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カートの5時間耐久レースに参戦して再認識した運転の基本

2021年03月09日11時30分 / 提供:マイナビニュース

2021年も春は目前。さまざまな競技が開幕を控える時期だが、それはモータースポーツも同様だ。F1は3月21日のオーストラリアGPで長いシーズンが始まる予定。日本で人気の高いGTレース「SUPER GT」は、2月末に公式テストが実施され、各チームが4月11日の開幕戦決勝に向けて着々と準備を進めているところだ。

サーキットで繰り広げられる白熱のバトルには手に汗を握らされるが、自身がその立場に置かれたら、どう感じるのか。それを実感すべく、モータースポーツ初心者の筆者がカート大会に参加してみた。そこで感じたのは、意外にも安全運転への意識の高まりであった。

○レーサーの登竜門、カートの奥深い世界

まずは、レーシングカートについて説明したい。見た目は遊園地のゴーカートよりも華奢だが、これでも立派なモータースポーツ競技車両である。その存在は、モータースポーツの入口ともいうべきもので、ここからプロへと成長したレーサーも多い。F1の伝説的ドライバーであるアイルトン・セナをはじめ、日本初のフルタイムF1ドライバーとなった中嶋悟、近年だとトヨタやザウバーで活躍した小林可夢偉といったレーサーも、カートからステップアップしてF1まで上り詰めた。

レーシングカートはむき出しのシャシーに、小型エンジンと運転に必要な最小限の装備をそなえたもの。カートの仕様は各レースで決められているレギュレーションに準じることが絶対条件で、これを破るとレースに参加することができない。またドライバーには、レーシングスーツ、シューズ、グローブ、ヘルメットなどの着用が義務付けられる。装備類は、1人分で最低でも10万円くらいと安くはないが、怪我から身を守る大切なアイテムだ。

筆者が参加したのは「もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI” 2020」というイベント。レースとはうたわず、モータースポーツを楽しむことを目的とした催しだが、自動車レースなどでも使われるツインリンクもてぎの1周約4.8キロのレーシングコースを使用し、最大120台のカートが5時間を走りぬくという内容だから、クルマは小さくともスタートシーンは迫力満点だ。

今回のマシンにはスポーツカートを使用した。レーシングカートとの主な違いはエンジンだ。レーシング用ではなく、発電機や芝刈り機などにも使われる汎用エンジンを搭載し、性能を抑制してある。変速ギアは付いていないので、操作はステアリング、ブレーキ、アクセルのみとシンプル。それでも、コースでのトップスピードは時速100キロを超える。1回の給油量やピット入りの際の滞在時間が決められているので、チームの戦略が順位を左右するところもモータースポーツの面白さを味わえるポイントだ。

参加したのは、メディア関係者による合同チーム「チームクラブレーシング」。エントリーは3台で、私はそのうちの1台である95号車に搭乗することになった。カートのエンジンには、ホンダの汎用エンジン「GX270」を搭載。普段はさまざまな機械の動力となる縁の下の力持ち的なエンジンだが、今日は競技車の心臓だ。

我々のチームはドライバー5人が交代で走行したのだが、コース1周のタイムは3分弱なので、単純計算だと1人の受け持ちは1時間=約20周ということになる。もちろん、多くのマシンが同時に走行するため、マシンやコースの状況、ドライバーの腕前などにより1回の走行時間やドライバー交代のタイミングも変わってくる。そのタイミング調整も重要な戦略だ。

○むき出しのシャシーで時速100キロ!

