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森口将之のカーデザイン解体新書 第40回 電動化の影響? カーデザインのトレンドは「シームレス」へ

2020年12月29日11時00分 / 提供:マイナビニュース

電動化の流れが加速した2020年の自動車業界。カーデザインの分野にも今、変革が起こりつつある。「2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の選考委員でもある筆者が、部門賞のひとつ「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」の自身の配点と選考結果を踏まえながら解説していきたい。

○COTY初のデザイン賞が誕生

12月7日に発表となった2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)。「今年のクルマ」に選ばれたのはスバル「レヴォーグ」だった。

今回はCOTYの部門賞が変わった。これまでは「イノベーション」「エモーショナル」「スモールモビリティ」の3部門だったが、今年度は「デザイン(正式名称は2020-2021 デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー、以下同)」「テクノロジー」「パフォーマンス」「K CAR」の4部門になった。

スモールモビリティはこれまでも事実上、軽自動車のための賞だったので変化はないが、それ以外はイノベーションやエモーショナルといった概念的な枠組みから、デザイン、技術、走りという具体的な項目になったと解釈している。

これまでのイノベーション部門賞は、どうしても技術的な話題に偏りがちだった。エモーショナル部門賞もまた、走りの楽しさという方向で選考されることが多く、デザインを評価する部門はなかった。つまり今回、COTYで初めてカーデザインの賞が生まれたのだ。デザイン関連の記事を書き続けてきた選考委員としては、嬉しい改革だった。

部門賞の配点方法はこれまでと同じで、10ベストカーだけでなく、ノミネートした全車の中から最大3台に持ち点の10点を投じる。1台に10点をあげてもいいし、3台に4/3/3点でもいい。こうしたルールに則り、筆者はホンダの電気自動車(EV)「ホンダe」に5点、シトロエン「ベルランゴ」に3点、ランドローバー「ディフェンダー」に2点を入れた。

○トレンドはエモーショナルからシームレスへ

3台に共通しているのは、シームレスな造形であることだ。無駄なアクセントがなく、シンプルかつスムーズなラインで美しさを表現している。

少し前まで、カーデザインのトレンドはエモーショナルだった。躍動感を表現するために複雑な線や面を多用する傾向が目立った。正直にいって、このような演出には食傷気味であり、そもそも付け足しのような技法に頼るのはすばらしいデザインではないと筆者は考えていた。

作り手も、そんなトレンドを見直したいと考えていたのだろう、近年は過剰な演出に頼らず、シンプルな線と面で魅力を打ち出す車種が増えつつある。点を投じた3台もまた、この方向性に沿ったデザインだ。

「シームレス」という言葉を当てたのは、この連載でも取り上げたメルセデス・ベンツのコンセプトカー「ビジョンEQS」が似たような方向性であり、取材したデザイナーが「シームレスこそデジタル時代の表現」と説明していたからだ。

そんな中で今回、ホンダeに最高点を与えたのは、表面的な造形だけでなく、中身にもシームレスな思想が貫かれていて、見ているこちらにも心地よさがすっと伝わってきたことが大きい。

筆者は10月のメディア向け試乗会で説明を受けたあと、11月に青山で行われたデザインイベントのトークセッションを取材する機会にも恵まれた。そこでのプレゼンテーションを聞いて、さらに好感度がアップした。

丸目のヘッドランプを採用しているのは、周囲との間に壁を作らない表情を持たせるためだという。デジタル式のドアミラーは、歩行者が衣服やバッグを引っ掛けることがないよう全幅内に収めた。キーを持ってクルマに近づくとヘッドランプが点灯し、ドアハンドルがポップアップするという動作には、ドライバーとクルマのインタラクティブな関係性を盛り込んだそうだ。

インテリアデザインはリビングの延長線上で仕立てた。ホンダeは「シティコミューター」を志向するクルマだが、都市部を走れば信号待ちなどの時間は長くなる。EVなので、出先での充電もまた待ち時間になってしまう。止まって過ごす時間が長いクルマだからこそ、いつもの生活とシームレスにつながる空間を重視したそうだ。

このようにホンダeは、人とクルマの関係にまで踏み込んで考え、「シームレスライフクリエーター」というコンセプトのもとデザインを進めた。これからのカーデザインのひとつの方向性を示唆するものだと思い、もっとも高い点数を与えたのである。

3点を投じたベルランゴと2点を入れたディフェンダーもまた、マルチパーパスビークルとクロスカントリービークルというジャンルに沿った造形がなされ、ライフスタイルをも表現しきっている点を評価した。シトロエンとランドローバーというブランドのアイデンティティを絶妙に反映したことも配点の理由である。

ただ、ディフェンダーはサイズが大きい。ベルランゴも小柄ではないが、日常的なシーンで不満なく取り回しができることもデザインでは大事であるとの考えから、ベルランゴに3点、ディフェンダーに2点という結論となった。

○「MX-30」に点を入れなかった理由

一方で筆者は、COTYで実際にデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したマツダ「MX-30」には点を入れなかった。

前に書いたように、部門賞の配点は最大3台までという決まりであり、MX-30は4番目だったから点が入れられなかったのだが、そういう結論に至った理由のひとつとして、実用性にこだわったホンダe、ベルランゴ、ディフェンダーに対し、MX-30はスペシャルティーカー的なコンセプトだったということがある。

確かに、観音開きのフリースタイルドアなど踏み込んだデザインは採用している。エモーショナルの代表格だった「魂動(こどう)デザイン」を、ここまでシームレスに転換したことは評価したい。

ただ、マツダはこのクラスに「CX-30」というSUVも持っていて、実用車としての役目はそちらに任せている。だからこそ、同じフリースタイルドアを備えたロータリーエンジン搭載のスポーツカー「RX-8」のように、パッケージングを含め、より斬新な世界を見せてほしかったという思いがあるのだ。

今年発表された車種では、日産自動車のEV「アリア」(2021年発売予定)や新型「ノート」(2020年12月発売)もまた、シームレスなデザインだと考えている。もちろん、カーデザインはブランド表現でもあるので、全車がこの方向を目指す必要はないが、シームレスと電動化の親和性が高いことはメルセデスのデザイナーも語っていた通り。今後しばらくは、線や面ではなく塊で見せるカーデザインがトレンドになりそうだ。

森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら

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