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“埼玉の奇祭”はなぜ生まれたのか…『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』テレ玉社長が語る29年の歴史と舞台裏

2020年12月30日07時00分 / 提供:マイナビニュース

●財界からの持ち込み企画でスタート
今年10月、ある音楽番組の開催延期を伝えるニュースに「そんな…」「マジかよ…」「悲報」とSNSでショックの声が相次いだ。その番組とは、テレ玉(テレビ埼玉)が、1992年から29回にわたって放送してきた『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』。その名の通り、埼玉県の財界人・政界人が一堂に会し、自慢の歌声を披露するというお正月恒例の特番だ。

年々磨きがかかる出場者のユニークなパフォーマンスと、お堅いイメージの政財界人とのギャップが大きな話題を集め、今や県を越えて“埼玉の奇祭”と呼ばれるように。Twitterでは世界トレンドに入る盛り上がりを見せている。

残念ながら、記念すべき30回大会となる2021年の放送は、新型コロナウイルスの影響で翌年に延期となったが、これまでの歴史や舞台裏を、テレ玉の川原泰博社長にたっぷりと聞いた――。

○■「みんなが一堂に会して歌謡祭をやれないか」

この番組はテレ玉が企画したものではなく、埼玉の財界側の発案だったそう。「経営者協会や商工会議所などの団体があって、財界の人たちは皆さん顔見知りなんですよね。その中で、当時はカラオケがブームというのもあったかもしれないですが、そこに政界、つまり知事や自治体にも話をされて、普段の仕事から離れて、みんなが一堂に会して歌謡祭をやれないかというお話を頂いたんです」(川原社長、以下同)と、経営者たちの趣味が、当時開局13年という若いテレビ局に持ち込まれる形でスタートした。

番組タイトルにある通り「チャリティ」も大きな目的として開催されており、収録当日の来場者や出場者からの募金に加え、テレ玉も参加する実行委員会が拠出して、毎年「埼玉県文化振興基金」に100万円を寄付。これまでの累計で、2,900万円に達した。今回はこれに加え、埼玉県の「新型コロナウイルス感染症対策推進基金」にも100万円を拠出し、合計200万円が寄付される。

現在は元日の恒例番組となっているが、第1回は2月1日の放送。会場はテレ玉のスタジオで、「最初は本当に手作りだったんです。放送の尺も短いし、参加者の人数も政界6人、財界7人の計13人で今より少なく(20年は17人)、一般観覧もしていませんでした」と、現在に比べると小規模な収録だった。

これが好評で、翌年からは1月1日の放送に“昇格”。会場も、第3回(94年)からスタジオを飛び出し、浦和市民会館(現在の市民会館うらわ)、埼玉会館大ホール、くすのきホール(所沢)、熊谷会館、春日部市民文化会館川口リリア、大宮市民会館(現在の市民会館おおみや)と県内を回り、第10回(01年)から客席数2,500の大宮ソニックシティ大ホールに固定されるようになった。
○■森光子・島倉千代子・小林旭…大物がゲストに

開催にあたっては実行委員会で協議し、毎年春頃から日程や出場者、楽曲などを調整。財界側は番組スポンサーとなって舞台に立ち、政界側は知事、県議会議長のほか、市町村の首長はエリアが偏らないように選定されている。近年は、知事が大トリを務めるのが決まりだ。出場者数が最も多かったのは、04年と08年の24組(24人)で、放送時間は3時間にも及んだ。

毎年、プロの歌手などがゲスト出演し、冠二郎、貴華しおり、香田晋、キム・ヨンジャ、市川由紀乃、島津亜矢、新沼謙治、島倉千代子、八代亜紀、森光子、美川憲一、デヴィ夫人、小林旭、長山藍子、堀内孝雄、水森かおり、松坂慶子、熊谷真実、細川たかし、千昌夫、森昌子、鳥羽一郎、山川豊など、錚々たる面々が埼玉政財界人たちの歌声を見守ってきた。

