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中小企業にとってのマイナンバー制度とは? 第116回 マイナンバーカードの健康保険証利用が3月スタート

2021年02月15日09時00分 / 提供:マイナビニュース

政府が、マイナンバーカード普及の大きな弾みになると考えるマイナンバーカードの健康保険証利用が、いよいよ2021年3月からスタートします。

マイナンバーカードの健康保険証利用については、以前にも取り上げましたが、利用申し込みは昨年8月から始まっており、当時から予定されていた通り、来月には利用開始になります。

ただ、コロナ禍で緊急事態宣言が発出された状況の影響もあるのでしょうか、来月スタートというわりには、この件がメディアに取り上げられることが少ないように感じられます。

今回は、マイナンバーカードの健康保険証利用の現状を見ていきましょう。
マイナンバーカード交付数の推移

過去約3年間のマイナンバーカードの交付数の推移を「人口に対する交付枚数率」でみていくと、次のようになっています(総務省 「マイマンバーカード交付状況について」より)。

平成29年(2017年)12月1日現在 10.2%
平成30年(2018年)12月1日現在 12.2%
令和2年(2020年)1月20日現在 15.0%
令和3年(2021年)1月1日現在 24.2%

2020年1月までの過去2年の交付数の増加が5ポイント程度なのに対して、過去1年は9ポイント近く伸びています。昨年春には特別定額給付金のオンライン申請があり、9月からはマイナポイントの実施が始まりました。これらの影響もあり、2020年10月1日時点で交付枚数率は20.5%と、初めて20%を上回る交付枚数率となりました。2020年1月までの過去2年の伸び率に匹敵する伸び率を約9カ月あまりで達成したわけです。そして、その後の3カ月で約4ポイント伸びていますので、マイナンバーカードの交付枚数は全体としてはまだまだとはいえ、少しずつ伸び率は加速しているようにみえます。

特別定額給付金のオンライン申請では、行政側のシステムの問題点を露呈してしまい、マイナンバーカード交付数の伸びにはあまり寄与しなかったとようですが、マイナポイントの実施はマイナンバーカード交付数の伸びに寄与しているようにみえます。

そして、2020年11月からは、まだマイナンバーカードを取得していない個人を対象に、QRコード付き交付申請書が順次送付されています。

(図1)は総務省のQRコード付き交付申請書の送付のお知らせページです。

このQRコード付き交付申請書の送付は、マイナポイントの実施がマイナンバーカードの交付枚数の伸びに寄与しているとみた政府が、マイナポイントの実施を2021年3月まで延長し、「マイナンバーカードを取得してマイナポイントをもらおう」という流れで、マイナンバーカードの交付枚数を伸ばすためにとった施策といえます。日本経済新聞の記事などによると、QRコード付き交付申請書は8,000万人に送付されるということです。この施策でどこまでマイナンバーカードの交付枚数を伸ばせるのか、そしてこの3月から開始されるマイナンバーカードの健康保険証利用が、交付枚数の伸びをさらに加速させることができるのか、といった点が今後の注目ポイントになってきます。
マイナンバーカード 2021年3月健康保険証利用開始へ

2021年3月、来月の後半から予定通りにマイナンバーカードの健康保険証のマイナンバー利用がスタートします。

現在のマイナポータルのトップページでは、(図2)のように、現在進行中の交付申請書の送付についてのリンクがトップにきており、健康保険証については利用申込のリンクはありますが、利用開始に触れた内容はまだ掲載されていません。

このマイナンバーカードの健康保険証利用や、医療機関へのシステム導入などを主管するのは、厚生労働省ということになります。厚生労働省では、マイナンバーカードの健康保険証利用への対応を「オンライン資格確認」として、医療機関への「オンライン資格確認」システムの導入を促してきました。

(図3)は厚生労働省が医療機関・薬局向けに「オンライン資格確認」について説明した2021年1月時点の資料です。

厚生労働省のその他の資料も確認していくと、マイナンバーカードによる「オンライン資格確認」で顔認証付きカードリーダーを主流にしていきたい思惑があるようです。暗証番号を入力する方式では、ITリテラシーが低い高齢者などにマイナンバーカードの健康保険証利用を広げていくことが難しいと考えての施策と思われます。

(図3)の資料では、「令和3年3月からマイナンバーカードを持参し、保険資格の確認をする患者が増えてきます。全ての患者が診療等を受けられるよう準備をお願いします。」としています。実際に、この3月からマイナンバーカードを健康保険証の代わりに持参して、「オンライン資格確認」するようなシーンが医療機関や薬局でみられるようになるのでしょうか。

