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東大など、多様なトポロジカル相を持つトポロジカル・ディラック半金属を開発

2021年10月18日20時13分 / 提供:マイナビニュース

東京大学、福島工業高等専門学校(福島高専)、科学技術振興機構の3者は10月15日、高品質なα-スズ(α-Sn)薄膜をIII-V族半導体のインジウムアンチモン基板上に結晶成長させることに成功し、α-Sn薄膜のさまざまなトポロジカル物性を明らかにしたと発表した。

同成果は、東大大学院 工学系研究科 附属総合研究機構のレ・デゥック・アイン助教、同・電気系工学専攻の高瀬健吾大学院生、同・瀧口耕介大学院生、同・田中雅明教授、福島高専の千葉貴裕講師、同・小田洋平准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、機能性材料の化学および物理学を扱う学術誌「Advanced Materials」に掲載された。

トポロジカル・ディラック半金属では、エネルギーと運動量(波数ベクトル)との関係(バンド分散)が線形であり、極めて有効質量が小さく移動度が高い「ディラック電子」がバルクの電気伝導を担う。ディラック電子の流れによる電流は、「スピン・運動量ロッキング」によりスピン偏極を伴う。そのためトポロジカル・ディラック半金属は、電子の「電荷」と「スピン」の両方の自由度を活用するスピントロニクスデバイスや量子情報デバイスに使える有望な材料プラットフォームとなることが期待されている。

また物性物理学の基礎研究の観点からも、トポロジカル・ディラック半金属はほかの多くのトポロジカル物質状態へ相転移させることが可能であるため、トポロジカル物質の「親」となる相として重要な研究対象と考えられている。

トポロジカル・ディラック半金属の実現は難しく、これまで「Na3Bi」や「Cd3As2」といった材料が報告されてきたが、単元素での報告はまだないという。その実現可能性がある材料がSnで、ダイヤモンド型結晶構造を持つα相(α-Sn)の場合、「禁制帯幅」がゼロであり、強いスピン軌道相互作用を持つことにより伝導帯と価電子帯が反転する特異なバンド構造を持ち、その薄膜に歪みを加えると、面内格子定数が引っ張られる場合(伸張歪)には「トポロジカル絶縁体」となるが、逆に縮められる場合(圧縮歪)には「トポロジカル・ディラック半金属」となることが理論的に示されていた。

しかし、これまでの研究では薄膜成長技術が十分でなかったため、品質のよいα-Sn薄膜の作製ができず、期待されるトポロジカル物性を実現することができておらず、実際の物性や機能は不明なままであったという。

そこで研究チームは今回、最先端の分子線エピタキシー法を用いて、インジウムアンチモン基板上でさまざまな膜厚のα-Sn薄膜を成長させ、完璧ともいえるダイヤモンド型単結晶構造と界面の原子層レベルまでの平坦さを持つ高品質α-Sn薄膜を作製することに成功。α-Snのフェルミ面が横断するバルクと表面バンドの有効質量、量子移動度、ベリー位相シフトなど、さまざまな重要なバンド構造の情報を実測したところ、その量子移動度は、3万cm2/Vs程度であること、ならびにバルクバンドと表面バンド両方に特徴的な線形なバンド分散を持つディラック電子が存在することなどが確認され、トポロジカル・ディラック半金属であるということが実証されたとする。

また、α-Sn試料の膜厚を薄くしていくと、電子状態の量子閉じ込め効果により、α-Snがトポロジカル・ディラック半金属から2次元トポロジカル絶縁体へ、そして通常の絶縁体に相転移することも確認したという。

今回の研究対象のα-Snは、単元素からなり結晶構造が単純であること、半導体材料との整合性がよいこと、有毒物質ではなく環境に優しいことなどから、多くのトポロジカル材料の中でもユニークかつ最も有望な材料と考えられると研究チームでは説明しており、将来のトポロジカル物性と量子デバイス開発のためのプラットフォーム材料として期待されるとしている。

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