司会者は、初代が池本弘三&吉澤直美コンビ。池本は第12回まで連続で担当し、その後男性司会者は第13回~15回が佐貫洋一、第16回~22回が押坂忍、第23回から現在まで『NHK紅白歌合戦』の総合司会も経験した堀尾正明が務めている。

●地元の文化財アピールで白塗りの町長が歌唱

企業としては、番組でのCM放送に加え、ステージパフォーマンス、さらに堀尾正明とのトークで、これ以上ないPRの機会として活用。「社員の方はダンスやコーラス、小道具の製作などを準備されてくるので、会社が一体となってくださっているようです」と、組織力の向上にも役立っている。

また、「チャリティ歌謡祭を見てこの会社に入りたいと思いました」と志望してくる学生もいるそうで、リクルーティングとしての役割も果たしているそうだ。

パフォーマンスの工夫は、政界側も力を入れている。ゆるキャラの稼働はもちろん、地元高校のチアリーディング部を動員するなど、財界側に負けない演出で会場を盛り上げている。

大野元裕知事は、昨年の選挙期間中にTwitterで「#埼玉政財界人チャリティ歌謡祭」のハッシュタグを付けるなど、もちろん首長もPRとして活用。しかし、第29回(20年)に出場した小鹿野町の町長は、地元の文化財である「小鹿野歌舞伎」をアピールするため、自ら白塗りで歌唱したことから、「誰が歌っているのか分からないくらいになってしまって(笑)。でも、それくらい力を入れてくれているんです」という事例もあった。

このように、それぞれの出場者が工夫を凝らしてパフォーマンスを考えてくれることから、全体として実にバラエティに富んだイベントになっている。
○■大部屋の控室で“戦友”のような関係に

さらに、全出場者が大部屋の控室で待機し、リハーサルを含めて朝から晩まで一緒にいることになるため、政財界のトップ同士のコミュニケーションの場としても機能。「出番が来た人に、他の出場者の皆さんが『いってらっしゃい!』と拍手でお見送りして、出番が終わって戻ってくると『おかえりなさい!』と迎えてくれるんです。みんなが同じ緊張感を持って、それをクリアしていくので、結束力が生まれますよね」と、まるで“戦友”のような関係になるという。

もしかすると、ここで出会った企業同士のコラボレーションで、新たなビジネスチャンスにつながった事例があるのかもしれない。

応援席は、1出場団体に100席ずつ用意しているため、遠方からの参加となると、貸し切りバスで会場入り。客席ではおそろいのユニフォームに身を包み、企業カラーのペンライトを掲げるなど、その様子はさながら甲子園のアルプススタンドだ。また、ジャニーズアイドルのライブのように、出場者の顔写真を貼り付けたうちわを持って声援を送る姿も見られる。

出場企業や自治体側としても年に一度の一大イベントだが、テレ玉側としても「いろんな部署が関わって、相当の数の社員が作り上げる、全社をあげて取り組む番組です」という位置づけ。定期的に放送する番組の中では、最も大きな規模だそうだ。
○■かつては審査員が存在も…「大変そうでした(笑)」

ソニックシティ大ホールという、プロのアーティストがコンサートでも使用する会場だけに、日頃部下を束ねる企業や自治体のトップといえども、特に初出場者は緊張でうまく歌えないことがあるという。そんな人たちを支えるのが、第1回から全ての回の演奏で指揮を務めるバンドマスター・岡宏さん率いるクリアトーンズ・オーケストラだ。

「歌が多少ずれてしまっても、オーケストラの皆さんが熟練なので、演奏が歌に合わせてくれるんです。回を重ねて臨機応変に対応していただけるようになっているので、とても信頼を寄せています」と、欠かせない存在になっている。

