旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

富士通のSAPマイグレーション市場戦略を大西常務に聞く

2021年01月14日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●富士通の強みをBLUEFIELDアプローチで活かす
SAP ERPの保守切れ、および「SAP S/4 HANA」へのマイグレーションは企業にとって大きな課題だ。SAPは当初2025年だった保守期限を2年延長することを発表したが、企業の基幹システムの移行が大きなプロジェクトとなることに変わりはない。

SAPビジネスを強化する富士通では、このマイグレーション市場に向けて独シュナイダー・ノイライター・アンド・パートナー(SNP)と提携、SNPが提供するマイグレーション技術を利用した移行支援を行う。

Infosys日本代表を務めた後、2019年より富士通で執行役員常務を務める大西俊介氏、およびSNPの日本法人代表取締役社長の村出洋一氏、同CTO 横山公一氏にSAPマイグレーション市場について、戦略を聞いた。
○富士通におけるSAPビジネスについて教えてください。

大西氏:SAPビジネスは、それまで製造業のグループが担当していましたが、グローバル起点で考えローカルに導入するというアプローチに変えていくために、2020年4月より日本をベースとした業種の組織という位置づけにしています。

狙いとしては、日本ローカルではなく、日系企業のお客様のグローバル展開という観点でDXを含めてサービスを提供すること、それから富士通グローバルビジネスの核となるデリバリーファンクションを整備・成長させること、この2つです。

○2020年1月に立ち上げたDXビジネスを専門とするRidgelinezとの関係は?

大西氏:SI企業の中のコンサルティング会社のようなものではなく、お互い独立して展開しています。私が統括する製造業のチームの営業は上流工程をRidgelinezにすべて任せていませんし、Ridgelinez側も富士通のために存在するのではありません。重なるところは一緒にやるという関係を保っています。
○SAPマイグレーションに対する戦略や富士通の強みについて教えてください。

大西氏:富士通のSAPビジネスは、日本では現在4位くらいです。7~8年前はあまりSAPビジネスのイメージを持たれていなかったと思いますが、2019年に入社して実感したのは、富士通のシステムインテグレーション能力はSAPビジネスにおいて重要だということです。特に大型プロジェクトは業務アプリケーションだけでなく、基盤やインフラなどの共通技術がしっかりできていないとうまくいきません。

富士通はハードウェアメーカーからスタートして全体をやってきたという経緯があり、ミドルウェアなど共通アプリケーション部分に秀でたエンジニアが多数います。業務アプリケーションとは違う領域で、この部分の人材育成は富士通のような大手ではないとできません。SAPではこのミドルウェアコンポーネントを”SAP Basis”(「SAP NetWeaver Application Server」)としており、SAP Basisを扱うことができるエンジニア集団は強みです。そのため、マイグレーションビジネスではこの強みを発揮できると見ています。

マイグレーションと言ってもいくつかの種類があります。新規で作り直す”Greenfield”は戦略から落としてビジネスモデルのあるべき姿を考えて進めていくことになるので、コンサル会社が強いでしょう。違うところでエッジを効かせて戦うとなると、やはり既存環境のデータやカスタマイズを移行する”Brownfield”だと見ています。

そして、SNPのデータ移行ソリューション「SNP Transformation Backbone(SNP T-Bone)」のことを知り、提携に至りました。SNPのソリューションはSAP Basisだけではなく、業務モジュールを含めて扱うことが必要です。T-Boneを使った「BLUEFIELD」アプローチでは、単純にマイグレーションして過去の負債をすべて継承するのではなく、取捨選択しながら進めるというハイブリッドアプローチであり、われわれの立ち位置にぴったりだと感じました。
○SNPとの提携についてもう少し詳しく教えてください。

大西氏:SNPはSAPとSAP S/4HANA Selective Data Transition Engagementを締結しています。これが何を意味するのかというと、SAPのコアのテーブルを扱うことができるというお墨付きをもらったパートナーで、SAPを入れて世界で5社しかありません。すべてドイツの会社で、日本企業はありません。

SNPは設立して26年、1500人の従業員を擁していますが、大企業ではありません。グローバルでの展開でパートナーを必要としていたということもあります。

横山氏:SNPはSelective Data Transition契約をしている5社の中でも、ツールが充実しています。全部で26種のツールがあり、SAPのコンバージョンのあらゆるシチュエーションに対応できます。これを1つのパッケージにまとめ「CrystalBridge」として提供しています。

以前から個人的に、ビジネスコンサル分野は最もシステム化が遅れていると感じていました。普通の業務をするのにビジネスコンサルは必要ありません。CrystalBridgeはシステム化されており、SAPのベストプラクティスに準拠するソフトウェアも含まれています。

富士通さんとの提携でもう1つポイントになると思っているのが、クラウドです。富士通さんはMicrosoft Azureパートナー認定の最高レベル「Azure Expert MSP」を取得しており、「2019 Microsoft Partner for Year Awards」も受賞しています。SNPも「Cloud Move for Azure」としてAzureに自動ディプロイするシステムを共同で開発しています。

このように、富士通さんと開発の方向性が合うと感じています。

**参考
Microsoft Azureパートナー認定の最高レベル「Azure Expert MSP」を取得し、2019年国内No.1ベンダーに贈られるマイクロソフトの「Country Partner of the Year Awards」を受賞マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー 2020 受賞
○SAPの保守期限が2027年に延長されました。この影響をどう見ていますか?

