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自然吸気のV6はこれで最後? レクサスの新型「IS」に試乗

2020年12月21日11時10分 / 提供:マイナビニュース

大掛かりなモデルチェンジを経て11月に発売となったレクサス「IS」。レクサスの象徴であるフロントのスピンドルグリルはより大型化し、三次元的な造形となった。レクサスの「L」をかたどったDRL(デイタイムランニングランプ。常時点灯する)は従来ヘッドランプユニットの下にあったが、ユニット内に埋め込まれた。なんだか、一気にハンサムになった感じだ。

リアの造形も面白い。左右のリアコンビアンプを結ぶ線よりも一段高い位置にトランクリッドがのっかるようなデザインだ。ボディサイドはリアドアからリアフェンダーにかけて張り出した造形となって、FR(後輪駆動)の力強さを視覚的に表現している。合わせてタイヤも大経化された。

興味深いのは、ISがプラットフォーム(車台)を変更していないところ。今回のモデルチェンジでトヨタ最新のプラットフォーム「TNGA」(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)のレクサス版「GA-L」(エンジン縦置き用の車台)を採用するかと思いきや、これまでの車台を継続使用しているのだ。2013年発売の現行ISは、すでに登場してから7年が経過している。2017年に相次いで発売された「LS」や「LC」はGA-Lを用いている。にもかかわらず、ISが旧車台を継続使用しているのはなぜなのか。

それをレクサス開発陣に尋ねる前に、「IS350」に試乗した。インテリアは、操作系に小変更はあるものの、さほど変わっていない。3.5リッターV型6気筒エンジンも継続して使用している。ライバルの欧州勢や日産「スカイライン」はこぞって4気筒ターボエンジンを採用するが、ISは4気筒ターボエンジンも設定するものの、トップグレードに自然吸気の6気筒エンジンを搭載し続ける。

このエンジンの価値は、高回転まで回した際のフィーリングのよさに尽きる。4気筒ターボエンジンよりも澄んだ音と振動を乗員に伝えてくる。高回転までよどみなく吹け上がるフィーリングは問答無用に心地よい。半面、ターボエンジンに慣れた身には、体感的な力強さの面で物足りない。エンジンをしばしば高回転域まで使うサーキット走行と違って、一般道では発進からせいぜい60km/hあたりまでの加速感が、力強いかどうかの判断基準となる。そうなると、低い回転域からハイパワー(大トルク)を発揮するターボエンジンのほうが有利だ。

念のために書いておくが、ISの自然吸気エンジンがライバルのターボエンジンほど力強くないというのは、運転を楽しむためにエンジンに高い負荷をかけた場合の話であり、実用域では必要にして十分以上の力強さが備わっている。

エンジンよりも変化が明らかなのはシャシーだ。一般道で、あえてさまざまな加減速と旋回を繰り返してみたが、どの操作に対しても、ドライバーがこうであってほしいと思う反応が正確に、遅れなく返ってくる。乗り心地も問題なし。突出してすばらしいと感じた部分はないが、不満に感じた部分もない。操縦安定性や快適性の面では、ISが属するプレミアムDセグメントにあって十分に商品力を保っていると感じた。

○プラットフォーム継続使用の理由は?

新型ISはトヨタ愛知県豊田市下山地区に新設した車両開発用のテストコースで開発された。プレスリリースには「世界屈指の過酷なコースとして知られるニュルブルクリンクを走りこんできた経験を基に、自然の地形をいかした約75mの高低差と多数のカーブにさまざまな路面を組み合わせた全長約5.3キロのコース」とある。コースを走り込むことで、数値では測れない感性価値にこだわり、運転操作のつながりやリズムなど、ドライバーの意図に忠実でリニアな操縦性を追求し、不快な振動や音といった雑味をあらゆる方向から検証し、原因を突き詰めて解消したという。

言葉通り、十分に煮詰められた仕上がりだと思わせたが、とはいえ、じゃあ新しい車台を使って同じだけ手をかければ、もっとよいクルマができたのではないかという疑問がわいてくる。その点をエンジニアに尋ねた。

返ってきたのは、「もちろん、我々がやりたかったことは、新しい車台を用いてもできたかもしれないが、勝手知ったる既存の車台を煮詰めたほうが効率的だと考えた」という答えだった。作っている側にそういわれると「そうですか」としか返せないが、実際に乗って確かめてみて不満を感じなかったのだから、それが答えということになるのかもしれない。

急速に進むクルマの電動化が、ISのモデルチェンジに影響を与えたという側面もありそうだ。

菅首相は10月の所信表明演説で、2050年にカーボンニュートラル実現を目指すと宣言した。そのための道筋のひとつとして、政府は先日、「2030年代半ばまでにすべての新車(乗用車)販売を電動車とする」という目標を掲げた。カーボンニュートラルに向けた自動車の電動化という流れはすでにできていて、おそらく、目標を前倒ししてすべての新車が電動車となるだろう。ISに載る3.5リッターV型6気筒エンジンも、現行型が最後になるのではないか。

現在、自動車開発は岐路に立たされている。全体が電動化に向かって進んでいく流れは決定的だが、そのペースや手法には定まったものがない。電動化や自動化には莫大な開発コストがかかる。規模の勝負となり、メーカー同士の合従連衡が積極的に繰り返されている。そうしたうねりのなかでトヨタは、互いに株を持ち合うほか、ハイブリッド技術を提供するマツダとの関係を深め、同社が開発中のエンジン縦置き用車台(次期「マツダ6」や「CX-5」向け)の供与を受け、次期ISに採用するのではないかという予測記事もある。新車台を用いたLSやLCよりも、ずっと後に出た新型ISが旧車台を使ったことが、こうした憶測に拍車をかけているのは間違いない。あれこれ予想するのは楽しいが。

ISが新しいプラットフォームを採用しなかったことには、SUVに押されてセダンの人気が低迷していることも関係してるだろう。単純に、ISがもっとたくさん売れていれば、早い段階で新車台を用い、コストをかけてフルモデルチェンジしていただろう。けれども、レクサスがこのほど、ISとLSの中間に位置していた「GS」をディスコン(販売停止)としたことからもわかるように、セダンは今、世界的に人気がない。メルセデス・ベンツやBMWもSUVが販売の中心だ。

レクサスのISに対する扱いから感じるある種の不可解さは、自動車業界全体が不明瞭な未来に向けて手探りで進んでいる様子を表しているように思えた。ただ、消費者は難しいことを考える必要はない。いつまで販売されるかわからない6気筒の自然吸気エンジンを楽しむために、あるいはスタイリングを気に入ったからという理由でISに関心をもったならば、迷わず買っていいと思う。私自身も、史上最高にカッコいいレクサスだと感じた。

塩見智 しおみさとし 1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社後、2000年には『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』編集部員となり、2009年には同誌編集長に就任。2011年からはフリーの編集者/ライターとしてWebや自動車専門誌などに執筆している。 この著者の記事一覧はこちら

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