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究極の謎! NASAが宇宙の始まりや生命の起源を調べる宇宙望遠鏡を開発へ

2021年01月12日13時26分 / 提供:マイナビニュース

米国航空宇宙局(NASA)・ジェット推進研究所(JPL)は2021年1月5日、開発中の宇宙望遠鏡「SPHEREx」について、本格的な設計、製造段階に入ったと発表した。

打ち上げは2024年6月以降の予定で、近赤外光を使って全天を観測し、宇宙が誕生した直後の急速な膨張の謎や、銀河形成の謎、生まれたばかりの惑星系に水や有機分子がどのように含まれているのか、そして生命はどのようにして誕生したのかなどについて解明することを目指す。
SPHERExとは?

SPHERExはNASA/JPLが開発している宇宙望遠鏡で、小型自動車ほどの大きさをもつ。人間の目で見える可視光のほか、それよりも数倍長い(周波数が低い)波長の近赤外光を検出できる装置をもち、分光法と呼ばれる技術を使い、プリズムが太陽光を7色に分解するのと同じように、天体をさまざまな波長や色に分解して観測することができる。

天体を構成する化学元素の1つひとつは、それぞれ特定の光の波長を吸収したり、放射したりするため、それを分解して分析することで、その天体がどんな物質で作られているかを明らかにすることができる。また、地球からの物体の距離を推定するのにも利用できる。

NASAにとって、近赤外の全天分光マップを作成するミッションは初めてとなる。また、とくにSPHERExは、近赤外光を102色に分けて分光観測することができる優れた能力をもつ。SPHERExのプロジェクト・マネージャーを務める、JPLのAllen Farrington氏は、「これまでは白黒の画像しかありませんでしたが、SPHERExでは豊富なカラー画像が取得できます。これはたとえるなら、カンザスからオズの国へ行く、『オズの魔法使い』のような壮大な話です」と語る。

この特徴を活かし、SPHERExは2年間のミッションの間に全天を4回観測。3億個以上の銀河と、銀河系(天の川銀河)にある1億個以上の星、星雲など、さまざまな天体のデータベースを作成。宇宙が誕生した直後に起きた急速な膨張や、若い惑星系の組成、銀河の歴史などの研究に役立てられる。SPHERExという名前が、Spectro-Photometer for the History of the Universe, Epoch of Reionization and Ices Explorer(宇宙の歴史を調べる分光測光器・宇宙の再電離と氷の探査機)から取られていることにも、それが表れている。

また、その宇宙の地図は、NASAが開発中のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡などが観測する、ターゲット天体の選定にも用いられる。

SPHERExは、2019年2月にNASAの計画として選定され、予備設計を開始。そして今回、その予備設計が承認されたことで、「フェイズC」と呼ばれる段階に入り、最終的な詳細設計や、ハードウェアやソフトウェアの構築に向けた作業が始まることになる。

開発はNASA/JPLが主導し、また米国の10の大学や研究機関、韓国天文研究院(KASI)も参画している。製造は米国の航空・宇宙メーカーのボール・エアロスペースが担当する。打ち上げ時の質量は178kgで、望遠鏡を低温に保つするための、大きな傘のような太陽シールドを特徴としている。開発費は2億4200万ドル(打ち上げ費用を除く)となっている。

打ち上げは2024年6月から2025年4月までの間に行われる予定で、ミッション期間は2年が計画されている。

SPHERExが目指す科学的成果

SPHERExの科学チームは、大きく3つの科学的目標を定めている。

1つ目は、「インフレーション」の証拠を見つけることである。宇宙はいまから138億年前、極小の状態で誕生し、そこからごくごく短時間の間に急膨張するインフレーションが起き、そしてビッグ・バンが起き、さらに膨張して現在の宇宙へと形作られていったと考えられている。

このような急膨張は、宇宙の物質の分布に影響を与えた可能性が高く、その痕跡はいまも残っていると考えられている。そこで、SPHERExを用いて宇宙にある数十億個の銀河の相対的な位置を記した地図を作り、インフレーションによって引き起こされた統計的なパターンを探し出すことで、それにより膨張の原因となった現象の理解に役立つと期待されている。

2つ目は、宇宙最初の銀河から、現在の銀河に至るまでの、銀河形成の歴史の解明である。SPHERExは、この宇宙に存在するすべての銀河が作り出す淡い光芒やその変化を捉えることができ、その地図を作ることで、光が時間の経過とともにどのように変化していくのかを調べることができ、そして最初の銀河がどのようにして星々を形成したのかも明らかにすることができるという。

そして3つ目は、銀河系で新しく形成された星の周りにある水の氷や、凍った有機分子(地球の生命の源)を探すことである。氷は、銀河系全体の冷たくて密度の高いガス雲の中の塵に付着しており、このガス雲の中で星の赤ちゃんが形成され、その星のまわりに円盤状に残った物質から惑星が形成されていくと考えられている。この円盤の中の氷は、水やその他の有機分子を含んだ惑星の種となる可能性があり、実際に地球の海の水は、こうした氷が起源である可能性が高いと考えられている。

科学者たちは、SPHERExによる観測で、生まれたばかりの惑星系に水(氷)がどのくらい含まれているのかを調べることができるとしており、さらにその成果は、太陽系のような惑星系や、地球のような水や生命がある惑星が、この宇宙全体にどれくらい存在しているのかを理解することにも役立つとしている。

○参考文献

・A New NASA Space Telescope, SPHEREx, Is Moving Ahead | NASA
・Missions | SPHEREx
・SPHEREx Official Website
・NASA Selects New Mission to Explore Origins of Universe | NASA

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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