深すぎる愛"と、俳優の仕事をする上で大切にしていることを語ってもらった。
――井浦さんにとって、柴田恭兵さんってどんな存在ですか?
自分がずっと観続けてきた「あぶない刑事」シリーズに出ていた方と、刑事モノでご一緒できるなんて、そんなパワーワードはないですし、大きなご褒美のようでした。今回ご一緒してみて何より感動的だったのは、恭兵さんの作品や役柄に対する向き合い方や姿勢です。お芝居云々よりも、人柄が全てだと僕は思うので。うかうかしてると振り落とされそうになるんですが、しがみついてでも貪欲にすべてを盗ませていただこうと思っていたので、恭兵さんがお弁当を食べている最中も、ちらちら覗き見してました。
――一歩間違えたらストーカーですね(笑)。
本当にちょっと気持ち悪がられていたかもしれない(笑)。恭兵さんは顔合わせで「この作品は愛の物語です」とおっしゃっていたんですが、まさに「本気で愛の物語を作り上げたい」という思いが、撮影中も体から溢れ出していて。かといってずっと眉間にしわを寄せているわけでもなくて。スタッフさんにユーモアを振りまいて現場を和ませていらっしゃる姿もひっくるめて、「恭兵さんってズルいなぁ」と。恭兵さんは、お芝居にも、人柄にも、品格を感じられる方でありながら、いつでもそれを捨てて、人間クサい、芝居を超えた芝居をいきなりブン投げてくるような凶暴性と繊細さも持ち合わせていて。ご一緒してみて、自分に足りないものが浮き彫りになりました。感謝しかないです。恭兵さんが「ありがとう、新。またどこかで会おう」と僕宛にコメントを出して下さったのですが、せっかくならご本人の口から生の声で聞きたかったな(笑)。
――井浦さん自身では「乗り越えるべき難所が数多くあった」とコメントされていましたが、具体的にどんな現場でしたか?
「刑事モノあるある」ではあるのですが、専門用語の長ゼリフが、もう想像を絶するぐらいたくさんあって。特に恭兵さんとの二人芝居では、川澄が延々としゃべっているんです。恭兵さんの他にもモンスター級の共演者がたくさんいらっしゃって、撮影終盤が近づいても頂上が全く見えないんです。どんな山の形をしていたのかさえ全くわからずに。霧の中で急勾配の登山をしているかのようでした。川澄も、なかなかつかみどころのない人物で……。
――柴田さんのお芝居が素晴らしすぎて、エキストラの方まで泣いてしまったシーンがあったそうですね。
現場で会うスタッフさんが、僕に向かって口々に言ってくるんです。「いやぁ~昨日の柴田恭兵さんは本当にすごかった」って。いつも自分がいないところでものすごいことが起きるから、僕はずっと嫉妬してました。心で演じるからああいうことになるんだろうなって。本当にあのシーンは壮絶です。恭兵さんのお芝居が、本作最大の見どころなんです。間違いなく。
●限界を超えるまでやらないと監督には届かない
――監督のコメントにも、「井浦さんは『自分の限界を突破する』をスローガンに掲げていた」とありました。
今回の作品においては、メンタル的にもフィジカル的にも、どこか勝手に、自分で自分を追い込んでしまうようなところがあったんですが、どこか壊れていく感じが逆に芝居といい感じにブレンドされて。踏ん張りが効かない、枯れたオッサンになっていったりするところが、川澄という役とちょうど重なるようなところもあって。森監督は、小手先の芝居を求めている人ではないというか。一人ひとりが背負っている物を、現場でどう表現するかを大切にされている方なので。限界を超えるまでやらないと監督には届かないんです。いま振り返ると、クランクアップ時も「明日から本当に普通の生活に戻れるのかなぁ」といった怖さがあったような気がします。変な話、キツくても川澄のままでいる方がまだラクなんです。
――柴田さんが「あぶデカ」のような軽やかなお芝居から、重厚感のある役柄へと変容されてこられたのに対し、井浦さんは割とシリアスなところから入って、近年は軽やかな作品にも挑戦されつつ、またこうして今回のようなシリアスな作品にも取り組まれていますよね。
どちらかと言えば、僕は社会派と呼ばれるような重い作品にしか縁がないなぁと思ってましたから。死んだり、殺されたり、殺したり、爆破したり……と、割とずっとそんな感じで(苦笑)。コミカルなキャラクターができるようになったのは、最近と言えば最近です。基本的にはいただいたお話は、スケジュールが合いさえすれば断らないようにしているんですが、そのなかでも「流れ」というものが、僕はすごく大事だと思っているんです。
例えば、この作品に向かう前の2021年は、『にじいろカルテ』『あのときキスしておけば』(いずれもテレビ朝日系)、『最愛』(TBS系)と、3本のテレビドラマをやらせてもらってたんですが、3本とも全く違う世界観で、役柄もどれもこれもまったく違っていて。作品は違えど同じような役が続くと、僕はどうしても飽きてしまうタイプなんですが、去年は、物語も、世界観も、お芝居も、全て違うアプローチで取り組めたので、一個一個の反動を上手く利用することができたんです。正直「50前のオッサンがラブコメをやってもいいのかな」と思ったりもしたんですが(苦笑)、やったことがない表現を試せるという喜びもあって。