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コロナ禍に打ち克つためにできること 第12回 ついに2度目の緊急事態宣言 - もっとテレワークの拡大を

2021年01月19日10時16分 / 提供:マイナビニュース

○「感染しない、広げない」を徹底し、行動を変えよう

政府は1月7日、東京神奈川千葉埼玉の1都3県を対象に緊急事態宣言を発令したのに続いて、13日には栃木愛知岐阜京都大阪兵庫福岡の7府県に追加発令しました。コロナとの闘いはいよいよ正念場を迎えています。

ただ、飲食店の休業要請ではなく時短要請にとどまっているなど、昨年の緊急事態宣言と比べると緩やかな内容になっています。実際、各地の人出は昨年の宣言時よりも多いと報道されており、感染者数は依然として高水準で推移しています。

こうしたことから、期限とされる2月7日までにどの程度の効果を上げることができるか心配する声が上がっており、宣言前の対応を含めて政府への批判も高まっています。たしかに政府の動きは遅かったことは否めませんし、政治家が大人数で会食していたことへの反発も、もっともだと思います。しかし、だからと言って「自分が自粛する気にならない」と考えるのは適切ではありません。政治家がどうであれ、私たち一人一人が「感染しない、感染を広げない」ことをしっかりと考えて行動することが何よりも必要です。

ところで今、飲食店の時短営業や「会食」自粛が議論の的となり、メディアでは連日のように繁華街の飲食店を取材して報道しています。これは重要であることは間違いないところですが、それと並んで重要なのがテレワークの拡大です。行動そのものを変えるという点では、テレワークの拡大が大きなカギを握っているからで、それがアフターコロナに向けた経済構造の変化につながるインパクトも持っているのです。
○前回の宣言時より低下したテレワーク実施率~「出勤者数7割減」へもっと工夫を

テレワークの重要性については以前に本連載で書いた通りですが(2020年7月28日付「テレワークが日本経済の構造改革の起爆剤に」)、その後は秋にかけて感染が落ち着いたことからテレワークの実施は減少していました。

東京商工会議所の調査によると、都内企業のテレワーク実施率は前回の緊急事態宣言解除前後の5月末~6月上旬には67.3%でしたが、9~10月には53.1%と14.2ポイント減少していました。企業規模が小さいほどテレワーク実施率が低くなっており、30人未満では38.1%にとどまっています。30人以上50人未満では実施率が43.6%で、「一時期実施していたが現在は取りやめた」と回答した企業が33.3%にのぼっていました。

ただ、これらの数字は「テレワークを実施している企業の割合」であって、「テレワークを経験している従業員の割合」ではありません。同調査によると、4割の企業が「テレワークを実施している社員の割合は20%以下」と答えています。つまり、政府が今回の宣言で目標とする「出勤者数を7割減らす」ためには、これまで以上にテレワークを拡大する必要があるわけです。今回の緊急事態宣言によって、再びテレワークを実施し始めた企業も少なくないと思いますが、まだ十分とは言えないようです。

そうは言っても「うちの会社はテレワーク出来る業務がない」「パソコンなどの機器やネットワークの整備ができていない」「業務の生産性が下がる」など、さまざまなハードルがあることでしょう。それでも、テレワークを導入・拡大する余地はまだまだあるはずです。全面的にテレワークが実施できなくても、週に2~3日でも在宅勤務する、あるいは時差出勤やフレックスタイムと組み合わせるなど、工夫の仕方によってはもっとテレワークを増やせる余地があると思います。   
カルビーの経験に学ぶ~「テレワークが原則」の新しい働き方

テレワークの拡大のためには、実際に導入した企業の経験から学ぶことも必要です。その観点から、テレワーク先進企業と言えるカルビーの例をご紹介しましょう。

同社はすでに2014年から在宅勤務制度、2017年には就業場所はどこでもよい(例えば顧客先、カフェなど)とするモバイルワーク制度も導入していました。利用は一部にとどまっていましたが、いわばこうした下準備を経たうえで、コロナ感染拡大に対応して昨年3月、本社勤務者約800人全員を原則として在宅勤務としました。これは緊急事態宣言発令より前のことです。

同社によると、全員在宅勤務体制に移行したことによって業務の電子化など効率化が進み、通勤時間の削減などで多くの社員がメリットを実感できるようになったそうです。社員へのアンケートでは「コロナ前の働き方を変えたい」との声が6割以上に達しました。

