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東工大など、受けた力を転換して自分を高強度化させる高分子材料を開発

2021年01月25日16時21分 / 提供:マイナビニュース

東京工業大学(東工大)、相模中央化学研究所(相模中研)、山形大学の3者は1月22日、力を受けると、色彩変化と蛍光発光によってその力を可視化すると同時に、材料自身が高強度化する高分子材料の開発に成功したと共同で発表した。

同成果は、東工大 物質理工学院 応用化学系の大塚英幸教授、同・瀬下滉太大学院生、相模中研の巳上幸一郎博士、山形大大学院 有機材料システム研究科の伊藤浩志教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、独・化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載された。

プラスチックやゴムなどに代表される高分子材料は、軽量・柔軟といった優れた特性から現代社会のあらゆる場面で用いられている。しかしその一方で、金属などのほかの材料と比較すると、機械的強度や耐久性が劣るという問題を抱えている。

高分子材料は、過剰な力による負荷を受けるとミクロレベルで高分子鎖が切断されてしまい、結果的にそれがマクロな破壊にまで至ってしまうことが、機械的強度や耐久性が金属などと比べて劣る大きな要因となっている。

しかしそこで発想を転換し、この破壊に至る力を熱や光などと同様の「刺激」として利用し、化学反応を誘起する駆動力へと変換できれば、今までとは異なる材料設計へのアプローチが可能になると共同研究チームは考察。そこで今回の研究では、引っ張りや圧縮などの力を加えることで色彩変化と蛍光発光を示し、同時に新たな結合ネットワークを形成できるという高分子材料の開発をターゲットとして開発が進められた。このような特性を持った材料なら、どこにどれだけの力が加えられているのかを目視で確認しやすく、同時に材料自身が化学反応を誘起することで逆に強度が高まるという材料を実現できることが期待できるとした。

その実現のためにまず着目されたのが、高分子材料を構成する分子骨格のうち、力を受けると反応活性なラジカルを生じる「ジフルオレニルスクシノニトリル(DFSN)」骨格だ。なおラジカルとは、電子対にならない不対電子を持つ原子や分子のことである。

DFSN骨格は室温では安定だが、力を加えると中央の炭素-炭素結合が開裂し、桃色の炭素中心ラジカルを生成するという特徴を持つ。その生成されたラジカルは、「ビニルモノマー」(炭素-炭素二重結合を有し、ラジカルなどを開始点として連鎖的に反応が進行して、高分子を与える低分子化合物)に対する重合開始能を持つ。なお重合開始能とは、モノマーを連結してポリマーに変換する重合反応を開始できる能力のことだ。

高分子鎖に連結されたビニルモノマー骨格が共存する系では、分子鎖同士を連結する架橋反応を誘起することができる。つまり、DFSN骨格を用いることで色彩変化によって力を可視化し、同時に架橋反応を起こして高強度化を実現するターゲットとした高分子材料を新たに設計できると考察したのである。

この考えに基づき、主鎖にDFSN骨格、側鎖に重合性基を有するポリウレタンが設計・合成され、フィルム成形が行われた。まず、得られたエラストマー(ゴムに代表される弾性を有する高分子材料の総称)の力による反応を調べるため、圧縮試験が実施された。エラストマーの一部を金属型で圧縮したところ、圧縮した部分のみ桃色に変化し、さらにあらゆる溶媒に対し不溶化することが確認された。これは一部のDFSN骨格が解離し、発生したラジカルを開始点とする架橋反応が進行したためだという。

続いて、圧縮されたフィルムに紫外光(波長365nm)が照射されたところ、黄色蛍光を示すことが確認された。この蛍光発光は、架橋反応中のラジカルが移動することで発生する蛍光性のラジカルによるものだ。また蛍光の変化は、色変化と比較して感度が高いことから、損傷検知の観点からもより有用であると考えられるとする。

このエラストマーでは、圧縮するほど弾性率が増加するという力学物性の変化も確認された。これは材料が圧縮によって破壊されるのではなく、むしろ新たな化学結合を形成して高強度化される証だとする。さらに発生したラジカル種に対し、電子スピン共鳴(ESR)測定とシミュレーションによる推定が行われた。そして、一連のラジカル反応を密度汎関数理論に基づいたDFT計算により評価することで、分子レベルのメカニズムを議論できることを示したとする。

高分子材料が使用される環境は多様であり、過剰な力の負荷のような好ましくない状況に対して材料自身が対応できれば、予期しない破壊を防ぎやすくなる。今後は、この新たな材料設計アプローチがどの程度の汎用性を持つのかを検証し、実用材料への展開を目指すという。さらに今回の研究の成果を基盤として、高分子材料設計の新戦略に関する学術研究も加速させていくとしている。

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