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欧州が新型航法衛星「ガリレオ」開発へ、英国のEU離脱で衛星も“脱英国化”

2021年01月27日13時52分 / 提供:マイナビニュース

欧州委員会(EC)は2021年1月20日、衛星測位システム「ガリレオ」のための、新しい衛星を開発すると発表した。

開発、製造を担当するのはタレス・アレニア・スペース・イタリアと、エアバス・ディフェンス&スペース・ドイツの2社で、計12機の衛星を製造。新技術の採用により、従来よりも測位精度や堅牢性が向上するという。また、英国の欧州連合(EU)離脱にともない、英国製の部品を使わない“脱英国化”も図る。

最初の衛星は2024年末までに打ち上げられる予定となっている。

ガリレオ衛星とは?

ガリレオ(Galileo)は、欧州が運用している全地球衛星測位システム(GNSS)、すなわち人工衛星を使って、世界のどこでも正確な位置や時刻を知り、航法に使うことができるシステムである。

GNSSといえば米国の「GPS(Global Positioning System」が有名だが、米宇宙軍が運用していることから、GPSのみに依存するのは他国にとってリスクがある。欧州でも長らくGPSが多くの場面で使われていたが、GPS依存からの脱却、そして自律性の確保を目指し、ガリレオが構築された。

ガリレオは測位精度が約1mと、GPSなど他のGNSSに比べて高いという特長がある(ただし、最新のGPS衛星「GPSブロックIII」で同等になる)ほか、とくに民間のビジネスで活用されることを第一に考えたシステム設計となっている。また、欧州各国の軍・政府機関向けの暗号化信号(Public Regulated Service)も発信している。

2005年には最初の試験衛星「ジョーヴェA(GIOVE-A)」、2008年には2機目の試験衛星「ジョーヴェB(GIOVE-B)」が打ち上げられ、実証試験を実施。さらに2011年から2012年にかけては、実運用機に近い試験機ガリレオIOV (In-Orbit Validation)」が4機打ち上げられ、さらに進んだ実証が行われた。

そして2014年からは、実運用機となるガリレオFOC(Full Operational Capability)の打ち上げが始まり、2016年12月からは全世界での測位サービスを開始。現在は試験機を含め26機からなるコンステレーションが軌道上で運用についている。また2021年の第3四半期には、さらに2機のガリレオFOCが打ち上げられる予定となっている。

また、ガリレオなどのGNSSを補強する目的で、静止軌道で運用されるEGNOS(European Geostationary Navigation Overlay Service)というシステムもあり、民間の通信衛星などに機器を搭載し、運用されている。

脱英国化したガリレオ第2世代衛星

ガリレオが完成し、全世界での測位サービスの提供が始まった一方で、欧州では現在、第2世代となる新しい衛星の開発計画が進んでいる。

「G2G(Galileo Second Generation)」と呼ばれるこの衛星は、デジタル的にエリアや周波数などをリコンフィグレーション(再構成)できるアンテナや、衛星間通信システム、新しい原子時計など、革新的な新技術を数多く採用。測位、時刻信号の精度が向上するほか、信号の堅牢性と障害からの回復力も向上し、今後のデジタル社会、そして欧州の軍・政府機関における利用に大きく貢献するとしている。

また、衛星の推進システムには電気推進を採用。軌道上での運用可能期間が伸びるほか、ソユーズ・ロケットのフレガート上段などがなくとも、1回の打ち上げで複数の衛星を、それぞれ異なる軌道に投入できるようになるため、打ち上げコストの低減も図られる。

最初の衛星の打ち上げは2024年末までに行われる予定で、第1世代衛星から徐々にガリレオのサービスを引き継ぎ、将来的にはコンステレーション全体と軌道上の予備機のすべてがG2G衛星に置き換わる。

欧州委員会は「第2世代の衛星により、ガリレオは世界的なGNSS競争に対して技術的に先行し、世界で最も性能の高い衛星測位インフラのひとつとして維持しつつ、欧州の戦略的な自律性のための重要な資産として強化することができる」と、その意義を強調する。

G2G衛星の開発はタレス・アレニア・スペース・イタリアと、エアバス・ディフェンス&スペース・ドイツが担当。それぞれが6機を担当し、計12機の衛星が造られる。契約額は合計で14億7000万ユーロとされる。

契約を獲得したタレス・アレニア・スペースと、エアバス・ディフェンス&スペースの前身アストリアムは、かつてジョーヴェBやガリレオIOVを開発した実績がある。

なお、現行の実運用機であるガリレオFOCは、ドイツのOHBシステムが衛星全体を、英国のサリー・サテライト・テクノロジー(SSTL)がペイロードの開発、製造を担当している。しかし2018年、英国がEUからの離脱を決定したことにともない、SSTLをはじめとする英国の企業は参画できなくなった。OHBシステムは今回の入札で、SSTL抜きの計画を提案したとみられるが、落選した。

英国はまた、ガリレオ計画そのものからも離脱することになり、ガリレオが発信している軍・政府機関向けの暗号化信号の利用や、ガリレオの機密情報へのアクセスもできなくなる。さらに、エアバスが英国に構えていたガリレオの運用を行うための地上局(GCS、Galileo Control Segment)を他国へ移転させる計画も進むなど、“脱英国化”が進んでいる。

一方、英国ではガリレオに代わる、独自の衛星測位システムを構築する検討が進んでいる。2020年7月には、英国政府が宇宙インターネットの「ワンウェブ(OneWeb)」に出資したことをきっかけに、同衛星に測位信号を出す装置を搭載する構想もあったが、9月に中止されている。現時点で、英国独自の衛星測位システムの将来は不透明となっている。

○参考文献

・Commission awards 1.47 bn euros in contracts to launch the 2nd Generation of Galileo Satellites
・ESA - Galileo next-gen satellites on the horizon
・Galileo Future and Evolutions - Navipedia
・ESA - What is Galileo?

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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