広大なサーキットコースを目にすると、小さなカートならどこでも走れるように思えるが、実は走る場所は意外と限定される。それが、無駄なく安全にコースを周回できるレコードラインだ。つまり、速く走るためには、1本の線の上を走るようにコース上の「決められた道順」をたどる必要がある。もちろん、それ以外の場所も走ることはできるが、その分、1周あたりの走行距離が長くなるし、走行中の加減速も増えてタイムは伸びない。しかも、ほかのカートが通らない路面には、オイルなど走行を妨げる落下物があったりするので、最悪、トラブルの原因ともなるのだ。

初心者の私は、周囲のカートの走行や自車のステアリングを通して伝わるタイヤの感覚に気を付けながら、コースを周回する。むき出しの小さなカートで時速100キロを出すのは、かなり刺激的だ。最高速が出る長い下り坂は、慣れるまではアクセルを最後まで全開にできないほど。しかも、走行に慣れたドライバーも多いので、ガンガン抜かれる。正直、これにも焦ってしまう。それだけ順位が落ちるからだ。

しかし、焦っても速く走れるわけではないのはレーシングカーもカートも同様だ。限られたエンジンパワーを無駄なく使うべく、丁寧に運転することが基本となる。少しでも無理をしてしまうと次の加減速に影響が出るので、結果的にタイムも遅くなってしまう。

丁寧な運転以上に難しいのは、クルマの性能をしっかりと引き出す走りだ。当たり前だが、減速は最小限に抑えた方が、速度が落ちないので速く走れるし、燃料も無駄にしなくて済む。ただ、アクセル全開の後に迫るカーブは、やはりコースアウトの怖さから、必要以上に減速してしまう。ここでベストな判断を下すには経験を積んでいくしかないのだが、何周かラップを重ね、徐々にスムーズに走れるようになってくると、少しでも前に行って、できるだけほかのカートに抜かれまいとする欲も出てくる。そうすると、気持ちに焦りがでてしまい、ミスにつながってしまう。

その結果として待っていたのは、派手なコースアウトだった。しかも最悪なことに、コースに復帰できない状態に……。タイムと順位を競う以上、できるだけ速く走ることも大切なのだが、あくまでチーム競技なので、最も大切なのは次のドライバーにバトンを渡すこと。このコースアウトは、結果的に大きなタイムロスにつながった。焦らずに遅いタイムで周回を重ねていた方が、ずっと良好なタイムが残せていたのだ。

もちろん、耐久走行の間には、マシントラブルや他車との接触など、予期せぬトラブルも発生する。完走と成績を両立するには、まずしっかりと走り切ることが大切だと学んだ。

最終的には、出走した約80台中51位という結果でレースを終えた。同じチーム内でも上位が期待された97号車も、他車との接触があったため修理に時間を要し、42位という結果に。女性ドライバー5人が駆ったもう1台の98号車は58位で、チーム内での順位差は思ったよりも小さかった。これもモータースポーツの難しさが表れているところだが、全車が完走るできたのは、各ドライバーの努力の積み重ねに加え、給油やタイヤ交換、そして走行中のアクシデントによる破損箇所の修理を行ってくれたサポートスタッフによるものだ。

走行中に私が感じた焦りは、日常運転にも置き換えることができる。「時間がない、早く目的地に到着したい」という欲求は、無理な運転につながりがちだ。気持ちに余裕のない運転が、カートでのコースアウトのような大きなミスを招く可能性は非常に高い。安全なスペースが確保されているサーキットコースならばリスクは少ないが、公道では事故となり、大きな損害を招くことになる。

速く走るためには、むやみにスピードを出すのではなく、平均的にはスムーズに走ることが重要だ。そのためには丁寧な操作と心の余裕が大切だと改めて気付かされた。

日常の運転にもいかせる気付きが得られたレーシングカート体験。興味がある人には、ぜひサーキットコースでのカート走行を経験してみてほしいところだが、競技に出場するにはお金も人手も必要だ。私も、クラブレーシングに参加させてもらえなければ、このような機会は得られなかったであろう。

しかし、街中のカート専用サーキットならば、レンタルのカートがあるので、気軽にサーキット走行を楽しめる。これらのカートはスポーツカートに比べればスピードは落ちるが、カートに最適化されたコースにはカーブがたくさん設置されているので、同じような体験ができる。運転操作だけでなく、運転中の自分の性格を知るためにも、いい経験となるはずだ。そして筆者の場合は、レースのタイムを縮めるためにも、運転スキルを磨くと同時に、自身の軽量化(減量)にも取り組むべきだと実感したのであった。

大音安弘 おおとやすひろ 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。 この著者の記事一覧はこちら

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