そして、優勝者を決めることをしないのが、この歌謡祭の特色。かつては審査員を設け、「ほのぼの賞」などパフォーマンスを表彰することもあったそうだが、「何とか良いところを見つけて、お世辞にならないように褒めなきゃいけないから、審査員の皆さんは大変そうでした(笑)」と、特有の気苦労があったようだ。

●政財界の重鎮集結で“奇祭”とイジられることには…

そんな『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』だが、ここ4~5年の間に“埼玉の奇祭”と呼ばれ、SNSを中心に大きく盛り上がるようになってきた。1月1日の放送中には、毎年Twitterの世界トレンドに入っており、「他県の方が、わざわざこの番組を見たいがために、県内のホテルに泊まっているという話も聞きますし、Twitterではアラビア語で書いた感想も見られます(笑)」と県外はおろか、グローバルに反響が寄せられている。

このきっかけを聞いてみると、「それが分からないんだよなあ」と困惑の様子。映画『翔んで埼玉』で埼玉が注目を集めたのは2019年だが、それ以前から注目を集めており、「考えられるのは、出場者の方のパフォーマンスがどんどんユニークになっているというのがあるかもしれませんね。昔は皆さん、直立不動で演歌を歌ってたんですけど、だんだんポップスが増えてきて、関係者がダンスを披露するようになっているので、外国の人が見ても楽しんでもらえるのは、ビジュアルの面もあると思います」と推測する。

しかし、政財界の重鎮が集まるイベントを“奇祭”とイジられることについては、どのように受け止めているのか。

恐る恐る聞いてみると、「『翔んで埼玉』でイジられてもあんまりムッとしない、埼玉人特有の逆手に取って自慢のネタにしちゃう気質がありますから(笑)」と、前向きに捉えているようだ。
○■苦渋の延期も…全出場者145組の名場面特番

こうして、県を越えた多くの人が楽しみにしている『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』だが、2021年の放送は新型コロナウルスの影響のため、残念ながら延期となってしまった。

「準備がそれなりにかかるので、夏頃には延期を決めました。無観客など、いろんな案を考えたのですが、いずれにしても最悪の場合は中止にせざるを得なくなってしまう。それならば、今回は30回の記念大会だから、時間を置いて改めて開催することにしたんです」と決断。

その代わり、「29年もやってきたので、こういうときじゃないと振り返る番組はできないだろうと切り替えました」と、これまでの名場面を振り返る『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭 29年間の出演者すべて見せます!スペシャル』を、1月1日(19:00~21:30)に放送する。

この番組ではタイトルの通り、今までの全出場者145組をジャンルに分けて紹介。大野知事、清水勇人さいたま市長、高橋福八埼玉グランドホテル会長、福岡聡埼玉りそな銀行社長ら、県内政財界15人からの新春メッセージも登場する。

ゲストには、全回に出演している株式会社清水園の清水志摩子社長、親子三代にわたって29回出演という株式会社サイサンの川本武彦社長、そしてバンドマスターの岡宏さんを迎え、当時の思い出やエピソードを聞いていく。収録は、清水園で行われた。

収録を振り返り、「やっぱり29年の歴史はすごいですね。亡くなられた出場者もいらっしゃいますし、若かりし頃の精悍(せいかん)な姿の方もいらっしゃいますし、この映像を見ると、本当に今の埼玉の礎を築くのに関わった方たちに出ていただいたんだなと思いました」と、あまりに壮観なラインナップに驚いたそうだ。

そして、次の歴史を作るべく、コロナが収束するのを願いたいところ。延期後の収録を想定している11月末は、大宮ソニックシティ(大ホール)が改修工事に入っているため、さいたま市文化センターでの開催を予定しており、「いつもと違う会場なので、また新たな形で2022年の元日に30回の記念大会ができれば」と意欲を示している。

●川原泰博青山学院大学卒業後、1979年にテレビ埼玉入社。主に営業畑を歩み、11年取締役、18年専務、19年より社長。

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