大西氏:2027年まで延長が発表されてすぐに新型コロナとなりました。リモートになる前は、感覚として”Brownfield”とか”リフティング”と言われる単純マイグレーションが増えたと思った時期がありました。それが、リモートになり単純なマイグレーションよりも、ちゃんと考えて「Greenfield」で、あるいはBLUEFIELDで進めようかというところが増えているように思います。

横山氏:日本ではSAPの導入は2000社と言われており、そのうち80%以上、つまり1600社以上が「S/4 HANA」に移行するといわれています。試算してみたところ、パートナー全社が頑張っても2025年までに1000社しかできません。S/4 HANAに移行したくても、残りの600社は移行できないということになります。

このようにSAPマイグレーションの市場は大きく、われわれは今後も自動コンバージョンのツールなどを提供する予定です。

●グローバル戦略
○富士通はグローバル展開も強化するとのことですが、市場の見通しや戦略について教えてください。

大西氏:グローバルと一口に言っても各地域により強い業種が異なります。アメリカやドイツは製造業が多いですが、オーストラリアは製造業はほとんどありません。グローバル展開において、業種に依存しない強みの領域を持つことが重要だと考えています。

現在、富士通のSAPへのパートナー貢献度等のランキングは、2019年度17位です。この順位を上げていくために、幅広い業種に対して戦略立案、コンサル、インプリと広く手掛ける戦い方よりも、SAPのビジネスにおける富士通の強みをしっかり確立していきたいと考えています。

SAPビジネスという分野での富士通の認知度を考えると、SNPさんと提携して開発したソリューションは一つの入り口になると考えています。
○今後のロードマップについてお聞かせください。

大西氏:BLUEFIELDマイグレーションビジネスについては、2022年度末に累計100億円を目標にしています。このうち3~4割が日本で、それ以外はグローバルにしていきたいと思っています。

デリバリースタイルも変えていきたいと考えています。これは、富士通の変革の1つのテーマで、SAPビジネスに限定されないのですが、属人化を排除して業種のチームによるサイロ化も無くして、なるべく中央化できるものは中央化していく。標準化できるものについては標準化して、グローバルデリバリーの拠点に持っていく計画です。

現在グローバルデリバリーセンター(GDC)は1万4000人規模となっており、マイグレーションは要件定義が少ないのである程度のファクトリー化が可能です。現在、インドとポルトガルにコンバージョンセンターを設立して、実作業はここで行う体制に持っていきます。コンバージョンセンターは1月に立ち上げる予定です。

SNPさんとの提携については、スピード感を持って進めています。パートナー契約の後で、すぐに案件を作成してクローズして実績を作ろうという動きがはじまっています。

これまでは日本があってグローバルがあるという感じでしたが、今後は最初からグローバルで進めたいと思っています。マーケティングにもグローバルのメンバーが入っており、案件ベースで具体的に進めるという活動に入っています。

●ビジネス成功のポイント
○SAPビジネス成功のポイントはどこにあると考えますか?

大西氏:SAPは日本で長く使われているため、ユーザー企業にもそれなりにSAPの知識がある人がいらっしゃいます。色々な経験値が蓄積されてきているので、われわれベンダーもしっかりした支援をしなければならない。これはいいことだと思います。

その先にあるDX、さらにはDXの先にある世界に行くためには、S/4の基盤が土台となります。テーブルの数が減りシンプルになったインフラやビジネス基盤を入れながら、その先の見える化や新しいビジネスなどにつなげていくことができるかが重要だと思います。ここをパートナー企業、お客様と一緒にできるかどうかが成功の1つのポイントになるでしょう。

横山氏:DXはERPの外にあると思われていますが、SAPはERPの中にDXに必要な技術を取り込んでいます。2020年の最新バージョンではAI、プレディクティブ(予測)などがたくさん盛り込まれています。それだけでなく、外とのインターフェイスもたくさん用意されています。逆に言えば、S/4に移行するだけでDXの一部は補完できます。ERPの中にDXが入っているので、中から広がっていくイメージです。
○SNPが富士通との提携を成功させるために重要なことは何だと考えていますか?

横山氏:SNPの強みは技術力です。技術力というのは、模倣が可能なのでそれを回避するために常に新し技術を出しています。2021年のロードマップ では20以上の新機能を組み込むことになっており、システムでシステムを構築する方向に進めていきます。

他社と差別化できるような製品をわれわれが開発し、これを富士通さんに使っていただくことで富士通さんの差別化につなげることができると考えています。

村出氏:数をこなすことも重要です。そのためには、短いプロジェクト期間を複数回して、なるべく多くのお客様をS/4にマイグレーションしていただく。

SNPのツールは単純なマイグレーションツールではありません。複数のシステムを比較して、いいものを取り出してS/4に持っていくのですが、富士通さんの技術力に加えて、どの業務を持っていくのかの選択力が必要です。そこは富士通さんのアプリケーションの力になると思います。

そこをしっかり行い、さらにサイクルを短くする。これまでのSIerのやり方ではなく、もっと短サイクルで、テスト期間も凝縮して、システムでそれを回していく。そこに持っていくのが理想です。われわれはツールでしっかりバックアップしたいと思います。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連してるっぽい地図

あなたにおすすめの記事

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

マピオンニュース ページ上部へ戻る