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月周回有人拠点「ゲートウェイ」、スペースXが最初のモジュール打ち上げへ

2021年02月12日17時26分 / 提供:マイナビニュース

米国航空宇宙局(NASA)は2021年2月10日、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の最初のモジュールの打ち上げについて、スペースXの超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」を選定したと発表した。

打ち上げられるのは、電力や推進、通信などを司る「PPE」と、宇宙飛行士の居住や物資の保管場所となる「HALO」の、ゲートウェイの基礎となる2つのモジュール。打ち上げは2024年の予定で、2つを結合した状態で打ち上げる。

ゲートウェイは、有人月探査や将来の有人火星探査を目指して開発される、月を回る有人宇宙ステーションで、このモジュールの打ち上げにより人類はその第一歩を踏み出すことになる。

月周回有人拠点「ゲートウェイ」

月周回有人拠点「ゲートウェイ(Gateway)」は、NASAを中心に、日本や欧州、カナダなどが共同開発する、月を回る有人の宇宙ステーションである。

NASAなどは現在、有人月探査計画「アルテミス(Artemis)」を進めており、2024年に2人の宇宙飛行士を月面に送り込み、将来的には継続的ね有人月探査を行うことを目指している。また、その技術やノウハウを礎とし、2030年代には有人火星探査を行うことも構想されている。

ゲートウェイはこうした計画の要として、月面探査を行う際の拠点として、また有人火星探査を行うための予行練習の場として活用される。ただし、2024年に予定されている最初の有人月着陸ミッション「アルテミスIII」では、ゲートウェイは使われないことになっている。

ゲートウェイの建造は、国際宇宙ステーション(ISS)と同じように、モジュールごとに分けてロケットで打ち上げ、軌道上で結合させる。日本など他国のパートナーや民間企業が、モジュールや無人補給船による物資の補給などで貢献する点も同じだが、月着陸船も民間企業が開発するなど、民間の関与の度合いが増しているところが特徴である。

ゲートウェイは現時点で、4つのモジュールの打ち上げが計画されている。
○PPE(Power and Propulsion Element)

最初に打ち上げられるモジュールのひとつで、太陽電池やプラズマ・スラスター(電気推進スラスター)をもち、電力や推進、通信など、ゲートウェイに必要な基本的な機能を司る。開発は米国のマクサー(Maxar)が担当する。2024年に後述のHALOとともに打ち上げられる。
○HALO (Habitation and Logistics Outpost)

宇宙飛行士の生活・研究場所や、物資の保管場所となるモジュールで、ドッキング・ハブももつ。開発は米国のノースロップ・グラマンが担当する。2024年に前述のPPEとともに打ち上げられる。
○ESPRIT(European System Providing Refueling, Infrastructure and Telecommunications)

燃料タンクや通信機器、ドッキング・ポート、居住区、科学機器用のエアロックなどをもつモジュール。開発は欧州が担当する。通信機器は2024年に、その他の部分は2027年に打ち上げ予定。
○I-HAB(International Habitation Module)

宇宙飛行士の生活・研究場所となるモジュール。開発は欧州と日本が担当する。2026年打ち上げ予定

このほか、将来の有人火星探査などに向け、さらに追加のモジュールの開発も検討されている。

PPEとHALOをファルコン・ヘヴィで打ち上げへ

そして今回、NASAは、このうちPPEとHALOを、宇宙企業スペースX(SpaceX)の超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ(Falcon Heavy)」で打ち上げることで契約を交わしたと発表した。

打ち上げは2024年5月以降の予定で、契約額は約3億3180万ドルだという。なお、この金額には打ち上げ費用のほか、「その他のミッション関連費用」も含まれる。

NASAは当初、PPEとHALOを分け、それぞれ有人宇宙船「オライオン(Orion)」とともに、開発中の巨大ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」で打ち上げることを計画していた。その後、2020年に、PPEとHALOをあらかじめ結合させた状態で、民間のロケットで打ち上げる計画に変更。これにより、打ち上げにかかるコストを節約できるほか、あらかじめドッキングさせた状態で打ち上げることで、月軌道上でドッキングするための機器を省くこともできるとされた。

PPEの打ち上げ時の質量は約8~9t、HALOは約6~7tで、合計約15tになる見込みとなっている。打ち上げられる軌道は明らかにされていないが、ファルコン・へヴィであれば、第1段やブースターを使い捨てにすることで月に向かう軌道に直接投入することも可能であり、また再使用する場合でも静止トランスファー軌道、もしくはそれに近い軌道に投入し、あとはPPEのプラズマ・スラスターで月に向かうという方法も可能である。

なお、打ち上げ能力はともかく、PPEとHALOを結合した状態では全長が長く、ファルコン・ヘヴィの標準型フェアリングには収まらない。ただ、スペースXは現在、国家安全保障ミッション用に、全長の長い新しいフェアリングを開発しており、これが使われることになるとみられる。

ファルコン・ヘヴィはこれまでに3回の打ち上げすべてを成功させており、今年も2回の打ち上げが予定されている。

スペースXはまた、アルテミス計画、ゲートウェイ計画にかねてより参画しており、ファルコン・ヘヴィと新開発の補給船「ドラゴンXL」使ってゲートウェイへの補給ミッションを行う契約を結んでいるほか、開発中の巨大宇宙船「スターシップ」は、同計画の月着陸船として使われる可能性もある。

○参考文献

・NASA Awards Contract to Launch Initial Elements for Lunar Outpost | NASA
・Gateway | NASA(https://www.nasa.gov/gateway)
・SpaceX - Falcon Heavy
・SpaceX wins contract to launch first pieces of NASA’s Gateway lunar outpost - Spaceflight Now

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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