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森口将之のカーデザイン解体新書 第39回 変わらない勇気も大切? ホンダの新型「N-ONE」

2020年12月11日07時00分 / 提供:マイナビニュース

モデルチェンジしたのに、ほとんど見た目が変わっていない。ホンダの軽自動車「N-ONE」は、近年の自動車業界では異例の不思議な進化を遂げた。2012年11月の発売以来、約8年を経てのフルモデルチェンジであるにもかかわらず、あえて大変身を選ばなかった理由とは。作り手の説明も参考にしながら考えてみたい。

○新型だと思ったら旧型だった

新型「N-ONE」の説明会で、30年近いモータージャーナリスト人生でおそらく初めてとなる、致命的なミスをしてしまった。会場に置いてあった実車の写真を撮り始めたところ、編集スタッフから「それ、旧型ですよ」とやんわりと注意されてしまったのだ。

確かによく見ると、並べて置かれていた新旧のN-ONEには違いがあった。でも、言い訳するわけではないけれど、同じような間違いをしてしまう人は多いのではないだろうか。

実はこれ、意図的なものだった。ホンダとしては、旧型には変えたいところと変えたくないところがあったというが、エクステリアは後者だったのだ。そこで挑戦したのが、デザインを変えないモデルチェンジだったそうだ。具体的には、鉄板で作った外板はすべて旧型と同じであり、バンパーなど樹脂成形のパーツのみ新しくしたとのことだった。

先代N-ONEの初期型と比べると、エンジンフードとルーフの形状は異なる。しかし、前者は2017年のマイナーチェンジで歩行者保護対策のためにリデザインしたものを継承しており、後者はその2年前に追加されたローダウン仕様そのものなので、モデルチェンジ直前の車両と新型では形状が同じだ。

N-ONEはホンダの軽乗用車の原点である「N360」をモチーフとして8年前に誕生した。当時、ホンダは「レトロ」という言葉を使わず、「タイムレスデザイン」と表現した。

新型はこのタイムレスデザインの継承と進化を目指し、「くつろぎ/安心」「ミニマル」「楽しさ」の3つをテーマとした。これに沿ってさまざまな案が出たものの、N-ONEらしさが見えてこなかったことから、変えないという結論になったそうだ。説明会場に新旧N-ONEとN360を並べて展示したのは、こうしたメッセージを視覚面で伝えるためだったのかもしれない。

軽自動車という規格は外寸と排気量に制限があるので、N-ONEを含め、ほとんどの車種はすでに全長と全幅が上限に達している。「それなら、変えないでいこう」という決断は、大胆ではあるが納得できるものだ。
○構造面では変えたほうがラク?

とはいえ、フロント/リア周りには旧型との違いも発見できる。ヘッドランプやリアコンビランプはフルLEDとなり、ブラックフェイスの部分はエッジを増やし、フロントバンパーの開口部はワイドでスクエアになった。低重心感を出すためにこうしたとのことだ。

それに比べるとリアの変化は少ないものの、バンパーには横方向に黒いラインが入っており、ここでも低重心感を狙っていることが伝わってくる。

プラットフォームは現行の「N-BOX」で初採用した新世代に切り替わったが、ホイールベースは旧型と同じだ。となると、新しいプラットフォームに従来のボディを載せたのだろうと思った人がいるかもしれないが、実際はそんなに簡単な話ではない。

新車に義務づけられている衝突試験をクリアするためには、ボディとプラットフォームが連携して衝撃を吸収しなければならない。ゼロからデザインしたほうが、むしろ楽な場合もあるのだ。そこでホンダでは、プラットフォームは昨年モデルチェンジした「N-WGN」と共通にすると決め、開発時にN-ONEのボディを組み合わせることも頭に入れて設計していったそうだ。

旧型N-ONEは、デビュー当時は「スタンダード」と上質な仕立ての「プレミアム」の2タイプがあり、2017年のマイナーチェンジで個性的なコーディネートの「セレクト」とスポーティーな「RS」が追加となった。新型は「オリジナル」「プレミアム」「RS」の3タイプだ。

プレミアムとRSはフロントグリルの開口部が大きくなり、プレミアムにはクローム、RSにはダーククロームのアクセントがつく。サイドではホイールが違うほか、モールの有無、ドアミラーやドアハンドルの色などで見分けられる。リアはナンバープレート上のパネルの色で識別可能だ。

○隠れ「N」にも注目してほしい

インテリアはエクステリアとは対照的に、はっきり変わったとわかる。大きく違うのは前席で、左右がつながったベンチタイプからセパレートタイプになった。シート間にはセンターコンソールが用意された。運転に集中してもらう空間を考えた結果、セパレート化を選んだそうだ。

インパネは全幅にわたるトレイをなくすことで張り出しを抑え、助手席にも背の高い人が楽に座れるようにした。その結果グローブボックスはなくなったが、ティッシュボックスは新設のコンソールに置けるようになっている。

オリジナル、プレミアム、RSの差別化はインテリアでも実施しており、いずれもブラック基調であるがオリジナルはホワイト、プレミアムはグレー、RSはオレンジとアクセントカラーを使い分けている。残念なのは後席空間が黒一色になること。個性をアピールする車種なのだから、細部にまでこだわってほしかった。

新型N-ONEでもうひとつの注目点は、前後のウインドーやランプ、センターコンソール、リアドアトリムなどボディ各所に「N」のロゴを目立たぬようちりばめていることだ。こうした隠し芸(?)はフィアット「パンダ」なども実践しているが、日本車では珍しい。作り手が楽しみながら開発できた証拠と説明していた。

このように、インテリアやディテールでは新型ならではのトピックを持つN-ONEだが、前述のようにスタイリングは変わっていない。最近のクルマでは異例であるが、歴史を振り返ればベーシックカーはロングセラーが多かった。

オリジナルの「ミニ」やフォルクスワーゲン「ビートル」、シトロエン「2CV」は、いずれも40年以上、エクステリアデザインを変えずに生き続けた。そして2輪車に視野を広げれば、N-ONEと同じホンダの「スーパーカブ」が1958年以来現役であり、累計生産台数は1億台を超えている。

多くの人は、自動車はモデルチェンジで姿を変えるのが当然だと思っているだろう。しかし、当初の設計が時代を超えて通用する内容であり、根強い支持を受けているのであれば、無理に形を変える必要はない。

ホンダがN-ONEのモデルチェンジに際して選んだ「変えない」という方向性は、スーパーカブを作り続けている会社だからこそ可能だったと思っているのだが、気になるのはユーザーがこの進化をどう判断するかだ。もしこのモデルチェンジが評価されれば、N-ONEは真のタイムレスデザインとして、今後も独自の存在感を放っていくことができるだろう。

森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら

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