(図4)は、厚生労働省保険局が「オンライン資格確認」導入に向けた財政補助について説明した資料のなかの、2020年11月時点での準備状況を説明した資料です。

もともと2021年3月時点での医療機関等の導入目標を6割程度としていましたが、この2020年11月時点では全体として2割を切っています。一方で、参考として掲載されているマイナンバーカードの健康保険証利用の申込割合は、この時点で、マイナンバーカード取得者の5.5%に過ぎません。その後マイナンバーカードの交付枚数も伸びていますので、この数字もある程度伸びていると思われますが、まだまだ低い数字にとどまっているのではないでしょうか。

課題に掲げられているように、医療機関や薬局への周知が不十分ということもあるのでしょうが、「マイナンバーカードの普及率等を踏まえ、オンライン資格確認がどのようになるのか様子見の状況」になっているのも無理のないことといえます。

このような状況に対して、厚生労働省は(図5)のような「加速化プラン」を打ち出しています。

「1」に掲げられている「医療機関等への更なる導入支援」については、コロナ禍で医療機関が大変な状況にあることから、すぐには機能しないとしても、おそらく財政補助など講じられることで、ある程度機能すると思われます。ただし、「2」の施策については、マイナンバーカードの発行を主管する総務省や地方自治体なども含めて利用申込を強力に推進しなければ、難しいのではないでしょうか。

マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込みは、マイナポータルを利用して簡単にできます。それにもかかわらず、すでにマイナンバーカードを取得している人が、健康保険証利用に積極的ではないことには理由があるはずです。

(図6)は、マイナンバーカードの健康保険証利用のメリットについて説明した厚生労働省の資料です。

「こんなところも簡単・便利に!」というところに書かれているメリットは、後からついてくるメリットです。では、「いつもの通院等が便利に!」の方はどうかというと、「診療・薬剤処方」で書かれていることはすぐには実感しにくいし、「支払い」に書かれていることも、突然の事故などで高額医療を受けざるを得ないケースのことですからピンとこないというのが実情ではないでしょうか。となると、「顔認証で自動化された受付」がメリットとしてアピールでき、さらに「こんなところも簡単・便利に!」に書かれていることで総合的なメリットを見えるようにしないと、マイナンバーカードの健康保険証利用は進まないことになってしまいます。

健康保険証を医療機関の窓口に提示するのは、初診の時か、定期的に通院している場合は月をまたいで通院する場合です。この時の手続きが面倒かというと、窓口に診察券を提示するのと同じ程度の手間であり、それほど面倒と感じることはありません。

また、健康保険証はいざという時に備えて常時携帯している人は多いと思いますが、マイナンバーカードは取得者でも常時携帯している人は少ないのではないでしょうか。これは、現時点でマイナンバーカードが必要となるシーンがほとんどないこと、またマイナンバーカードにはマイナンバーが記載されているため、紛失した場合のリスクを懸念する人が多いからです。

マイナンバーカードの健康保険証利用に向けて、こうした懸念を払拭するために、「マイナンバーを見られても悪用は困難」とか「マイナンバーカードはキャッシュカードのようなもの」といったことが政府からアアピールされてきました。

こうしたアピールや、健康保険証利用のメリットのアピールが、マイナンバーカードを持ち歩くことにリスクを感じる人たちに、説得力のあるものとして届いていないことが、利用申込が低迷している状況につながっているのではないでしょうか。

マイナンバーカードの健康保険証利用は、これから構築されていくシステムが十分活用されれば、マイナンバーカードを持つ個人にも医療機関にもメリットはあると思います。

このマイナンバーカードの健康保険証利用については、以前の記事では、医療機関の対応が計画通りに進まないことを懸念していました。(図4)で確認した現状からは、むしろ個人のマイナンバーやマイナンバーカードへの意識が変わらないと、マイナンバーカードの健康保険証利用が進まない可能性が大きいのではないかと懸念しています。この意識を変えるためには、制度としてのマイナンバーやマイナンバーカードの位置付けを見直す必要もあるのではないでしょうか。ここに対してどういう対策を講じていくのか、それがマイナンバーカードの健康保険証利用促進の鍵になってくるのではないでしょうか。

中尾 健一(なかおけんいち)Mikatus(ミカタス)株式会社 最高顧問

1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。現在は、2019年10月25日に社名変更したMikatus株式会社の最高顧問として、マイナンバー制度やデジタル行政の動きにかかわりつつ、これらの中小企業に与える影響を解説する。

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