これをもとに、緊急事態宣言解除後も在宅勤務体制を継続し、さらに7月には「ニューノーマルの働き方」の方針を打ち出しました。その内容は、

オフィス勤務者はモバイルワークを原則とし、出社率は30%を目安とする。
フルフレックス導入(フレックス勤務のコアタイム廃止、こま切れ勤務OK)
業務に支障がない場合は単身赴任を解除する。
通勤定期代の支給を停止し、オフィス出社時の交通費を実費で支給。
モバイルワーク手当を新設し、モバイルワークの環境整備の費用を支給。
――などです。

同社のこの「ニューノーマルの働き方」は数カ月たって定着しているようで、今回の今回の緊急事態宣言発令後をうけてモバイルワークをさらに強化、出社率は現在は1割強に下がっているとのことです。
○「むしろコミュニケーションは深まった」

世間では「テレワークにすると社員同士が顔を合わせないのでコミュニケーションが希薄になる」とのイメージがありますが、同社のある部署では毎週の一定時間を決めてウエブ会議システムをつなぎっぱなしにして、自由に議論したり雑談して職場の意思疎通を密にする工夫をしているそうです。

逆に言えば、通常の場合オフィスにいるだけでコミュニケーションがとれているとは限らないわけで、テレワークの下でお互いが能動的に情報交換や議論をするようになり、むしろ以前よりコミュニケーションは深まったと同社では分析しています。

テレワークにすることによって、以前なら必要だった会議室の予約や、会議室の空き状況に合わせて会議の日程を再調整するなどの手間が不要になりますし、契約書の電子捺印や名刺の電子管理など業務の効率化が進みました。

また、こんな社員の例もあるそうです。ある女性社員は小さい子どもがいるため育児時短勤務をしていましたが、新制度によって在宅勤務が可能となり、しかも勤務時間がこま切れでもOKとなったおかげで、時短勤務ではなくフルタイム勤務に戻れたというのです。このように社員の実情にあった柔軟な勤務体系を取ることも可能となり、社員のモチベーションも上がったとのことです。

同社では以前から在宅勤務を導入していたことは前述のとおりですが、その効果がヒット商品を生む実績をすでに上げていました。同社のシリアル食品「フルグラ」を担当していたある女性社員は週1日の在宅勤務をしていましたが、その日は近所のスーパーで消費者の買い物と行動を観察して回っていました。その結果、フルグラとヨーグルトを組み合わせるという食べ方を提案するなどして、フルグラの大ヒットにつながったのです。
○意外に大きいプラス効果~従業員の健康への配慮が信頼感高める

こうしてみると実はテレワークは、業務の効率化や社員のモチベーション向上などを通じて生産性も向上するなど、プラスの側面が意外に大きいことがわかります。こうした点はもっと注目されていいのではないでしょうか。

実際、前述の東京商工会議所の調査では、テレワークを実施したことによる効果は、「働き方改革が進んだ」(46.2%)、「業務プロセスの見直しができた」(39.7%)、「コスト削減」(22.7%)などとなっており、「定型的業務の生産性が上がった」との答えも14.3%ありました。

こんな調査結果もあります。日本生産性本部が昨年7月に実施した調査によると、「自分の勤め先企業が従業員の健康に十分配慮している」と思う人の87.5%が「勤め先を信頼している」「まずまず信頼している」と答え、逆に「配慮していると思わない」と考える人のうち「勤め先を信頼している」「まずまず信頼している」と答えた人の割合はわずか18.1%でした。

これは、従業員の健康への配慮が勤め先への信頼度に最も大きな影響を与える要素となっていることを示しています。日本生産性本部は「テレワークをはじめとする柔軟勤務は、健康配慮へのメッセージを目に見える形で伝える効果がる」と指摘しています。経営者や管理職の人たちは、従業員の感染リスク軽減とともに、経営への信頼度を高めるうえでも、従業員もワークライフバランスを実現するためにも、もっと本腰を入れてテレワークの導入・拡大に取り組むことが求められています。企業の社会的貢献の観点からもテレワーク拡大の意義は大きいものがあるのです。

そして日本経済全体では、テレワーク拡大が業務のIT化、さまざまな場面でのオンライン化の進展、それらに伴う新たなサービスや技術などデジタル化の加速などの効果をもたらします。これはアフターコロナの時代に向けて中長期的に日本経済の構造変化と競争力強化につながるものです。メディアでも日々の感染状況だけでなく、こうしたテレワークの持つ可能性について、もっと腰を据えた報道が増えることに期待したいところです。

岡田晃 1971年慶應義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞入社。記者、編集委員を経て、1991年にテレビ東京に異動。経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任。「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など数多くの経済番組のコメンテーターやプロデューサーをつとめた。2006年テレビ東京を退職、大阪経済大学客員教授に就任。現在は同大学で教鞭をとりながら経済評論家として活動中。 この著者の記事一覧はこちら

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