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欧州の小型ロケット「ヴェガ」17号機、打ち上げ失敗の原因は「配線ミス」

2020年12月24日11時37分 / 提供:マイナビニュース

欧州のロケット会社「アリアンスペース」は2020年12月18日、先月17日に起きた小型ロケット「ヴェガ」17号機(VV17)の打ち上げ失敗事故について、ロケットの第4段にあたる「AVUM」の配線ミスが原因だったと明らかにした。

これを受け、すでに製造済みの機体については追加の検査と試験を行うとともに、今後製造される機体についても製造工程の改善を実施。打ち上げ再開は2021年の第1四半期を目指すという。

ヴェガ17号機の打ち上げ失敗の原因は?

ヴェガ17号機は日本時間11月17日10時52分(現地時間16日22時52分)、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターから打ち上げられた。第1段、第2段、そして第3段の燃焼は正常だったものの、離昇から約8分後、第4段のAVUMのエンジン着火後に飛行経路を逸脱。軌道投入に失敗した。

ヴェガの機体は、第3段機体の落下予定点に近い無人区域に落下した。被害などは報告されていない。

ロケットには、スペイン政府・産業技術開発センター(CDTI)の地球観測衛星「SEOSat-Ingenio」と、フランス国立宇宙研究センター(CNES)の地球観測衛星「タラニス(TARANIS)」が搭載されていたが、ロケットとともに失われることになった。

ヴェガは昨年7月にも15号機が打ち上げに失敗。今年9月に16号機の打ち上げ成功をもって飛行を再開したばかりで、1年半の間に2度打ち上げに失敗したことになる。

ヴェガの打ち上げサービスを提供しているアリアンスペースは、ヴェガ打ち上げシステム開発機関である欧州宇宙機関(ESA)とともに、事故直後にすぐさま原因究明および是正措置策定のための独立調査委員会を設立。そして委員会による約1か月にわたる調査の結果、事故原因はAVUMの推力ベクトル制御システム(TVC:Thrust Vector Control)の、電気機械系アクチュエーターの組み立て時における配線の接続ミスだったと結論付けられた。

なお、失敗直後に行われた初期のデータ解析の結果でも、AVUMのTVCの組み立て時における配線ミスが原因である可能性が指摘されており、今回の結論はそれを裏付けるものとなった。また、あくまで人為的なミスであり、機体の設計不良によるものではないとしている。

AVUMはヴェガの最終段にあたる第4段機体のことで、Attitude Vernier Upper Module(姿勢制御用のヴァーニア上段モジュール)の頭文字から付けられている。ヴェガの1~3段目は固体ロケットだが、AVUMは液体ロケットで、ロケットを最終的に目標の軌道速度まで加速し、衛星を正確な軌道に投入を行うことを目的としている。また、ロケットの2段目以降の飛行中における姿勢制御も担っている。

委員会の調査報告によると、失敗に至ったシナリオは次のとおりだとしている。

AVUMの組み立て段階において電気系統の配線ミスがあった(具体的には、2つの推力方向制御アクチュエーターのケーブルが、互い違いに接続されてしまった)。
機体の組み立てから品質の最終認証までの管理・試験の各段階で、配線ミスが検出されることがないまま打ち上げに至った。AVUMのエンジン着火後、姿勢制御信号を受けた機体は、配線ミスによって本来動かしたい方向とは逆方向に姿勢制御を行ったために機体姿勢を喪失、ついで軌道を逸脱することとなった。
機体の組み立てから最終認証までを担当した各施設で、統合的な要求事項・管理手順の詳細に不備があり、配線ミスの問題を見過ごす結果となった。

打ち上げ再開は2021年の第1四半期を目指す

ヴェガの製造は、イタリアの航空宇宙メーカーのアヴィオ(Avio)が主契約者として担っており、欧州の各社で製造された部品を統合して組み立て、試験を行っている。

AVUMに関しても、機体や電子機器は欧州のエアバスなど他社が製造を担当し、エンジンはウクライナのユージュノエが設計し、ユージュマシュが製造を担当しているが、全体の統合や試験はアヴィオが担当している。

独立調査委員会は、ヴェガの安全性の確保、早期の飛行再開、長期的な信頼性の向上を目指して、即時的、および長期的な包括的是正案を提出した。これによると、まずすでに機体の一部または全部が完成している2機のヴェガについては、追加の検査と試験を実施。また今後、イタリアのヴェガ組み立てラインおよびフランス領ギアナの最終認証段階での製造、統合、認証プロセスにおける改善を行うことが勧告されている。

委員会の報告書を踏まえ、ESAとアリアンスペースはタスクフォースを設立。ヴェガの製造主契約者であるアヴィオは、ESAとアリアンスペースの監督の下で是正措置を実施することを決定したとしている。

ヴェガ18号機による打ち上げ再開の時期は、2021年の第1四半期を目指すという。

アリアンスペースのステファン・イズラエルCEOは、「独立調査委員会の努力により、失敗から1か月足らずの間に、ヴェガ17号機の失敗の原因を特定することができました。委員会が提示した結論が明確になったことで、ヴェガの主契約者であるアヴィオが、委員会からの勧告を直ちに実施する道が開かれました」と述べている。

また、ヴェガが相次いで失敗したことによる信頼性や衛星打ち上げ市場への影響については、「この是正勧告を実施することで、ヴェガの品質と市場での競争力に完全な自信を持って、2021年第1四半期末までに飛行を再開することができるでしょう」とコメントしている。

また、ESAの宇宙輸送担当ディレクターを務めるDaniel Neuenschwander氏は、「過去数週間、独立調査委員会のメンバーは、元請け業者であるアヴィオの支援を得て、並々ならぬ仕事をしてくれました。委員会が作成した一連の勧告が実行されれば、ヴェガの堅牢さと信頼性が向上し、さらには迅速な飛行再開が可能となり、そして欧州の宇宙へのアクセスの自律性の確保に貢献することになります」と述べている。

○参考文献

・Loss of Vega Flight VV17: Independent Enquiry Commission announces conclusions - Arianespace
・ESA - Loss of Vega flight VV17: Independent Enquiry Commission announces conclusions
・Results of the VV17 failure investigation by the independent inquiry commission. VV18 Vega return-to-flight expected by the end of Q1 2021 | Avio
・Vega Launcher | Avio
・Loss of Vega Flight VV17: Identification of source of anomaly and establishment of Inquiry Commission - Arianespace

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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